【写真】徳永英明が出演した唯一の映画「旅の贈りもの 0:00発」
進化が目覚ましい映画は、配信サービスの台頭によっていまや“いつでも高品質で多様なジャンルを楽しめる”のが当たり前になった。だがそんな現代でも、パッケージ化や配信がおこなわれていない“見ておくべき作品”は存在する。CS放送「衛星劇場」が3月に放送する「旅の贈りもの 0:00発」と「日本製少年」という2つのレアな邦画は、制作年代や作風が異なるものの「日常からの逃避と移動」という共通のテーマを持った名作。共通項を持ちながら対照的な構造を持つ2つの「旅」の見どころや、キャスト陣の魅力について紐解いていく。
■夜行列車が運ぶ心の再生
2006年に公開された「旅の贈りもの 0:00発」は、行き先不明のミステリアスな夜行列車から始まる物語だ。心に傷を抱えた5人の男女が偶然に乗り合わせ、翌朝に到着した架空の田舎町「風町」で思いがけない時間を過ごすことになる。
本作の魅力は失われつつある日本の原風景の美しさ、そしてスローライフの描写だ。大阪から岡山真鍋島、広島大崎下島、山口県山口市、島根県益田市など西日本の豊かな自然を背景に、登場人物たちが自身の内面とゆっくり向き合う様子が描かれた。
また同作は歌手の徳永英明が唯一映画出演を果たした作品だ。そして彼が書き下した主題歌「happiness」をはじめ、中島みゆきの「時代」、山口百恵を敬愛する中森明菜が歌う「いい日旅立ち」など数々の名曲が物語を彩る。音楽と映像が融合した穏やかな情景描写は、物語の登場人物たちと同じ感覚を観る者にもたらす。
櫻井淳子、多岐川華子、大平シロー、細川俊之らは、それぞれが心に深い傷を負ったキャラクターを演じる。恋人の浮気を目撃した傷心直後の女、家族から冷たく当たられるだけでなくリストラの憂き目にも見舞われた男、自殺を考えるまで追い込まれた女、やっと夫婦の時間が取れるというときに妻を亡くした男…。
穏やかな田舎町の風景、地元の人々と交わす温かい交流、そして鉄道に揺られながら漂う静かな思案の時間が彼らを癒やしていく。
また劇中に登場する鉄道の風景は、鉄道愛好家にとっても興味深い要素の1つと言える。現代社会で疲弊した人々が旅を通して心を取り戻していく過程は、普遍的で大衆の心に寄り添うテーマだ。スペクタクルではなく“日常の疲れをほぐす癒し”を求めるなら、同作の静かな再生の旅路は強力な選択肢になるだろう。
■90年代の虚無を駆け抜ける逃走劇
一方の「日本製少年」は、バブル崩壊後の1990年代半ばが舞台の“逃走劇”だ。父親を殺そうとした過去を持つ孤独な青年・大和と、心臓にペースメーカーを埋め込んだ少女・薫のあてもない逃避行を描き出す。
本作は制作された1995年当時の社会に漂っていた、どうしようもない閉塞感を見事に表現。大手映画会社に属さない独立系プロダクションによる制作ならではの、独特の演出が画面に表れている。
「オレ、親殺し少年。ワタシ、心臓サイボーグ少女」という特異なキャッチコピーが目を惹く同作。社会から孤立した青年の虚無感を元・光GENJIの大沢樹生が体当たりで演じ、“間もなく電池が切れるペースメーカーの電池交換を拒否する少女”を嶋田加織が好演した。
親には頼れず、身近な大人は他人を食い物にする悪者で、生きるための行動を周囲は理解してくれない。予測不可能な展開が続く中で、社会の周縁で生きる若者たちの焦燥が淡々と、しかし緊張感を持って描かれている。
どうにか現状を変えたい。でもどうにもならない…。そんな息苦しい環境で身を寄せ合う2人はどこか特定の場所を目指すのではなく、ただ現状から遠ざかるために走る姿が印象に残るはずだ。
同作はラストの痛々しい描写も含め、若者2人の破滅を傍観する物語と言える。現代の青少年にも通じる「誰にも導かれなかったがゆえの破滅」は、20年以上前の作品とは思えないほどの爪痕を心に刻む。
■交差する「移動」の意味
「旅の贈りもの 0:00発」における移動は、登場人物たちを温かい共同体へと導くための旅だ。一方の「日本製少年」における移動は、無理解で冷徹な社会からの追撃を振り切るための逃走。両作品は「前向きな再出発」と「捕らえて離してくれない闇」という対照的な結末に向かう構造を持っている。
しかし両作品にとって、“移動”は即ち日常という“既存の枠組み”から外れるための行動だった。結果も目的も異なるが、それでも“行動することで意味が生まれる”というメッセージにおいては共通しているのだ。
なににつけても都会の家のなか、手に収まるスマホのなかで多くのことが完結する現代。狭い世の中をさらに狭くする情報の波が絶えず訪れ、ともすれば行動する意味を見失っている人も多いのではないだろうか。
そうした意味で、“現代の大人こそ見るべき映画”と言える両作。現状が最低でも、現状から移動することで見えてくる何かがある。大人が顔を上げて周りを見回し、行動しなければ潰れてしまう未来がある。
衛星劇場では両作のようなパッケージ化も配信もおこなわれていない名作を放送する。3月6日(金)朝8時30分ほかからは「旅の贈りもの 0:00発」が、3月13日(金)深夜1時30分ほかから「日本製少年」をオンエア。衛星劇場で放送される貴重な機会に、タイプの異なる2つの非日常的な旅を確認しておきたい。
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