第76回ベルリン国際映画祭の開催7日目となる2月18日、日本から唯一コンペティションに入選した日本画家、四宮義俊監督の初長編アニメーション「花緑青が明ける日に」が披露され、監督と、声優を担当した萩原利久、入野自由が現地を訪れた。レッドカーペットでは海外のアニメ・ファンからサインを求められる姿も見られた。
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舞台挨拶で四宮監督は、「この作品は花火を描いていますが、花火というのは日本では8月に上がるもので、故人を偲ぶ意味だったり、第二次世界大戦で亡くなった方の慰霊の意味もあったりと、お祭りという側面と鎮魂という側面があります。いまはいろいろな出来事が世の中にありますが、花火というものを通して、さまざまな出来事、悲劇といったものを考えるきっかけになってもらえれば幸いです」と挨拶をした。
本作は創業330年の花火工場を舞台に、再開発による立ち退きを前に、幻の花火「シュハリ」をめぐる若者たちの思いが綴られる。声優初挑戦の萩原利久と、古川琴音、入野自由が、花火への思い入れを抱えた主人公たちに扮する。ノスタルジーとメランコリーに満ちた彼らの複雑な思いが、パステル調のディテールに富んだ美しい色彩のなかに浮き彫りにされる。
上映後、日本のマスコミの取材に応じた3人は、それぞれ感激の思いを言葉にした。
四宮:「終わった直後で言語化不可能な感じですが(笑)、拍手の量やエンディングでみんなが感想を言い始めているあの空気が、日本では味わったことがないなと感じました。自分がアニメの映画を作りたいと思った初期衝動は幼稚なもので、今日エンディングで監督として名前が出るのを見て、そういえば昔そんなことを考えていたなと思い出されました」
萩原:「監督がおっしゃる通りで、いま抱く感情をなんと言えばいいのかわからないんですが、後日振り返れば振り返るほど、今日という日が鮮明に、この先何をしてもこの日を振り返るんじゃないかと思うぐらい、目や体で感じたものは特別な景色であり、経験だったと思います。素晴らしい体験をさせて頂きました」
入野:「まるで夢を見ていたかのような感覚で(笑)、始まる前と上映後は緊張感もあったので、気をしっかり持っていたんですが、登壇し終わった途端、なんとも言えない感覚がありました。ドイツの観客のみなさんに作品が伝わっている空気感がありましたし、くすくす笑ってしまうようなところも一緒に笑っていたり、ラストシーンに向けてどんどんみんなの気持ちがスクリーンに向いているのも伝わってきました。今日が忘れられない日となり、ちゃんとこの日を誇れるように、この先も役者として、声優として頑張っていこうと思えました」
さらに大画面の会場で作品を観た感想について、四宮:「作っている側としては細部まで気になっていたんですが、あのスケール感でドーンと音楽が響くと、細かいことが気にならなくなりました(笑)。映画体験とはこういうことなのかと。監督としてはある種ありがたいというか、みんなで巨大な何かを見る、まさに花火もそうですが、全員で同じ体験をするというスケール感は初めてでした」
萩原:「僕はこれまで手元の小さい画面で映像を観ていただけなので、このサイズとでは見えるものや感じるものがやはり全然違うと思いました。これだけ大きな場所でお客さんと一緒に観るというのはあまりない体験なので、ひとつひとつがとても印象的に感じられる時間でした」
入野:「ぼくが最初に作品を観たのは試写室で、自分と映画というようにプライベートなものとして受け取る感覚があり、それはそれでいい体験で感動したんですが、今日はあのレッドカーペットを歩いて、たくさんの熱狂的な観客の方と一緒に映画を観てこの作品を体験するというあの時間は、特別だと思いました。いろいろな形で作品の見方というのは変わるんだなと体感しました」
四宮:「とくに満席だったので、後ろを振り返ったときの(観客が並んでいる)あの景色というのは、なかなか見られないものだと感じました」
また公式上映に先立つプレス会見では、花火に関わる日本の伝統や因習について、四宮アニメの技術的な側面、AIについてなど、好奇心に満ちた質問が続いた。四宮監督は、「自分は建築が好きなんですが、アールヌーボーができた瞬間というのは産業革命の大きな波が来て、その瞬間、それまでの宗教的な概念などがすべて覆されたんですが、職人さんの技が一瞬輝いたんです。今日だったらAIという新しい技術、デジタルの波がきたときに、最後に輝く人間の手仕事は必ずあるし、むしろこういう間際だからこそ人間の技術が輝く瞬間というのがあると思っています。今回はそういうものをテーマに据えたところもあります」と、ポジティブなヴィジョンを明かした。
本作は日本で3月6日から全国公開を迎える。(佐藤久理子)
【作品情報】
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花緑青が明ける日に
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