ナイツ塙「まわりで唯一、僕と同じ考えの人は爆笑問題の太田光さん」芸人としての生き方を語る

義父との生活をつづったエッセイ本がコミック化されたナイツ・塙宣之さん/撮影=大塚秀美

ナイツ塙「まわりで唯一、僕と同じ考えの人は爆笑問題の太田光さん」芸人としての生き方を語る

2月11日(水) 8:30

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土屋伸之さんとのコンビ・ナイツとしての活動に加え、漫才協会会長や「M-1グランプリ」の審査員としても活躍し、お笑いの第一線で活躍し続ける塙宣之さん。そんな塙さんが義父との二世帯暮らしをつづったエッセイ『静夫さんと僕』が約2年の時を経てコミカライズされた。ドラマ化への野望など本作についての話題や、塙さんが考える老後について語ってもらった。
【写真】両手を広げ、ギャルのようなポーズでおどけるナイツ・塙宣之さん
義父との生活をつづったエッセイ本がコミック化されたナイツ・塙宣之さん


■「痛いの痛いの静夫に飛んでけー」いじられキャラの静夫さん
――エッセイ本が漫画化されるにあたり、こだわったところについて教えてください。

【塙宣之】4コマの構成は何度も練りましたね。ちょっとした吹き出しや、「今はこうなっています」といった本音を書く部分は特に考えました。静夫さんが読者に変に思われたくないですし、家族からも「なんだこれ」と思われないよう気遣いつつ、くすっと笑える内容になったと思います。

漫画は、エッセイから引き続き、大好きなイラストレーターのちゃずさんにお願いしました。ほっこりするタッチの絵で気に入っています。
『静夫さんと僕』書影


――エッセイをすでに読んでいる人には、漫画版をどう楽しんでほしいですか?

【塙宣之】エッセイだとなかなかイメージが湧きにくいですが、漫画だと、やはりわかりやすくていいなと思いました。義父の静夫さんは奄美大島出身なのですが、ちゃずさんも奄美大島で暮らしていた経験があるんですよ。それでシンパシーもあったのか、漫画化するにあたってスムーズに話が進みましたね。あとは、子どもでも読みやすいですよね。僕の娘たちも、漫画版は読んでくれました。

――娘さんたちは、どんな感想でしたか?

【塙宣之】一番食いついて見ていたのは、静夫さんの浮気話のところですね。ここだけ真剣に見ていました。「え、静夫何やってんの?」みたいな感じで(笑)。

娘たちは静夫さんを、キャラクターみたいな感じで愛しているんですよ。いつも笑っていて、干渉してこない、イジられ役のおじいちゃん。娘が転んで泣いたときに、「痛いの痛いの静夫に飛んでけー」とか「今、静夫に飛んだから大丈夫だよ」とか言えちゃうような感じなので、娘たちにとって静夫さんの過去はかなり意外だったみたいです。

一方で、奥さんはちょっと嫌がってましたね。自分の父親の話が世の中に出るのはやっぱり抵抗があるのか、単純に興味がないのか。ドラマ化のお話が来たりしたら、ちょっとは興味を持つかもしれないです。
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■ドラマ化するなら「僕の役は小栗旬くんで」
――ドラマ好きとしても知られる塙さんですが、もしドラマ化するならどんな展望がありますか?

【塙宣之】週に30本ドラマを見ているので、自分の書いたものがドラマになるなんて夢みたいな話ですね。脚本や監督も機会があればやってみたいです。配役は…僕の役は自分かな。静夫さんは不破万作さん。親子役で共演したことがありますし、静夫さんとビジュアルも似ているんです。

いや、やっぱり僕の役は小栗旬くんで。ボケるの忘れてました(笑)。
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――今作がヒットしたら、ドラマ化以外でやりたいことはありますか?

【塙宣之】僕の夢は、若手のための小屋を作ることなんです。漫才協会の会長として、小屋を作って、若手芸人が毎日出演できる場を作りたいと思っています。

――静夫さんは現在老人ホームで暮らしているとのことですが、近況があれば教えてください。

【塙宣之】静夫さんは老人ホームに入ってからも、元気でやっています。ホームでもまわりの人から愛されていることは変わらずですね。

エピソードでいえば、静夫さんは若いころに空手をやっていた人なんですが、ある日突然空手の練習をしてまわりをビビらせていたと聞きました(笑)。
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■ナイツ・塙の老後は…「考えられない」
――塙さんにとっての理想の隠居生活について教えてください。

【塙宣之】静夫さん自身は仕事をやめたあと、家で絵を描いたりして日々を過ごしていたんです。画材がいっぱいあって、静夫さんが描いた絵は今でも家にたくさん置いてあります。きっと、もっと家で絵を描きたかったんじゃないかな。

僕はというと、静夫さんのように老後はこういう趣味をしたいとか、あまり想像できないんですよね。まだ子どもが小さいですし、隠居生活ってあまりピンとこなくて。

――芸人さんは特に、亡くなる直前まで舞台に立ち続ける師匠が多いですよね。

【塙宣之】それもあるかもしれないですけど、僕自身はすべてにおいて漫才以外の自信がないんです。タレント性もないし。だから、漫才ができなくなったときのことを考えると、すごく怖いんですよね。

静夫さんのように趣味を持つ生活もすてきだなと思うんです。タレントでいえば、所ジョージさんのような趣味のある男ってかっこいいなと考えることもあるんですけど、僕はそれよりも漫才を作っていないと不安になる。強迫観念のようなものがずっとあるんです。今までずっと漫才をやってきたけれど、最近もまたライブを開催したり、noteを始めてみたりと、自分を追い込まなきゃと思ってしまう癖があるんです。

まわりで唯一僕と同じ考えの人がいるんですよ。爆笑問題の太田光さんなんですけど。常にネタを作っていないと苦しくなってしまう芸人って、一定数いるんですよね。
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――それでは隠居生活への憧れも、ほとんどないということでしょうか?

【塙宣之】たしかに、もはや憧れていないのかもしれないですね。ゆったりした生活も想像できないですし。

この気持ちを分析するに、僕らの上の世代、30年くらい前のスターは、テレビで好きなことができていた。とんねるずさんを例に挙げると、週に1〜2本のレギュラー番組にのめり込んでおもしろいものを作っていましたよね。けれど、今の時代はレギュラーを週15本くらい抱えているような芸人もいて、一つひとつの番組に向き合って自分がおもしろいと思うことをしていくのは、少し難しい時代になっているように思います。

だから、テレビに出演し続ける忙しい生活が、僕はあまりピンとこなくて。自分がおもしろいことを考えているときに、芸人である実感が湧くんです。それには舞台が最も適していて、誰にも邪魔されない空間で、自分が考えたことを漫才として披露できる。テレビにこだわらずに、自分が好きなことをもっとやったほうがいいんじゃないかって考えているんです。

それで、若い世代はYouTubeを始めたりしているのだと思います。一方で、テレビの冠番組も難しいしSNSも弱い、狭間の世代…この世代に僕は名前をつけたいと思っているんですけど、そんな僕らが一番お金をもらっていないんですよ。だからこんなに焦ってるんでしょうね。
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――では、今はやりたいことを突き詰めていくことが優先なんですね。

【塙宣之】そうですね。それはやはり舞台だと思っています。今年は単独ライブをたくさんやろうかなと考えていますし、お笑いに関わっているのが一番楽しいです。

だから先の生活のことまで頭が回らないです。正直、静夫さんのことも今は全く考えたくないですし、静夫さんのことを考えている暇なんてないですよ(笑)!
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撮影=大塚秀美
取材・文=イワイユウ

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