◆今日も進化が止まらない銭湯カルチャーオブ台東区
台東区には現在20軒の銭湯があり、東京都の自治体の中で、人口・面積に対する銭湯軒数の割合が最も高いのだとか。昨年8月に「曙湯」のリニューアルを手がけた大澤さんのお話を通して、台東区銭湯カルチャーの“今”に迫ります。
新たな100年を歩み始めた
「文化を沸かす」次世代の銭湯
日本文化が色濃く残る台東区・浅草。この土地で77年続く老舗銭湯「曙湯」に、クラシカルでありつつも、新しさを感じさせる暖簾が掲げられました。
長きにわたり曙湯を支えてきた前店主が引退し、温浴施設のリノベーションや運営を手がける株式会社yueへ、昭湯の未来が託されたのは、昨年6月末のこと。
「こんなに素晴らしい銭湯を任せてもらえて素直に嬉しかったです。自分の中で曙湯の未来に関するイメージが明確だったこともあり、不安よりもワクワク感の方が大きかったですね」と、笑顔で語ってくれたのは代表の大澤務征さん。
25年8月23日、約1カ月の工事とプレオープンを経て曙湯の新たな歴史がスタートしました。この先100年続く銭湯にするため「文化を沸かす銭湯」というコンセプトを掲げ、今まで通り地域に根ざしつつも、伝統的な文化の価値を再発見できる場をめざしたと言います。
「『文化を沸かす』という言葉には、銭湯文化・日本文化・地域文化を盛り上げることで、“文化の温度を上げる場所”にしたいという想いを込めました。1949年に創業した曙湯は、文化の発地として栄えた浅草の街に根ざした銭湯です。そんな曙湯だからこそ、下町のあたたかな地域文化や、芸術や演芸などの日本文化に触れられる場にできればと。また、豪華な宮造りや内装が美しく残された曙湯は、これまで銭湯に触れてこなかった若い世代へ銭湯文化を伝える場としてもぴったりだと感じました。伝えるべき歴史が詰まっている曙湯だからこそ、伝統的な文化を再び沸かす場所という役割がしっくりきました」
心地いい「気」が流れる
伝統と革新が調和する銭湯風情
曙湯を語るうえでかせないのが、古きよき銭湯の魅力を語る、伝統的な建築様式。昨年11月には「東京都選定歴史的建造物」に認定されています。見事な宮造りの外観は、ゆるやかな山型の唐破風屋根と、4月下旬から5月上旬に見頃を迎える藤棚が印象的。
暖簾をくぐり中に入ると、上を見上げずにはいられない豪華な折上げ格天井が迎えてくれます。格子の間に描かれた花の文様も美しく、開放的なロビーには、若手アーティストによる書道作品が飾られており、まさしく日本文化を沸かすスポットとして活用中。
清掃が行き届いた浴室のカランには、地域のお店の名前が入った鏡広告を導入し、地域文化を沸かすという役割も忘れません。
主役となるお風呂は、湯船ごとに温度差をつけることで、どんな世代でも満足できるよう意識。細かい気泡が心地いい「絹の湯」は40度前後と少しぬるめに、日頃の疲れを吹き飛ばしてくれる「ジェット」や「バイブラ」は42度前後とやや熱めの設定です。
湯上がりは、リニューアルを遂げた小上がりの畳スペースで漫画を読んだり、テラスに出てドリンクを飲んだりと、余韻を楽しむのがおすすめです。
「初めて曙湯に足を踏み入れたとき、”ここは気がいいな”と感じました。天井が高くて明るく空気が澄んでいて。そういった銭湯ならではの空気感を感じつつ、ゆったり過ごしてもらえたら嬉しいです」
新しい変化を歓迎する
台東区の銭湯カルチャー
現在、湯が力を入れているのはSNSによる情報発信。Xでは、日々意識していることを言葉に乗せて発し、Instagramでは、利用者の写真とともに「今、あなたを熱中させるもの」を尋ねる“沸かすシリーズ”を投稿。特に、銭湯に新しさを感じる世代に向けて密なコミュニケーションを図っているとか。
「僕たちが最終的にめざすのは銭湯を増やすこと。銭湯としてお湯を沸かすことや清潔感を維持することは基本ですが、それ以上に、次世代へ“銭湯そのものを知ってもらう姿勢”を見せる努力が必要だと感じています。写真や映像を積極的に活用することで、曙湯に足を運んだ先にある景色や感じ方をイメージしてもらえたら。今年の1月末にはビールメーカーとコラボしたランニングイベントを開催しました。今後は、藤の花の見頃に合わせたイベントや、若手アーティストの作品展示にも注力したいです」
進化するのは曙湯だけに限りません。台東区は、早くからリニューアルを行いファンを沸かしてきた人気銭湯が集まるエリア。「台東区は、新しい風に対する懐が深いですよね。“銭湯らしさ”を大切にしながら新たな取り組みや挑戦を積極的に行う銭湯も多く、街や人の暮らしに銭湯が溶け込んでいるのも魅力的です」
広い湯船に浸かることだけでなく、その街が纏う独自の空気感を感じ取れることも銭湯の魅力だと語る大澤さん。「まず「浅草と言えば曙湯」と連想される銭湯にすることが目標です。建築を学んできたこともあり、将来的には、銭湯をはじめとする歴史的な建物に価値を見出すことで、日本ならではの景色を守る活動ができたら」
近々新たなスペースが誕生する予定もあるという曙湯。この先、どんな未来を見せてくれるのか楽しみです。
曙湯
あけぼのゆ
TEL.03-6631-5999
住所/東京都台東区浅草4-17-1
営業時間/6:00~9:00、11:00~翌1:00、土・日・祝6:00~翌1:00
定休日/第2火
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