(左より)織田裕二、北方謙三
2月12日(木) 20:00
壮大なスケールの連続ドラマ『北方謙三水滸伝』が2月15日(日)からスタートする。
原作の北方謙三の大河小説『水滸伝』は、完結から20年を経過した現在も新たな読者を獲得し続けている人気作で、その内容は壮大、登場人物は多く、そこでは熾烈な物語が次々に語られる。こんな大規模な話を映像化できるのか?できたのだ。本作の製作陣は約8カ月をかけ、地球半周以上もの距離を移動し、主演級のキャストを揃えて取り組んだ。
『北方謙三水滸伝』ファイナル予告(感動編)
人によっては本作を歴史ドラマという人もいるだろう。しかし、原作者の北方謙三と、本作の主演を務める織田裕二は本作は“青春ドラマ”だと語る。熱い想いを胸に、納得のいかないことに反抗し、理想を追い求めて疾走する物語が幕を開ける。
本作は、中国の四大奇書のひとつ『水滸伝』を原典に、北方が独自の解釈と創作を交えて描いた傑作小説が原作になっている。圧政と腐敗がはびこる社会で、人々は苦しみ、理不尽な出来事に人生を翻弄されていた。平凡な下級役人の宋江(織田裕二)は正義を信じ、自ら“世直し”の書を記す。そこに込められた想いは人々に伝播していき、人々の心を動かす。それぞれがそれぞれの覚悟を抱いて、同じ旗の下に集った。裏社会を生きる者、軍に追われている者、若い者も年齢を重ねた者も、総勢108人。自らのアジトを“梁山泊”と名づけた彼らは、正義を貫くために叛逆を開始する。
織田 小さい頃に『西遊記』は観ていましたけど、『水滸伝』についてはこれまで詳しく知らなかったんです。だから、出演することで勉強になるんじゃないか、と思いながら脚本を手にしました。読んでみたら「え?この役を僕がやるんですか?」という意外な驚きがありました。宋江は実際には戦わないんですよね。僕はこれまでどちらかというと前線で戦う方だったんですけど、宋江は“心の戦い”なんですよ。だからこれまでとは真逆の役だなとは思いつつも、また新しい戦いにチャレンジすることになるんだな、という気持ちでした。
北方 宋江は実際には戦っていないんですけど“存在”と戦っている、という感じがする。何せ、とてつもなく大きな敵だからね。
織田 国ですからね。それをこんなわずかな人数から始めて……本当に倒せるの?って。でも、先生は「キューバ革命も同じだ」っておっしゃってましたよね。
北方 キューバ革命だって十数人で上陸して、ジャングルの中で仲間を集めて、結果的にはアメリカを倒したわけだからね。
織田 その“想い”の強さですよね。だから、宋江は謎も多いんですよね。この人はどうやってこんなにもたくさんのスパイを囲っていたんだろう?財源はどこにあったんだろう?と。
北方 財源は“志”ですよね。
織田 それは一番高いやつですね(笑)
北方 一番高いけど、金はかからない(笑)
織田 でも、本当に“志の戦い”ですよね。だから、最も敵に回したら厄介なのは宋江だと思うんです。人の心を動かすわけですからね。どんな武術の達人よりも怖い。
北方 “若者に『水滸伝』を読ませるな”って言葉があるんです。若い頃に読むと、反抗心が芽生えて変なことが起こっちゃう。我々が学生の頃は動乱の時代でしたから、そういうものに賭けた世代なんですよね。それこそ怪我したやつもいれば、人生に挫折したやつもいる。
織田 そういうことって僕らの世代ですら知らなくなってきているわけですから、今の若い人はもっと知らないですよね。でも、この話のようなことって明日、起こるかもしれない。歴史って繰り返すものだから。それに今の人は少し“おとなしすぎる”気もするんですよ。綺麗に着飾りすぎているんじゃないか?っていうのは直感として感じています。僕なんかは若い頃は“怒り”が自分の原動力になっていましたから。
北方 私は学生の頃、自分の中に怒りがあったのかも分からないし、あの頃の学生の行動が“怒り”からきたものなのかもよく分からないんです。
昔、ある若い作家に「学生運動をやって日本は変わったんですか?」って聞かれたんだけど、何にも変わってないよ。変わったのは鋪道ぐらい。昔の鋪道は敷石が敷いてあったから、学生が剥がして投げる石にしていたわけ。それが今はアスファルトになったからできなくたったの(笑)。まぁ、言ってみればそれぐらい滑稽なことだったんですよ。
でも、青春っていつも滑稽なものだし、ここに出てくる梁山泊の連中だって、やっぱり青春なんだよ。滑稽で、持て余すものをいっぱい持ってるんだよね。だから、私は『水滸伝』も書きましたし、(続編の)『楊令伝』も書きましたけど、全部“現代もの”です。
僕には昔の人の感覚は分からないよ。だから、あの時代を借りて、動乱が起こってほしいとは思わないけど、「もし、動乱が起こったとしたら、若者はどんな目でそれを観るんだろう?」と。そういう想いはあったよね。
このドラマは中学生に観てもらいたい
宋江が記した世直しの書「替天行道(たいてんぎょうどう)」は、虐げられた人々、行き場を失った人々の心に火をつけていく。宋江は表立って演説をして回ったわけではない。ひとりずつ交渉したり、報酬を与えて仲間を増やしたりもしない。立場も想いも異なる者たちが、宋江の記した“想い”の下に集い、立ち上がり、戦うのだ。
北方 人を惹きつけるものは政治的な思想だけじゃなくて、何かしらの表現物だったりすることがあるんだよ。俺はまだベルリンに壁があった頃に東側に行ったことがあるんだけど、その頃の東ドイツは人が集まるのは禁止、5人集まったら逮捕されるって状況だった。なのに、広場に何百人もの人が集まっていて、シェパードを連れた警官まで出てきてるんだよ。珍しいなと思って写真を撮ったら、シェパードを放たれたんで急いで逃げたんだけど(笑)。
それで、集まってる人に何してるんだ?って聞いたら「俺たちは反抗する気はない。ただ、壁の向こう側でデヴィッド・ボウイが野外コンサートをやってるから聴きたかった」って言うんだよ(笑)。
織田 西側でやっているボウイを聴きたかった(笑)。
北方 そうなんだよ。でも、そんな馬鹿げたものが青春なんですよ。だから、反抗するやつにものすごい理由はいらない。「デヴィッド・ボウイが聞こえてくればいい」くらいのそういうもんなんだよ、青春って。どれだけ馬鹿で純粋になれるのか。梁山泊に集まった奴らだってみんな馬鹿で、一途で、純粋なんだよ。人間にとって一番大切なものを失っていないから戦える。
織田 なんか理屈じゃないんですけど、このドラマは中学生に観てほしいな、と思っちゃうんですよね。中学生の頃っていろんなことを思う時期ですよね。親に口をきかなくなったり、先生の言うことに納得いかなくなったり、抵抗をはじめたりするのも中学生だなって。
さらに本作では単なる叛逆の物語だけでなく、彼らが行動する背景や、それを支える社会や経済の仕組みも丁寧に描き込まれている。一例だが、梁山泊のメンバーは塩を密売して資金を獲得し、人脈を駆使して地道に反国家の勢力を拡大する活動にも勤しんでいる。本作では合戦や戦いだけでなく、物語を支える“背骨”も丁寧に描き込まれ、反抗する者たちの“青春ドラマ”にリアリティを感じられるのだ。
北方 原典には背骨がまったくないんだよ。隣の村に獲物を持ってるやつがいるから襲ってそれを食おう、とかね(笑)。そうではなくて、物語を支える“背骨”を見つける、それもリアリティのあるものを見つける。それが大事だった。
ヤツらは反体制運動をやってるわけだけど、劇中に出てくる“塩”っていうのは反体制の象徴的なものなんだよね。だから、書きながらそこはすごく考えたし、その面では成功したなと思ってる。
織田 その点が書かれているのは僕もすごく好きです。そういうバックボーンがしっかりと作られていることで、大人の鑑賞にも耐えるものになっていますよね。だからこそ僕は中学生に観てもらいたいって思ったんです。そういう多感な時期の子どもたちに観てもらって、知ってほしい。
このドラマには、「僕の人生はこのままベルトコンベアに乗っていてもいいのかな?」と思う時期の子どもたち、そういうピュアな時期の子どもたちが持っているエネルギーに近いものを感じるんです。
本作は過去の時代を舞台に、壮大なスケールで描かれる群像劇だ。激しい戦いが描かれ、登場人物たちの悲しみや怒りが描かれ、梁山泊に仲間たちが集い、立ち向かうダイナミックな展開が描かれる。その一方で、そこにある感情やドラマは現代の私たちが感じる、誰もが経験する/経験した“青春期の物語”でもあるのだ。
織田 あらためて脚本を読むと「宋江という役をよくぞ俺に依頼してくれたな」って。今もビックリしてます。
北方 いや、いいキャスティングだと思ったよ、俺は。
織田 そう言われて、やっと救われました(笑)。
取材・文:中谷祐介(ぴあ編集部)
撮影:稲澤朝博
ヘアメイク(織田裕二):加藤まり子(MARVEE)
スタイリスト(織田裕二):加藤哲也
衣装クレジット(織田裕二)
ジャケット:GUY ROVER(ギローバー)79,200円(税込)
タートルネックセーター:DRUMOHR(ドルモア)61,600円(税込)
スラックス:DEVORE Incipit(デヴォレインチピット)37,400円(税込)
靴:PARABOOT AVIGNON LIS CAFE 94,600円(税込)
<番組情報>
WOWOW×Lemino 連続ドラマ『北方謙三水滸伝』
2026年2月15日(日)スタート(全7話)
毎週日曜 22:00
放送:WOWOW
配信:WOWOWオンデマンド、Lemino
公式サイト:
https://suikoden-drama.com
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