2月17日(火) 23:30
亡くなった方名義の預金は、死亡した時点で相続人に承継される対象になります。
死亡後に預金を引き出しても、そのお金が自動的にあなた個人のものになるわけではありません。相続人が複数いる場合、遺産分割の話し合いでは「相続財産を一時的に引き出し立て替えた」と考え、後日、相続人全体で精算する形にするのが安全です。
相続税の申告が必要な場合、預貯金は基本的に被相続人の死亡日時点の残高を基準に把握します。死亡後に引き出しがあった場合でも、金融機関の残高証明書などで死亡時点の残高を確認し、その金額を基準に相続財産として整理していく流れになります。
引き出したお金の使い道が、葬儀代や医療費、生活費だとしても、基本的には相続財産を使ったことになります。ただし、相続税の計算上ではそれぞれ扱いが異なります。
まず葬儀代は、相続税の「葬式費用」として一定の範囲で遺産総額から差し引けます。例えば、通夜・告別式、火葬・納骨、葬儀社への支払いなどは対象になりやすい一方、香典返しや墓石購入などは対象外なので、領収書を残しておく意味が大きいです。
次に、医療費は死亡時の未払い分(入院費など)が、相続税の債務控除対象になります。こちらも請求書や領収書が重要で、所得税の医療費控除とは考え方が別なので、「相続税で引けるか」「医療費控除になるか」は分けて整理しましょう。
生活費の支払いは、少し注意が必要です。亡くなる前の家賃や施設費など、本人負担が確定していたものは債務控除の対象になり得ますが、死亡後に家族の生活費まで相続財産から引き出すと、相続人間で不信感が生まれやすいです。そのため、「お父さまの支払いだったのか」を意識して線引きしておくと安心です。
すでにお父さま名義の預貯金を口座から引き出した場合、いちばん大事なのは「記録」と「共有」です。まず、いつ・いくら引き出したかが分かる通帳記録や明細を残しましょう。
次に、何に使ったかが分かる領収書・請求書・振込明細を保管します。現金払いは使い道が見えにくく、「本当に葬儀代や医療費に使ったのか」「使い込みではないか」と疑われやすいので、証拠があるだけで説明が楽になります。
さらに、相続人がいるなら早めに、「葬儀代や未払い医療費の支払いに充てるために引き出した。領収書は保管して、遺産分割で精算する」と共有しておくと安心です。これだけでも、後のトラブルをかなり防げます。
また、銀行口座は死亡の連絡が入ると凍結されるのが一般的です。口座が凍結した後に、追加の支払いが必要になる場面では、「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」も選択肢です。
相続人が単独で引き出せる範囲は計算式があり、同一金融機関あたり上限150万円とされています。正攻法の手段を知っておくと、焦って動かさずに済みます。
最後に、相続税の申告が必要かどうか判断に迷う場合は、国税庁の案内を参考にして確認し、必要に応じて税理士など専門家に相談すると安心です。
死亡後に引き出したお金は、基本的に相続財産の一部として扱い、遺産分割の話し合いで金額と使い道を共有して精算するのが安全です。葬儀代や未払いの医療費は相続税で差し引ける可能性があるため、領収書などの証拠はしっかり保管しましょう。
使い道を見える化して相続人に共有し、遺産分割で精算する形に整えれば、申告も手続きも進めやすくなるでしょう。
国税庁 No.4105 相続税がかかる財産
国税庁 No.4129 相続財産から控除できる葬式費用
国税庁 No.4126 相続財産から控除できる債務
一般社団法人全国銀行協会 ご存知ですか? 遺産分割前の相続預金の払戻し制度
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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