
『悲しみと無のあいだ』(文藝春秋)著者:青来 有一
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◆父の被爆、作家の肉声に近く
青来有一は1958年生まれ。戦後世代でありながら、生地・長崎に落とされた原爆をめぐって小説を書いてきた。その一つの達成は、今年
『人間のしわざ』
として刊行されたが、本書では、より作家の肉声に近い形で小説は綴(つづ)られている。
なくなった父親は被爆者だったが、原爆について、被爆体験についてほとんど語らないまま世を去った。作家である主人公の「わたし」は、父親が語らなかった余白をなんとか埋めようとする。
どうすればそれは埋められるのか。埋めることは許されるのか。ヒントは意外なところにあった。クロード・シモン
『フランドルへの道』
が援用される、架空の被爆経験の箇所は圧巻である。
【書き手】
陣野 俊史
1961年長崎生まれ。文芸評論家、フランス文学者。ロック、ラップなどの音楽・文化論、現代日本文学をめぐる批評活動を行う。最新作に『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』(集英社)。その他の著書に『フランス暴動 - 移民法とラップ・フランセ』『じゃがたら』(共に河出書房新社)、『フットボール・エクスプロージョン』(白水社)、『フットボール都市論』(青土社)など。
【初出メディア】
日本経済新聞 2015年9月3日
【書誌情報】
悲しみと無のあいだ
著者:青来 有一
出版社:文藝春秋
装丁:単行本(148ページ)
発売日:2015-07-22
ISBN-10:4163903038
ISBN-13:978-4163903033
