『キン肉マン』大好き作家・燃え殻さんと爪切男さんが1月の連載を激論!
『ボクたちはみんな大人になれなかった』の燃え殻、『死にたい夜にかぎって』の爪切男の意外な共通点、それは『キン肉マン』!!
希代のストーリーテラーのふたりが1月分の『キン肉マン』連載を甘く、そして辛く批評。
***
―今回の「先月の肉トーク」テーマ―
第517話 空高くから現る助っ人!!の巻(1月4日更新分)
第518話 エクストラマッチ開幕!!の巻(1月18日更新分)
第519話 サラマンダーの火炎殺法!!の巻(1月25日更新分)
あらすじ
世界各地で同時開催された五大刻との一大決戦、死力を尽くし、エンデマンを倒した
テリーマン
。そんな彼の前に、さらなる敵、時間超人・サラマンダーが登場。満身創痍のテリーマンを守るために現れた超人とは!?
【2026年はテリーマン、アシュラマン、スカイマンの豪華スリーショットから】
爪切男(以下、爪)
まず第517話は、なんといってもスカイマンの登場がうれしかったですね。これまでの一部始終を、実況中継のヘリから見ていたと思ったら。
燃え殻(以下、燃)
テリーマンの代わりに闘うために飛び下りてくる。ザ・マンリキは下りてこなかったもんね(笑)。
爪
エンデマンよりはるかに強いサラマンダーが、生まれるさまを見ていたのに。お前、漢(おとこ)だよ! って言いたくなりました。どう考えても秒殺されるだろうに。
燃
いい蹴りなんだけどね、このローリングソバット。「ボワボワ、当たらんなァ」って、簡単によけられてるけど。
爪
テリーマンに「お前の闘いぶりには大きな勇気をもらった!」と言うのもいい。スカイマン史上、一番カッコいいんじゃないかな。
燃
だからスカイマンの闘い、もうちょっと観ていたかったな。早々と火だるまにされて、アシュラマンに「どけ!」と、はたかれる。
爪
スカイマンのファンの読者も、まさか令和のこの時代に、もう一度スカイマンを観て熱狂できるとは思わなかっただろうなあ。
燃
スカイマンのファン、いる?
スカイマンの初登場は、JC3巻。「第20回超人オリンピック」の出場超人として
爪
いますよ、何言ってんですか(笑)!それこそ、このタイミングで超人人気投票をやってくれれば、いい順位に入るんじゃないかな。
燃
そもそも、アシュラマンとスカイマン、テリーマンが同じコマにいる画を、令和に観れるというのがね。
爪
豪華な3ショット。でも、アシュラマンって悪者になれないというか、「どけ!」と言いながらもスカイマンを認めている感じもしますよね。「あとは俺が引き受けたから」みたいな。アシュラマン、もっと早くスカイマンを止められたと思うんですよ。
燃
そうだね。でも一応彼の志(こころざし)をくんで、ひとしきり闘い終わるところまで待っていた。
爪
そうそう。
燃
スカイマンやカナディアンマンとかにちゃんと目を配って、こうして出番を設ける、というのはいいよね。ゆでたまご先生自身が描いてきたキャラクターに対して責任を持つっていう。
爪
第517話を全部使って、ほぼスカイマンですもんね。
燃
で、アシュラマンが出てきたじゃない? アシュラマンの戦歴って、ウォーズマンに近いというか。ウォーズマンが正義超人側の善戦マン、みたいな感じだとしたら、アシュラマンって悪魔超人側の善戦マンというか。要するに、相手を光らせる試合が多い。
爪
ああ、確かに。
【アシュラマン=EVIL説を検証】
燃
みんなアシュラマンに勝つことや、アシュラマンといい闘いをすることを尊ぶ、そういうキャラなんだけど、アシュラマン自身はあんまりいい思いをしていないっていうか。なんか、EVIL(*現在の日本のプロレス界を代表するヒールレスラー)な感じがする。
爪
ウルフアロンのデビュー戦の相手を務めて、直後に新日本プロレスを辞めたEVIL。
燃
相手を輝かせることがすごくうまい。前回の対談でも話したけど、新日本プロレスの1.4東京ドームの立役者、EVILじゃない?
爪
ですよね。アシュラマン、実は優しい、というあたりも、EVIL的な感じがある。
悪魔のプリンスとして幼少期も過ごしたアシュラマン。なんとなく見せる優しさのルーツの一端は、JC20巻にて
燃
ヒール的なことを言ったりやったりするけど、でも読者はみんな、アシュラマンがいいヤツだって知っている。愛されているんだけど、アシュラマン自身は悪を自任する。
爪
まったくEVILじゃないですか。
燃
そう。だから、ここで先生がアシュラマンを出すっていうのが、新日がウルフアロンの相手にEVILを出したのと同じで。あのままサラマンダーがスカイマンと一線交えたとして、スカイマンがぶっとばされて負けても、サラマンダーが本当に強いかどうか、わかんないじゃない?
爪
でもアシュラマンと闘ってサラマンダーが勝ったら、サラマンダーの価値が出る。ほんとに1.4東京ドームのEVILだなあ。
燃
だから、サラマンダーはウルフアロン。
爪
(笑)。で、前回の対談で、サラマンダー、シッポがあるのが気になる、っていう話をしたじゃないですか。第518話の最後のローリングソバットの相撃ちの時、まさにそのシッポ、つまりテールを使ってアシュラマンの蹴りをキャッチし、第519話ではそのテールを使った攻撃を次々と繰り出す展開になりましたよね。炎を放つファイヤーテール。
燃
その末にサラマンダーが、アシュラマンに対抗して、自分も腕を6本にするのって、ウォーズマン対ペシミマンが、ロボ超人対ロボ超人だったのと近いような気がして。
爪
ああ、そうか!
燃
ここのところ、僕らがずっと言っている、ゆでたまご先生はこの数年で『キン肉マン』という物語を畳みに入っている、総括しようとしている、その一環としていろんなキャラクターを回収しようとしている。という説に、これも合致する気がして。
アシュラマンという6本の腕がある超人が、どう闘うか、どう勝つか、どう負けるか、みたいなことを、つきつめて描いてみよう、と考えると......敵もアシュラマンと同じ特性を持っている、というのが一番描きやすいでしょ。ロボ超人にはロボ超人、腕が6本には腕が6本。
爪
なるほど。ただ、サラマンダーのほうが一本多いんだよな、シッポがあるから。
燃
ああ、そうか。それで、これが最終章だとしたら、やっぱりアシュラマンが、召されるというか。
爪
(笑)。召されますか。
燃
っていうことのような気がするんだよね。
爪
ここまでの流れで言うと、そろそろこっちが負ける順番......っていう時にアシュラマンが出てくると、確かに不安な気持ちにはなる。ウォーズマンの時と一緒。アシュラマン、なんていうか負けさせやすいっていうか。
燃
そうなの。だから、EVILなんですよ。
爪
ここまでの試合の流れ、パピヨンマンと闘った時のマリポーサと一緒ですよね。何か仕掛けるたびに返される。518話、519話ともに、最後のページがサラマンダー優勢で終わってるもんな......アシュラマン、阿修羅像を元にしたこのフォルム自体が、超人として完璧に近いと思うんですよね。
燃
うん。だから、それを崩す方向に進んで描くほうが楽しいんじゃないかな。悪魔六騎士の中で言うとアシュラマン、7人の悪魔超人の中で言うとバッファローマン。完璧で強くて、わかりやすくてかっこいいからこそ、負けるのに最適、っていう。
爪
と考えると、ますますアシュラマンは負けちゃうことになるけど......でも、いつも、我々の読みは当たらないからなあ。
燃
我々の読みとか、ここまでの勝敗の流れを考えると、アシュラマンは負ける。でも、どうなるかわかんない、というのが『キン肉マン』の世界だもんね。
爪
そうですよね。我々みたいに、長い間プロレスを観続けていると、一試合一試合は楽しいけど、びっくりするってことって減っていくじゃないですか。
燃
そうだね、展開が読めるようになるから。
爪
「えっ、こんな結末になるのか!?」って驚くことが減ってくる。
燃
そう。で、漫画でそれをやるのは、実際のプロレスに輪をかけて難しい。
爪
ほんとに難しい。それをやっているのが、『キン肉マン』のすごいところだと思う。
燃
そうなんだよね。こっちが各キャラクターのことや、物語の展開を熟知して、この先どうなるかが読めるようになりそうなところで、物語にバグを起こして驚かせる、っていうことがすごくうまい気がする。
爪
そうそう。
燃
それに、考えたら、アシュラマンがいい勝ち方したのって、覚えてないもんね。いい負け方をしたのは覚えてるけど。(担当編集に)アシュラマンのいい勝ち方、覚えてます?
担当編集
いや......実はアシュラマンって、シングル戦では一回も勝ったことないんです。
燃
ええー!?
爪
マジか! じゃあ本当に善戦マンなんだ。
燃
でも逆に「シングルで勝ったことがない」っていう印象もなかった。あれかな、プロレスと同じで、僕らがアシュラマンの勝敗の歴史を重視していなかったのかな。アシュラマンをいうキャラのほうを重視していて。
爪
ああ、そうですね。カッコいいからいいじゃん、という。キンケシでアシュラマンが出たら、うれしかったもんな。その時に「アシュラマンって何勝何敗だっけ?」みたいなことは考えない。ウォーズマンだと、僕らは、負けが多い印象を持っているけど、アシュラマンにはなぜかその印象がない。
燃
おもしろいね。で、そこもEVILだね。
爪
また言う(笑)?
燃
強いイメージがある、でも負ける、そして負けても価値が下がらない。
爪
ああ、そもそもヒールって、勝ち負けがキャラの魅力に関係ないとこ、ありますもんね。EVILが東京ドームでウルフアロンに負けようが、「G1CLIMAX」の決勝でKONOSUKE TAKESHITAに負けようが、EVILの評価は下がらない。アシュラマン、それに近いところがあるのかも。
燃
ほんとだね。いやあ、気づいてなかった。
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燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)、『すべて忘れてしまうから』(扶桑社)、『明けないで夜』(マガジンハウス)など多数の著作がある。最新著は『これはいつかのあなたとわたし』(新潮社)。群像Webでは「湯布院紀行」の漫画連載もスタート。また、『GetNavi web』にてコラム「もの語りをはじめよう」を連載中。ラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:30~27:00)もチェック
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爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。『きょうも延長ナリ』(扶桑社)美容と健康にまつわるエッセイ『午前三時の化粧水』も発売中。ドライバーWebで『横顔を眺めながら ~爪切男の助手席ドライブ漂流~』を連載中。主演:木村昴でのドラマ放送でも話題となった『クラスメイトの女子、全員好きでした』が文庫化。最新刊は、『愛がぼろぼろ』(中央公論社)
取材・文/兵庫慎司©ゆでたまご/集英社取材協力/Bar HIDE
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