【F1】アストンマーティン・ホンダ、巻き返しのカギは?ストレート車速が30km/hアップする可能性も

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【F1】アストンマーティン・ホンダ、巻き返しのカギは?ストレート車速が30km/hアップする可能性も

2月18日(水) 10:00

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ホンダF1バーレーン合同テスト

前半戦レポート(後編)

◆前編>>

バーレーン合同テストの前半3日間を終え、アストンマーティン内部の手応えはどうだったのか──。

チームアンバサダーを務めるペドロ・デ・ラ・ロサは、今はまだ基礎確認データ収集作業が中心で、セットアップ作業も進めていないため、マシンの性能を語るレベルにはないと説明する。

アストンマーティン・ホンダの戦闘能力はいかに?photo by BOOZY

アストンマーティン・ホンダの戦闘能力はいかに?photo by BOOZY



「今の段階では、我々の(マシン性能の)限界がどこにあるのかすら、はっきりとはわかっていない。まだパフォーマンス最適化のフェーズに入っていないからね。セットアップを煮詰めるフェーズにも入っていない。マシンの特性を探るために、大きく仕様を変えずに現状の仕様のまま、とにかく周回を重ねることを優先しているから。

まだ基本的な項目を確認している段階で、特別なことをしているわけではないんだ。まともなロングランすらできていないし、C3タイヤでの本格的な走行も2日目が初めて。性能をきちんと引き出せたわけではなく、今はまさに学習段階だ。テストプログラム全体として少し遅れている、という状況だね」

問題は何かひとつではなく、マシンパッケージ全体が複雑に絡み合った問題だと、デ・ラ・ロサは説明する。

「今のF1は完全にパッケージの戦いなので、特定の部分だけを切り出して問題点を指摘することはできない。パワーユニット、空力面、メカニカル面、タイヤのすべてが一体となって、最終的なパフォーマンスが決まるんだ。

ただ、すでに課題がある領域はいくつも特定できていて、対応にも取りかかっている。しかし、それは一晩で解決できるものでもなければ、数分で片づく話でもないよ」

その一例が、ギアボックスだ。

単純に8速のシーケンシャルギアボックス(※)という部分だけでなく、エンジンとモーターを合わせた約1000馬力の強大なトルクを伝えるクラッチや、駆動を左右リアタイヤに分配しマシン挙動をコントロールするディファレンシャルも含めて。

※シーケンシャルギアボックス=レバーを前後に操作して、1速ずつ順番にギアを変速するトランスミッション。

そういったギアボックス全体のハードウェアとソフトウェアを、アストンマーティンは今年から自社製造している。その確認とセットアップ作業にも、もちろん時間はかかる。

【フェルスタッペンも不満を訴えた】フェルナンド・アロンソが現状を説明する。

「僕らにとっては、これが初めての自社製ギアボックスだということも忘れてはいけない。ギアボックスだけでなくデフやクラッチも初めてだから、もっとデータが必要なんだ。実際に走ってみて、ダウンシフトが少しハーシュ(入りづらい)だったり何か問題があれば、ピットに戻ってセッティングを変更して、また走って試す必要がある。

今まではメルセデスAMGのパワーユニットとギアボックスを使っていて、セッティングもすべてメルセデスAMGのほうで整えられていた。だけど今年はすべてが新しいので、これを改善するには時間が必要だ」

ダウンシフト時の挙動については、百分の数秒でギアを切り替えるクイックシフト機構だけでなく、パワーユニット側の点火制御も連動して煮詰めなければならない。この分野に何年もの経験があって勝ちまくっていたレッドブルですら、マックス・フェルスタッペンが不満を訴え改善を続けていたところだけに、簡単にそのレベルまで到達できるわけではない。

となれば、ブレーキング時のマシン挙動にも影響する。ブレーキングが安定しなければ、ブレーキング踏力を抑えざるを得ず、シフトダウンも1速まで落とすことができない。

結果として、MGU-K(※)からのエネルギー回生量は減ってしまう。それが次のストレートでアシストを使える時間に響き、最高速を伸ばせなくなる。足りない分をコーナリング中に回生しなければならないから、コーナーもわざとゆっくり走って、MGU-Kで制動をかけて充電をしなければならない。それも、コーナリング性能が低いマシンなら発電できる量が減ってしまう。

※MGU-K=Motor Generator Unit-Kineticの略。運動エネルギーを回生する装置。

マシン挙動、発電、パワーユニットの出力......すべてがリンクしているのだ。

「特に今回のレギュレーションでは、ブレーキングのパフォーマンスがそのまま直線スピードにも影響する。ブレーキング時にどれだけエネルギーを回生できるか、また減速時の安定性がどれだけ高いかによって、次のストレートで使えるエネルギー量が変わってくるんだ。

コーナーのエイペックス(※)で1速多くダウンシフトできれば(発電量が増え)、その分だけ次の加速で使えるエネルギーも増える。だから結局は、マシン全体をあらゆる面で強化していく必要がある。それが今、我々に求められていることだよ」(デ・ラ・ロサ)

※エイペックス=コーナーを曲がるクルマが最もイン側(内側)につく頂点。クリッピングポイント。

【実質3.2日しか走れていない】パワーユニット側としても、こうしたダウンシフト時の制御もさることながら、エネルギーマネジメントの熟成も必須事項となる。

どこでエネルギーを使い、どこでセーブし、どこで充電するか──。それによってストレート車速は30km/hも違い、1周で何秒も違ってくる。

ホンダの折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャーはこう語る。

「エネルギーマネジメントがパフォーマンスを決する大きな要素なので、我々もシミュレーションで準備し、その後にDiL(ドライバーが操作するシミュレーター)のほうで煮詰めて持ってきました。それでも、やはり実際にコースを走ると、我々がシミュレーション上で最適だと考えているものと、ドライバーが走っていて『これがいい』と思うものに乖離は出てきます。

そのあたりのフィードバックを、ドライバーからかなりもらいました。それを来週に向けてもう一度シミュレーションに入れて、『こうすれば速くなる』というのをいろいろと模索している段階です」

同じバーレーンのコースを走っていても、ライバルたちははるか先を行っている。

最大で7日間走ったライバルたちに比べ、アストンマーティン・ホンダは4日。初日は午後を丸ごと失い、3日目も午後に2時間20分を失ったことを考えれば、実質的に3.2日ほどしか走れていない。ライバルたちがバルセロナのテストを終えた時点にようやく追いついた、というのが実情だ。

だから「今のラップタイムが4.5秒遅い」と言っても意味がない。

マシンもパワーユニットもすべてが新しいだけに、その熟成には時間を要する。しかし、滑り出しは遅くとも、熟成の速度は比例的に上がっていく。

苦境にあることは間違いないが、残り3日間のテストこそが重要だ。そこから開幕戦に向けて、少しでも遅れを取り戻すための充実したテストをこなせるかどうかにかかっている。



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