生き永らえる術に苦闘する剣闘士の息吹伝える学術書

生き永らえる術に苦闘する剣闘士の息吹伝える学術書

生き永らえる術に苦闘する剣闘士の息吹伝える学術書

2月10日(火) 6:00

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剣闘士と社会: 帝政前期ローマにおける剣闘士競技の力学 『剣闘士と社会: 帝政前期ローマにおける剣闘士競技の力学』(山川出版社)著者:阿部 衛 Amazon | honto | その他の書店
生あるものはいずれ世を去る。だが、剣闘士はもともと「死すべき存在」と期待されていたのだろうか。

とりわけ最下層の奴隷身分にある剣闘士であれば、敗者の死は当然であっただろう。ところが、三世紀になると「助命なし」の剣闘士興行がことさら強調されていることから、剣闘士の死はむしろ希求されるほど珍しかったと言えるのだ。

剣闘士の墓碑一二五点が網羅的に収集され、なかに剣闘士自身が他者を殺さなかった事例や殺されなかった事例も数多く見出(みいだ)されるし、自然死を暗示する事例もあるという。

生ある人間として見れば、剣闘士は財産であり、生者同士の結びつきの紐帯(ちゅうたい)をなしていた。そもそも戦争捕虜や犯罪者として社会の外側にあったが、解放されたり引退した剣闘士出身者のなかには、地域社会に溶けこみ、上昇する者すらあったという。また、帝政期に軍団が縮小され、軍人たるべき人材が剣闘士に流出した側面も否定できない。

格闘技を特技とする著者は、生き永らえる術(すべ)に苦闘する剣闘士の息吹を蘇(よみがえ)らせる学術書にも成功、さすがだ。

【書き手】
本村 凌二
東京大学名誉教授。博士(文学)。1947年、熊本県生まれ。1973年一橋大学社会学部卒業、1980年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。東京大学教養学部教授、同大学院総合文化研究科教授を経て、2014年4月~2018年3月まで早稲田大学国際教養学部特任教授。専門は古代ローマ史。『薄闇のローマ世界』でサントリー学芸賞、『馬の世界史』でJRA賞馬事文化賞、一連の業績にて地中海学会賞を受賞。著作に『多神教と一神教』『愛欲のローマ史』『はじめて読む人のローマ史1200年』『ローマ帝国 人物列伝』『競馬の世界史』『教養としての「世界史」の読み方』『英語で読む高校世界史』『裕次郎』『教養としての「ローマ史」の読み方』など多数。

【初出メディア】
毎日新聞 2026年1月31日

【書誌情報】
剣闘士と社会: 帝政前期ローマにおける剣闘士競技の力学 著者:阿部 衛
出版社:山川出版社
装丁:単行本(304ページ)
発売日:2025-11-25
ISBN-10:4634673991
ISBN-13:978-4634673991 剣闘士と社会: 帝政前期ローマにおける剣闘士競技の力学 / 阿部 衛
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