2月9日(月) 20:00
「老後の転職=かなり少数」と思われがちですが、実態はもう少し幅があります。
株式会社インディードリクルートパートナーズ(東京都千代田区)が実施した、「『働く』に関する2万人調査 2025」(レポート分析対象:定年退職を経験し、現在就業している60歳以上の928人)によると、定年直後に定年前と同じ会社で働いていた人が約5割(51.2%)、定年前とは違う会社で働いていた人が約4割(40.3%)という結果でした。
つまり、転職(別の会社で働く)は「珍しい」とまではいえません。もちろん職種や地域で差はありますが、「周りにいない=少数派で浮く」と決めつけなくて大丈夫です。
また制度面でも、企業は65歳までの雇用確保(定年廃止・定年引き上げ・継続雇用など)を取ることが義務で、厚生労働省では実施企業が99.9%と公表されています。このように、残る道が用意されやすいからこそ、迷う人が多いのも自然なことでしょう。
再雇用で「給料が安い」のは、よくある悩みです。定年前と役割や責任が変わる、雇用形態が嘱託や契約などに変わることで、賃金が下がりやすい傾向があります。ただし、大事なのは年収の額面だけで比較しないことです。
特に見落としやすいのが、働きながら年金を受け取る場合の「在職老齢年金」です。賃金(総報酬月額相当額)と老齢厚生年金の基本月額の合計が基準額を超えると、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止になる仕組みです。基準額は見直されることがあり、2026年4月からは65万円となります。
転職で年収が上がっても、「年金が停止される+社会保険料が増える」で、手取りの伸びが思ったより小さいことがあります。逆に再雇用で年収が下がっても、年金が止まりにくくなり、家計としては安定するケースもあります。
比較するときは、「額面年収」ではなく「月の手取り(給与+年金−税金−社会保険)」で並べるのがコツです。
新しい環境になじめるか不安という感覚は、かなり現実的です。ここは気合で消すより、不安が小さくなる条件を先に決めるほうがうまくいきます。年収と同じくらい判断に影響するのは、次の3つです。
1. 仕事内容の再現性
今までの経験が、そのまま役に立つ仕事ほど、環境が変わっても成果が出やすく、なじむスピードも上がります。例えば、管理職より現場で積み上げた専門性(経理実務、法務、設備保全、営業の得意領域など)のほうが、会社が変わっても通用しやすいことがあります。
2. 人間関係の作りやすさ
面接では仕事内容だけでなく、「同年代はいるか」「評価は成果重視か、年功要素が残るか」「入社後に引き継ぎ・研修などの立ち上がり支援はあるか」を確認すると、なじめるかの見通しが立ちます。
3. 働き方の負荷
通勤時間や残業、出張、立ち仕事の割合などは、60代以降の生活や体力への影響が大きくなります。年収が上がっても、体力的にきついと継続が難しくなるでしょう。逆に、勤務時間や担当範囲がはっきりしている職場は長く続きやすく、結果として生活が安定します。
迷ったときは、「まず転職活動だけ始めて、条件がそろったら決める」でもよいでしょう。求人内容を見て初めて、再雇用の条件の良しあしも冷静に比べられます。
定年後に別の会社で働く人は決してごく少数ではなく、現実的な選択肢です。一方で、年収アップだけで飛びつくと、年金や社会保険、働き方の負荷で「手取り」や「続けやすさ」が想定どおりにならないことがあります。
定年後の仕事探しは、月の手取りで比べること、仕事内容の再現性・人間関係・負荷の3軸で不安を小さくすることが大切です。自分の希望条件を整理し、再雇用と転職の条件を比べて選べば、再雇用・転職のどちらでも「自分にとって納得できる働き方」に近づけるでしょう。
株式会社インディードリクルートパートナーズ 「働く」に関する2万人調査 2025
厚生労働省 令和7年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します
厚生労働省 在職老齢年金制度の見直しについて
厚生労働省 高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
【関連記事】
60歳で定年退職後、会社から「年収300万円で再契約はどうですか」と提案されました。ハローワークでは「月25万円前後」のアルバイトをいくつか見つけましたが、再雇用とアルバイト、どちらが“お得”な働き方なのでしょうか?