2月14日(土) 4:30
日本円には、法貨として一定の「強制通用力」というものが認められています。具体的には、金銭の支払いにおいて日本円による支払いを原則として拒めないという効力のことです。
日本銀行が発行する銀行券、いわゆるお札については、日本銀行法により「法貨として無制限に通用する」とされています。そのため、円の支払いが必要となる取引では、銀行券は原則として枚数の制限なく使用できるのです。
一方で、硬貨については例外があり、強制通用力に上限があります。法律上、硬貨は一種類につき20枚まで、金額にすると額面の20倍までが法貨として通用する範囲とされています。
しかし、この強制通用力は、あらゆる場面で自動的に働くものではありません。問題になるのは、すでに支払う義務が発生している場合です。例えば借金の返済など、すでに「お金を払う約束」が成立している場面がこれにあたります。
飲食店の利用は、法律上は契約と見なされます。店が条件を示し、客がそれを理解したうえで注文することで成立します。
このとき重要なのが、支払い方法が事前に分かる形で示されているかどうかです。入口や券売機、レジ付近に「キャッシュレス決済のみ」「現金は使えません」と書かれていれば、その条件を了承して入店したと見なされます。
つまり「現金で払える」という前提自体が最初からない状態です。そのため、強制通用力の話になる前に、現金以外で支払う契約が成立している、という理解になります。
問題になりやすいのは、あとから条件を知らされるケースです。例えば、以下のようなものです。
・掲示が目立たず、実質的に分からない
・入店時や注文時に説明がない
・食後の会計で初めて「現金不可」と言われる
こうした場合は「現金払い不可の条件に同意していた」とは言えません。しかし、すでに代金を払う義務が発生している以上、現金での支払いが有効になる可能性があります。
実際には、別の決済手段を探したり後日対応したりと調整されることもありますが、法律的な分かれ目は、事前に分かる形で示されていたかどうかがポイントになるのです。
日本円には確かに強制通用力があります。ただしそれは「どんな店でも現金を使うことができる」という意味ではありません。
飲食店では、「支払い方法が事前に明示されているか」「それを理解したうえで注文しているか」が重要になります。支払い方法が事前に明示され、その条件を理解したうえで注文している場合は「現金お断り」であっても原則として違法にはならないのです。
e-Gov法令検索 日本銀行法
執筆者 : 竹下ひとみ
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種
【関連記事】
食べる前のソフトクリームを落としてしまった息子。交換を依頼すると「新しいものを買ってください」と言われました。わざとではないのに、理不尽すぎませんか?