一瞬を切り取る写真の力に圧倒されることがあります。そんな力を再認識したのは、兵庫県・有馬温泉の芸妓処「有馬芸妓」のXアカウント(@arimageiko)が9月27日に発信した一枚の写真でした。
「一つのエレベーターに芸妓15人乗ったらこうなる。」というコメントとともにアップされたのは、日本髪の芸妓さんたちがぎゅうぎゅう詰めになった、なんとも華やかな“すし詰めショット”でした。
芸妓さんの日本髪がずらりと並んでおり、色とりどりのかんざしが画面を埋め尽くした光景は、金色の内装も相まって息をのむほど華やか。エレベーターの扉が開いた瞬間にこんな浮世離れした光景が広がっていたら、きっと見惚れてしまうでしょうね。
それにしても、これってどんな状況だったのでしょう? 同アカウントの“中の人”である一晴(いちはる)さんからお話を聞きました。
芸妓さん15人の“すし詰めショット”はなぜ生まれたのか
――エレベーターの“すし詰めショット”は、どんな状況で撮った一枚だったのですか?
一つのエレベーターに芸妓15人乗ったらこうなる。 pic.twitter.com/RvmOp4i2Rr— 有馬芸妓 (@arimageiko) September 27, 2025
一晴:
あれは、有馬芸妓が大阪のホテルへ出張した日の帰りの一枚です。タクシーを待たしていて急いで帰らないといけなかったので「とりあえず、みんな乗って!」という感じで、15人でエレベーターに乗りました。
――我々にとって、見たことのない光景すぎてインパクトがありました(笑)。ただ、芸妓さんの日常としては決してめずらしくない光景なのでしょうか?
一晴:
15人集まるということはあまりなく、あんなぎゅうぎゅうな密度になることはないと思います。
――一斉に15人も乗ったら重量オーバーでブザーが鳴っちゃいそうですけど、大丈夫でしたか?
一晴:
1回鳴ったんですけど、ベルボーイの方いわく一定の時間が経つと鳴るエレベーターやったらしく「大丈夫です」とおっしゃっていたので、そのまま下まで降りました。
「バカ殿の1シーンみたい」「コウメ太夫はどこ?」という反応も
――今回の投稿はXで話題になりましたが、どんなお気持ちですか?
一晴:
私たちにとっては普段の日常すぎて、なにがおかしいのかあんまりよくわかっていないので、急にバズってびっくりしています(笑)。
――ありのままの日常を撮っただけなのに、こんなに反応があるとは……みたいな?
一晴:
そうそう、どっちかっていうとそんな感じですね。
――今回の投稿でおもしろかったのは、いろいろなリプライが寄せられていたことです。たとえば、「はじっこに柄本明いそう」「バカ殿様の1シーンみたいになってる」「コウメ太夫どこかなー?」など。
一晴:
はい(笑)。
――いわゆる、インターネットならではのノリのリプライが多かったですよね。有馬芸妓さんからすると、そういう受け取られ方をされるのは問題ないですか?
一晴:
まあ、関心をもってもらったことはよかったと思いますね(笑)。SNSの投稿は有馬芸妓の周知のためにやっているものですので、それで知っていただけるのはいいと思います。
――リプライでもう1つ、「誰一人顔が映ってないのが見事」というコメントも印象に残りました。
一晴:
ああ、それはね、実は3枚ぐらい撮っていて顔が写ってないやつを投稿したんです。エレベーターはぎゅうぎゅうだったので、撮ったことに誰も気づいていませんでしたが(笑)。
――そうだったんですか! その結果、芸妓さんの特徴的な髪やかんざしが目立つ画像になり、「たくさんの芸妓さんが集まってる!」というインパクトにつながった気がします。
一晴:
そうなんですね。全然、意識してなかったです(笑)
芸妓さんの仕事内容とは
――今までなんとなく芸妓さんという存在は知ってはいたものの、このポストをきっかけに改めて芸妓文化に興味を持った人は多いと思います。有馬芸妓さんは普段、どんなお仕事をされているのでしょうか?
一晴:
みなさまのイメージどおり、お座敷に出るのが主なお仕事なんですけども。有馬芸妓の踊りや三味線の披露、お座敷あそびをしたりです。
あと、コロナ禍以降は「芸妓カフェ一糸(いと)」という気軽に来れるお店を土日のみオープンしています。
――普通にカフェとして利用したら、芸妓さんが接客してくれるのでしょうか?
一晴:
そうですね。店内には舞台があって、コーヒーを飲みながら踊りが見られます。あと、実際にかつらを見て触ってもらったり、非日常な文化が体験できるカフェになっています。
――有馬芸妓のホームページによると、大学で講義もされているようですね。
一晴:
そうなんです。特に、女性の方は芸妓文化が気になるところのようで、ご依頼があったときに芸妓の歴史などを講演し、さらに三味線や踊りも披露する。講演と公演がセットになっているようなことをさせていただいています。
ほかには、現役の芸妓がメイクから着付けまでをお手伝いする「芸妓変身体験」というプランも用意しています。
――このプランは、女性のみですか?
一晴:
それが、意外に男性にも需要がありまして(笑)。かつらを着用するため頭の大きさや体格があるので要相談になります。
芸妓文化が縮小傾向にある理由
――今、芸妓を目指す女性は多いのでしょうか?
一晴:
本気で芸妓になる子自体は少ないですが、憧れを持っていて「なりたい!」という子は常にいます。気軽に芸妓カフェに様子を見に来られたりします。
――一晴さんはどのような経緯で芸妓さんになったのでしょうか?
一晴:
私は大学卒業後、海外に興味があったので外国に行こうと考えていたのですが「一旦、日本のことを深く知ろう」と思い立って芸妓になり、そのまま今に至るという感じです(笑)。
――一方、芸妓の派遣を依頼するお客さんはどういう方が多いですか? 個人的には、大人の高級な遊び方というイメージですが……。
一晴:
企業の会長さんクラスのご高齢の方も多いですが、私たちもSNSの発信で間口を広げているので「自分のおじいちゃんの古希のお祝いで踊りに来てほしい」とご家族が呼んでくれはったり、「お店の何周年記念」「会社の何周年パーティー」などの宴席が行われるホテルや船上のパーティーに行って踊ったり、本当にさまざまです。
――有馬芸妓さんのホームページを見ると、「有馬温泉に兵庫県内で唯一残った芸妓文化」と書かれていました。現在、芸妓業界は縮小傾向にあるのでしょうか?
一晴:
全国的にそうですね。次第に廃業するところも増えていって、今は兵庫県内は有馬だけという状況です。やっぱり、芸妓の年齢も上がってきていますので、後継者がいなければどうしてもなくなっていきますよね。
――後継者不足という現実は日本全体、どの業界にもある問題ですね。
一晴:
そうですね。職人さんと一緒で、「明日からやります」とはいかないので。
芸妓文化を周知させるために行っていること
――芸妓文化や有馬芸妓を周知させていくために意識して行っていることはありますか?
一晴:
SNSでの発信や、先ほどお伝えした芸妓カフェなどです。ほかに挙げるとしたら今、ふるさと納税のなかに有馬芸妓が入っているんですね。
2021年、有馬芸妓は「神戸歴史遺産」に認定されました。その後、ふるさと納税の神戸歴史遺産の項に「芸妓をお呼びする」という選択肢ができまして。要するに、観覧料は神戸市さんが持つ形で芸妓カフェで踊りが無料で見れたりします。
――なるほど、そういう角度でも間口は広がっているんですね。間口を広げるという意味でいえば、SNSの発信も効果的だと思います。今回の思いもよらないバズりは、有馬芸妓さんにとってうれしい反応でしたか?
一晴:
はい、そうですね! ありがたいと思います。
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芸妓さんからすればありふれた日常だったとしても、一般の人にとっては衝撃的な一瞬だった今回の投稿画像。そんな瞬間を発信することで思わぬバズりへと発展し、結果的として芸妓文化の周知につながるのだからおもしろいものです。
浮世離れして華やかだった芸妓さんの日常風景、守りたい文化です。
<取材・文/寺西ジャジューカ>
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