【アニメ大先生】映画『ひゃくえむ。』海棠の「現実から逃げようか」に心のエンジンが入る

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【アニメ大先生】映画『ひゃくえむ。』海棠の「現実から逃げようか」に心のエンジンが入る

2月11日(水) 12:00

人生に迷ったとき、元気がほしいとき、あるいはただ日常を忘れて泣きたくなるとき――そのような瞬間にそっと寄り添う存在がアニメである。アニメには人生のヒントや生きる力が詰まっている。
本コラム『アニメ大先生』は、「人生で大切なことはすべてアニメが教えてくれる」をテーマに、アニメを通じて得られる学びや気づきを綴る連載である。

【アニメ大先生】連載第20回は、言葉と真摯に向き合い続けてきた森遥香アナウンサーが登場。これまで4度にわたり本連載に参加し、アニメと自身の人生を重ね合わせてきた彼女が、5回目となる今回は映画『ひゃくえむ。』をセレクトする。
全力で走ることの意味、才能と努力、そして「現実から逃げる」という一言に宿る覚悟――。陸上100メートルに人生を賭けるランナーたちの物語を通して、森アナウンサー自身の挫折と挑戦の記憶が静かに、しかし力強く呼び起こされていく。

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★映画『ひゃくえむ。』海棠の「現実から逃げようか」に心のエンジンが入る

人生を賭けて何かに打ち込み、燃え尽きた経験はあるだろうか。

例えば、スポーツや音楽の大会で優勝した、志望校に合格した、仕事で表彰された。
そんなキラキラ輝く成功体験ばかりが思い浮かんだ方は、案外少ないのでは。

自分の限界を知ったり、壁にぶつかって挫折したり。
全力で取り組んだからこその泥臭い感情を、きっと誰しもが一度は味わったことがあるのではないだろうか。

陸上を題材にしたアニメーション映画『ひゃくえむ。』は、まさに私自身も飲み込んだ覚えのある、苦渋の味を鮮明に蘇らせた。
ただ、後味は胸がすくような爽やかさである。ぜひラストまで見てほしい。疲れた時に飲むエスプレッソのような、沁みる一作だと思う。

映画『ひゃくえむ。』は、2025年9月に全国公開されるやいなや、瞬く間にアニメ・映画界隈で大絶賛された。しかも原作は『チ。-地球の運動について-』の魚豊先生。
私も絶対に観に行こうと決めていたはずが、気づいたら大手シネコンでの上映が終了してしまい(あるある)、嘆いていたところに。
昨年末から配信がスタートしたのだ!世界よありがとう!!!(まだ一部劇場で上映中です!)

そんなわけでやっと私も『ひゃくえむ。』を見ることができたのだが、間違いなく「2025年のアニメ映画で最高峰」と言える衝撃作だった。

舞台は、陸上100メートル短距離走。
天才と呼ばれつつもどこか虚無を感じているトガシと、努力型の同級生小宮を中心に、人生のターニングポイントとなる「走るシーン」を軸にして物語が展開される。
シンプルなスポーツ作品かと思いきや、陸上に全てを捧げたランナーたちの半生を描いた、濃密な人間ドラマであった。

登場人物たちは走る意味を探しながら、様々な思いを抱えてレースに挑むのだが、足掻く姿も含めて心動かされる。
その中でも、特に印象に残った言葉が「現実から逃げる」というフレーズだ。

最初に出てきたのは、トガシと小宮が小学6年生の時。ひたすら全力疾走している小宮に、トガシがなぜ走っているのか尋ねると、「辛い現実から逃げるために走る」という理由だった。辛い現実が何かは詳しくは言及されていないが、自分を守るための逃避だったのかもしれない。

それとは対照的に使われるのが、物語終盤、15年も走り続けてきたベテラン・海棠のセリフだ。海棠は、絶対的王者の財津の日本記録を破ることができず、その背中を追い続けながらも勝つことを信じてやまない。
大事なレース前に、ニヤリと発した一言が、

「現実から逃げようか」

だった。
これは、単なる逃避ではなく、厳しい現実を正面から受け止め、理解しているからこそ出る言葉だ。何度も何度も突きつけられても、それでもなお勝てない「現実」を、勝つ「非現実」へと変えようと、財津の背中を本気で追い抜こうとしている。
海棠、かっこ良すぎやしないか・・・!

狂気とも言えるようなこの執念に鳥肌が立ちつつも、冒頭で少し触れた、昔の苦い記憶を思い出した。

私も人並みには何かに打ち込んできた経験はあれども、何をしても特筆した才能がなく、伸び悩んだ。
ピアノも、部活も、そしてアナウンス技術もそうだった。

中学生の頃から野球実況のアナウンサーに感銘を受け、高校から放送部に入部したが、
なかなかお手本のような発声・滑舌が出来ずに苦しみ続けた。
毎日何時間も練習しても上手くならず、師事していたプロのアナウンサーにも「君はアナウンサーに向いてないから諦めた方がいいよ」と現実を突きつけられ、絶望したこともあった。

でも今、こうしてなんとかお仕事としてやっていけているのは、あの時、下手な自分と向き合い、無謀と分かっていても挑戦し、「現実から逃げた」からかもしれない。
海棠の言葉と、その走りに、カタルシスを感じずにはいられなかった。

と同時に、久しぶりに、全力で何かに取り組みたくなった。
100メートル走ではないが、私もこれからの1年間というレースを全力疾走してみようと思う。12月31日にゴールした時、きっと見える景色はいつもと違うんじゃないだろうか。

『ひゃくえむ。』は、現実に負けそうになったときに何度も見たくなる、心のエンジンをかけてくれる作品だった。
ラスト数十秒の圧巻のレースシーンも、思わず走り出したくなるほど鼓舞されるので必見だ。
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