蘇る名馬の真髄
連載第34回:マンハッタンカフェ
かつて日本の競馬界を席巻した競走馬をモチーフとした育成シミュレーションゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)。2021年のリリースと前後して、アニメ化や漫画連載もされるなど爆発的な人気を誇っている。ここでは、そんな『ウマ娘』によって再び脚光を浴びている、往年の名馬たちをピックアップ。その活躍ぶりをあらためて紹介していきたい。第34回は、ハイレベルな世代で激闘を繰り広げ、GⅠ3勝を挙げたマンハッタンカフェの足跡を振り返る。
2001年の有馬記念を制したマンハッタンカフェphoto by Kyodo News
ふだんは影の薄い不思議な少女。しかし、レースとなれば、印象的な長髪をなびかせ、漆黒に黄色のアクセントをあしらった勝負服でレースを駆け抜ける――。それが『ウマ娘』のマンハッタンカフェだ。
このキャラクターのモチーフとなった競走馬・マンハッタンカフェは、青鹿毛の馬体に身を包み、2001年〜2002年に現役生活を送った。その間、2001年のGⅠ菊花賞(京都・芝3000m)、GⅠ有馬記念(中山・芝2500m)、2002年のGⅠ天皇賞・春(京都・芝3200m)を勝利。同馬にまたがるジョッキーは、黒と黄色の勝負服を身にまとっていた。
マンハッタンカフェの同世代は、名馬ぞろいだったと言っていいだろう。無敗でGⅠ皐月賞(中山・芝2000m)を制したアグネスタキオン、この世代のダービー馬に輝いたジャングルポケット、芝・ダートのGⅠを制した外国産馬クロフネ......。早くから「ハイレベルな世代」だとファンに騒がれており、3歳クラシックの行方にも注目が集まっていた。
マンハッタンカフェがこの世代の一線級と互角に戦ったのは、3歳秋になってからだった。春までは1勝止まり。皐月賞やGI日本ダービー(東京・芝2400m)の舞台は踏めなかった。しかし、夏に条件戦を連勝し、クラシック最終戦となるGⅠ菊花賞(京都・芝3000m)へと駒を進めた。
ダービーを勝ったジャングルポケットや、同2着のダンツフレームに人気が集まるなか、重賞勝ちのないマンハッタンカフェは6番人気と伏兵の1頭にすぎなかった。だが、このレースで同馬は本格化したことを証明する。
小雨の降るなか、レースは11番人気のマイネルデスポットが先頭に立って、快調な走りでレースを進めていく。向正面から3コーナーにかけて後続との差を広げ、4コーナーを回って直線を向いても、その脚色に衰えは見られなかった。数馬身のリードを保って、ジャングルポケットやダンツフレームなど、人気馬の追撃も届きそうになかった。
このまま逃げ切ってしまうのか――。誰もがそう思ったところだった。馬群の中央から矢のように伸びてきたのが、マンハッタンカフェだった。ゴール前で青鹿毛の馬体がしっかり差し切ると、鞍上の蛯名正義騎手は大きく手を挙げた。
こうしてGⅠ馬となったマンハッタンカフェだが、伏兵馬が逃げ残る展開だったゆえ、同馬の実力を疑問視する声もあった。「特殊なレースになり、実力馬が能力を発揮できなかったから勝てたのでは?」という見解が多かったのである。
だが、マンハッタンカフェはそうした声をすかさず一掃する。古馬一線級との対戦となった次戦、有馬記念でその実力を存分に見せつけたのだ。
1番人気はこのレースが引退戦となる「世紀末覇王」テイエムオペラオー。同馬のライバル、メイショウドトウが2番人気で続く。マンハッタンカフェは3番人気だった。
はたして、菊花賞の走りは本物なのか。大観衆が見守るなか、レースは武豊騎手騎乗のトゥザヴィクトリーが淡々と逃げてレースの主導権を握る。テイエムオペラオーとメイショウドトウは中団、マンハッタンカフェはその後ろを追走した。
勝負どころの4コーナー。馬群が凝縮し、テイエムオペラオーとメイショウドトウは鞍上が手を動かして仕掛けていく。だが、なかなかポジションを上げられず、トゥザヴィクトリーとの差は詰まらない。
一方、マンハッタンカフェは外から一気に加速。あえぐ古豪2頭をかわして、直線に入ってからさらに脚を伸ばしていった。そして、最後は粘るトゥザヴィクトリーをとらえ、内から伸びる伏兵アメリカンボスの追撃も抑え込んだ。
現役トップクラスが集う年末のグランプリ。マンハッタンカフェは見事にその熾烈な争いを制した。この走りを見て、同馬の実力を疑う人はもういなかっただろう。
翌年、マンハッタンカフェは天皇賞・春を制覇。長距離では隙のない強さを見せつけた。さらに、秋にはGⅠ凱旋門賞(13着。フランス・芝2400m)にも挑戦したが、レース後に屈腱炎が判明。現役を引退した。
種牡馬になってからも、長年にわたって活躍。レッドディザイアやヒルノダムールなどのGⅠ馬を送り出した。ハイレベルな世代を代表する1頭であったことは間違いない。
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