品薄・トラブルも続出…「ボンボンドロップシール」は一過性ブームか、新たな文化か

品薄・トラブルも続出…「ボンボンドロップシール」は一過性ブームか、新たな文化か

2月27日(金) 8:53

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小学生から大人まで、社会現象となっている「ボンボンドロップシール」と「シール帳」ブーム。キラキラと輝くシールを交換したり、自分だけの世界観で手帳を埋め尽くしたりする魅力に、世代を超えた多くの人たちが夢中になっている。

ボンボンドロップシール(ボンドロシール)はサンリオやポケモン、ディズニーなど人気キャラクターとコラボし、その人気はますます過熱。ほかにも、サンリオのシステムシール手帳が付録として付いた『あそぼうサンリオキャラクターズ きらめきかわいいブック システムシール手帳特大号』(扶桑社)は発売前から完売し、6万部の重版を決定。累計12万部が即完売するほどの人気など、ブームは各方面に広がっている。

「手に入らないのであれば」と自作する人も増え、ボンドロでボンドが品薄になるなど、思わぬところまで、その余波は広がっている。

一方、ブームの過熱によって品薄や子供たちの間でのトラブルといった問題も起きている。このブームは一体どこから来て、どこへ向かうのか。一過性の流行で終わるのか、それとも新たな文化として定着するのか。元“JK社長”として知られ、若者研究の第一人者である椎木里佳さんに、ブームの実態と背景、そして未来について話を聞いた。

女子中高生から始まった熱狂。若者発トレンド拡散のメカニズム

いまだ熱気は冷めず、工場はフル稼働でも出荷が追いつかないボンボンドロップシール。そもそも、若者たちの間ではいつ頃から人気が出始めたのか。

「人気が出始めたのは2024年の頃からで、JC・JKの間ではもう1年以上ブームは続いている状況です。2025年の初期くらいから広い世代で徐々に盛り上がりだしたという感じでしょうか。

昨今、昔のものがリバイバルするブーム、例えばプロフィール帳であるとか、いわゆる『平成レトロ』のようなブームは、今のJC・JKの子たちが先に火をつけて、それが上の世代に広がっていくんです。

平成を生きた30代くらいの方たちが『懐かしい』『ブームになってくれて嬉しい』と感じて好きになる。そして、その子供世代である小学生にまで普及していく。ギャル文化もそうですし、多くのものがそういう流れでブームになっています。

最近では、『孫が欲しがっているみたいで』と子供たちのおじいちゃん・おばあちゃん世代までが関心を持ち始めています。

一方、他の世代の方たちに一気に広がってしまうと、JC・JKが発信していたものの希少性がなくなってしまう。彼女たちが今一番の発信力を持っているので、その層が離れてしまうと、ブームは徐々に下火になります。そしていずれ世の中全体としても『なんとなくもう終わったよね』という流れになってしまうんです」(椎木里佳さん)

JC・JKの間で流行り始めたきっかけは、インフルエンサーではなく、普通のJC・JKたちのSNS投稿からだったという。

「きっかけを厳密に定めるのは難しいですが、TikTokのDIY動画がきっかけになった面はあると思います。もともとシール帳やシール交換は、トレンドにかかわらず楽しんでいた層がJC・JKの中にも一定数存在していました。

ただ、その子たちがやっていたものとは少し違って、交換するためというよりはもっとコレクション性を高めて、『私のシール帳』をどうやって作るかというアート作品のように作り上げた動画が流行ったんです。

クリアなバインダーのシール帳を買ってきて、ピンセットで丁寧にシールを配置していく様子を、ASMR的な感じで動画にしていたんですね。それを何枚も重ねて、分厚くなった手帳をめくっていくと、すごく可愛い、みたいな。

そういう動画が少しずつ作られ始めて、『これ可愛い、自分も真似してやってみよう』と、DIY動画を見ながら実際に作ってみるJC・JKが増えていきました。そうすると、SNS上にユーザーが作ったコンテンツ(UGC)が溢れてくるので、それを見た他の人も『ちょっとやってみようかな』と広がっていった感はあります」(椎木さん)

UGCが連鎖するSNS時代の拡散

インフルエンサー起点ではなく、「普通の人のSNS投稿が流行のきっかけとなることが昨今の傾向にある」と、椎木さんは指摘する。

「流行のきっかけになったTikTokのDIY動画は、JC・JKのインフルエンサーではなく、一般の方です。最近のトレンドは、インフルエンサーが起点というより、本当に一般の方が質の良いコンテンツを作って、それがちゃんと見られるというケースが多いんです。

コメント欄で『このシールはどこで買いましたか?』『どうやって作るんですか?』といった質問に対して、投稿者がすごく丁寧に答えるんです。そうすると、その人の投稿をもっと見よう、研究しようという気持ちになって、一人の人が何十回も動画を再生することにつながる。結果として、その投稿がレコメンドされやすくなり、より多くの人に見られるようになるんです」(椎木さん)

そこにインフルエンサーや著名人が、さらにそのブームを加速させる。今回、シール交換ブームに大きな影響を与えたのが、田中みな実さんとあのちゃんだという。

「田中みな実さんやあのちゃんはかなり早い時期からシール帳を作られていたようで、お二人のような芸能人の方がSNSやYouTubeで発信することで、同世代の20代・30代の方たちも『自分もやってみよう』と始めた人は多いと思います。

『シール帳って、今、女子高生たちの間で流行ってるやつだよね』と認識していた大人たちが、あの動画を見て、『あ、自分たちの世代でもやっていいんだ』『それを公にしてもいいんだ』と感じられた。一種の“民主化”が起きた感じはありますね。

一般のJC・JKの中からブームが生まれて、それをインフルエンサーがさらに加速させる。現役のJC・JKからすると、自分たちがブームを生み出しているという面白みは感じていると思います。今のJC・JKの子たちと接していても、ショート動画を作る手際の良さや企画力には本当にすごいものがあるなと感じます」(椎木さん)

“世界観を作る世代”の美意識

今のJC・JK、いわゆるα世代の子たちは、「世界観へのこだわり」を強く持っているのが特徴だという。

「男性だと、バイクが趣味とか、音楽をされている方だと楽器を大切に飾ったり、ガンプラやフィギュアが好きといった方もいますよね。コレクション欲みたいなものが一番近いと思うのですが、『すごくこだわりのある手帳にしたい』『シールも一つずつちゃんとこだわりを持って貼りたい』という思いがあるんです。

この『世界観へのこだわり』は、今のJC・JK、いわゆるα世代の子たちには、もう染み付いている感覚だと思います。例えばInstagramの投稿でも、上の世代だと旅行に行ったときやご飯など、リアルの生活に結びついた写真を上げることが多いですよね。

でも、今の若い子たちは、どちらかというと『世界観』をちゃんと作り込んだうえでアップします。例えば『白』を基調としたアカウントなら、白っぽい投稿だけを集めて載せる。それ以外の写真は、フィードには上げずに全部ストーリーズ(24時間限定で消えてしまう)に載せる、というように。

一般の子でもそういうこだわりや美的感覚みたいなものは、他の世代よりもすごく強いんじゃないかなという気がします」(椎木さん)

過熱するブームの副作用も

一方で、ブームの弊害も問題視され始めている。人気が過熱しすぎてボンボンドロップシールが品薄となり、入荷するかわからなくてもシール目当てに行列ができるほど。ロフトでは安全確保のため、ボンボンドロップシールの販売を全店で見合わせると発表したほどだ。「加熱するブームの裏で、弊害も生まれ始めている」と、椎木さんは警鐘を鳴らす。

「昨年までは『交換も楽しい』という状況だったのですが、今は盛り上がりすぎてしまって、お小遣いやバイト代をたくさん使って集めたものを気軽に人にあげたくないという気持ちからになってきた感じはありますね。『こんなレアなのに…』と、ちょっと損した気分になるというか。

私が気にしているのは、子供たちの間のコミュニケーション、特に盗難のトラブルです。どうしても欲しいという気持ちが高まって、休み時間にこっそり取ってしまう子供もいます。結果、ケンカになることもありますし、最近は親が介入するパターンがすごく多いですね。

金銭が絡む問題なので、ただ『ごめんなさいして返しましょう』では済まされず、学校や親としてちゃんと対応しないといけなく、子どもたちだけの世界の話ではなく、おおごとになってしまうケースもよくあります。小学生からしたら決して安いものではないからこそのトラブルだと思います」(椎木さん)

ブームは文化として定着するのか?

今後、このブームはどうなっていくと予測されるのか。椎木さんは「定着化する流行と一過性のブームで終わる流行」を次のように分析する。

「ブームにはいろいろなパターンがあると思っています。例えばタピオカは、ブームが去った後も、今では定番の飲み物の一つとなって、好きな人は好きで定着化していますよね。

そのブームが、本質的に生活に根ざすものかどうかが分岐点だと思います。タピオカは、当時の言葉で言う『映える』からというだけでなく、単純に『美味しい』とか『その時間を過ごすのが楽しい』といった、もっと本質的な楽しみ方があった。

乱立したタピオカ店は淘汰されましたが、今ではバリエーションも豊富になり、品質を重視したタピオカ専門店が『TEAブランド』へと転換したことで、若者の間では定番のテイクアウト商品として根付いています。

一方で、一過性のブームは、本質的な価値よりも『なんとなく流行ってるから』という気持ちが先行してしまっている。今のシール帳は、その両方の側面があると思うんです。

もともと、シールを貼る行為そのものが楽しい、リラックスになる、自分の世界観を表現したいといった本質的な価値を感じている子もいれば、ブームだからやっているという子もいる。

今の過激な盛り上がりが続けば一過性で終わるでしょうし、企業側がちゃんと対応して生産を増やしたりして、誰もが心から健全に楽しめるものになれば、定着する可能性もあると思います」(椎木さん)

世代を超えて一緒に盛り上がる“共通言語”

また、不況で生活が苦しいなかで、低価格の数百円で楽しめるというのも魅力にある、と椎木さんは話す。

「『低価格ドーパミン商品』という言葉があって、高価でなくても興奮や満足感を得られる商品という意味だそうです。自分への“小さなご褒美”とでもいいましょうか。

ガチャガチャの中に『目印アクセサリー』というジャンルがあるのですが、傘の柄やリップクリームなどにつけて、自分のものだとわかるようにする小さなアクセサリーがあります。持ち物の盗難・紛失防止と可愛さを両立させた実用的なアイテムで、カプセルトイ市場では人気商品でもあり定番商品にもなっていて、日常の必需品となっています。

自分が欲しいものが出たときのドーパミンは、すごくありますよね。物価が上がって生活が苦しくなっているからこそ、ボンドロシールやガチャガチャのような自分への“小さなご褒美”が魅力になっている面もあると思います。

ブームに対して否定的な文脈で語られることも多いですが、良い部分もすごくあると思っていて。今って、アナログな作業が減っているじゃないですか。そのなかで、親子で一緒に手を動かして、『お母さんの時代も流行ってたんだよ』みたいな話をしながら楽しめる。

シール帳もそうですし、最近は編み物もすごく人気ですよね。AIだなんだと言われていますけど、みんなが好きなのって結局、『手仕事』なんだなという気がしていて。AI時代だからこそ、リアルな生活ではもっと人間らしくありたい、心豊かな時間を過ごしたい、という潜在的な思いがあるんじゃないかなと感じています。

世代は違っても、一緒に盛り上がることができる“共通言語”が出てきたというのは、すごく良いことだと思いますし、母親として嬉しいですね」(椎木さん)

【プロフィール】椎木里佳

1997年生まれ。中学3年時に株式会社AMFを設立し、“JK社長”として話題に。慶應義塾大学文学部倫理学科卒業。Z世代を対象としたマーケティングやトレンド分析を得意とし、メディア出演や講演活動を精力的に行う。「JC・JK流行語大賞」を2017年より発表。こども家庭庁こども家庭審議会委員。著書に『大人たちには任せておけない!政治のこと』など多数。
X@rikashiikiamf



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