「平地のほうが実績はあるんですけどね」"山の名探偵"早稲田大・工藤慎作が挑む初マラソンと最後の箱根駅伝

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「平地のほうが実績はあるんですけどね」"山の名探偵"早稲田大・工藤慎作が挑む初マラソンと最後の箱根駅伝

2月10日(火) 10:05

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平地での走力を磨き続けている早大・工藤慎作(写真は昨年の全日本大学駅伝8区) photo by Satoshi Wada

平地での走力を磨き続けている早大・工藤慎作(写真は昨年の全日本大学駅伝8区) photo by Satoshi Wada





後編:工藤慎作(早大)が挑む己との戦い

2026年の第102回箱根駅伝で3度目の5区に出走した工藤慎作(早稲田大・3年)は自身の走りに異変を感じながらも一時は先頭を奪った。最終的には黒田朝日(青学大・4年)の驚異的な走りに往路優勝を奪われたが、工藤が磨き続けているのは「平地での走力」。大学3年目のシーズンはハーフマラソンで実績を挙げ、全日本大学駅伝8区でも30年ぶりに日本人最高記録を塗り替えた。

3月1日の東京マラソンでは初のフルマラソンに挑戦。自身の走力を磨きつつ、最後の箱根駅伝でも山上りの役割を担いつつ、チームの総合優勝を目指していくつもりだ。

前編〉〉〉工藤慎作(早大)が振り返る3度目の箱根5区と黒田朝日との距離感

【全日本8区激走の反動】2025年の第101回箱根駅伝で5区2位と快走した工藤には"山の名探偵"のニックネームがすっかり定着した。工藤慎作(3年)が山の名手であることは間違いない。だが、山だけの選手ではないことも確かだ。

「"山の神"って言われる人たちに比べると、上り自体の適性は、自分はちょっと怪しいところがあります。でも、その神と呼ばれた方々と違うのは、平地の走力だと思います」

歴代の"山の神"ももちろん平地でも強かったが、工藤は平地の走りに自信を口にしていた。

「世間一般には"山の名探偵"って言われますし、声をかけられる時も"山の人"みたいになっています。でも、明らかに平地のほうが実績はあるんですけどね」

実際に、工藤の箱根5区へのアプローチは、山に特化したトレーニングを積むのではない。マラソン挑戦をも見据えて、走力を磨き上げて箱根の山に挑んできた。そして、2025年は平地のレースで数々の偉業を打ち立ててきた。

2月の日本学生ハーフマラソン選手権(香川・丸亀国際ハーフマラソンと併催)では、淡々とマイペースを刻み、日本人学生歴代2位となる1時間00分06秒の好記録で学生日本一に輝いた。

そして7月、大学生の世界大会であるワールドユニバーシティゲームズでは、1カ月前に練習ができなかった期間があったにもかかわらず、5km前から独走し、1時間02分29秒の大会新記録を打ち立てて金メダルを獲得した。

さらには、11月の全日本大学駅伝では最終8区でハイペースを刻み、早大OBの渡辺康幸さんが持っていた8区の日本人最高記録を30年ぶりに5秒上回り(56分54秒)、区間賞を獲得した。

このように、平地のロードレースでも圧巻のパフォーマンスを続けてきた。

しかし、全日本での快走の反動は思いのほか大きかった。

「11月中は練習があまりよくなかった。5区を想定した上りの練習もうまく走れず、マイナスな気持ちになっていたこともありました」

そんな工藤を見かねたのか、駅伝主将の山口智規(4年)から冗談めかして「俺が5区をやるよ」と言われたこともあったという。

11月下旬から12月中旬にかけてようやく調子を取り戻しつつあったが、箱根まで10日を切って、再び不調に陥ってしまった。

「調子が上がらないというか、むしろかなり悪化してしまった。1週間前くらいからの練習は全部外していました」

本番が近づき、調子を上げていかなければならないのに、うまく練習をこなすことができなかった。

「中強度、高強度の練習では、マラソンを意識して少し量を増やしていました。ものすごく多かったわけではないんですけど、それに耐えうる体が作れていなかったのかな。それに、全日本の疲労もあって、細かい調子の波をうまく作れていなかったのだと思います」

不調の要因を工藤はこう分析していた。

「急に調子が上がるわけではないので、疲労を抜いていってごまかそうと思いましたが、当日にも多少は響いてしまいました」

こうして3回目の箱根は、不安を残したまま、臨むことになった。

【転んでもただでは起き上がらない】1時間09分46秒という区間タイムは、花田監督の想定よりも30〜40秒遅かった。仮に設定タイムどおりに走っていれば、計算上は青学大に勝利していたことになる。だが、こればかりはタラレバを言っても仕方がない。万全な状態ではなくても、パフォーマンス歴代7位に相当する1時間09分46秒で走りきったのだから、工藤の山上りのパフォーマンスにはさすがとしか言いようがない。会心の走りはできなかったかもしれないが、精一杯の走りは見せた。

「走っていて、感覚的にもっとかかっているのかなと思っていました。69分台には収まっていたし、前回より15秒遅れただけだったので、調子が悪いなりにまとめることができたかなと思います」

走り終えた直後こそ悔しさを露わにしたが、箱根から少し時間が経って、工藤はこんなふうに冷静に振り返ることができた。

逆転を喫した黒田朝日の存在も、自身が成長するためのプラス材料と捉えている。

「自分が一番上だとそこで視座が止まってしまい、それ以上の視点にはならないので、ものすごくよい存在だと思っています」

この男、転んでもただでは起き上がるつもりはない。

この後は、3月1日に東京で初マラソンに挑む予定だ。これが目標にしている2028年ロサンゼルス五輪への第一歩となる。箱根の疲労をうまくコントロールしつつ、箱根後もトレーニングを積み重ねている。

「実際にコースを見ていないので何とも言えないですけど、前半が下りで後半が平坦というのは(快走した)丸亀ハーフや全日本8区もそうなので、そういう意味では結構相性がよいのかなと思っています」

「自分のリズムを刻み、淡々と走れるのが自分の強み」と言い、マラソンを走るイメージは固まりつつある。とはいえ、初マラソンは東京の街中を気楽に走るつもりだ。

そして、いよいよ大学ラストイヤーを迎える。

「トラックには未練はそんなにないので、マラソンを走ったあとはゆっくりしたいです。それこそ、出雲駅伝あたりからシーズンが始まるぐらいに考えています。短距離のようなシーズンの組み立て方ですね(笑)」

ロードレースこそ自身の持ち場と考えて、そこにじっくりと合わせていくつもりだ。

最後の箱根駅伝ではもちろん、2011年から遠ざかっている総合優勝を目指すことになる。

「総合優勝を目標に掲げていきたいですし、立ちはだかるチームを倒していきたいです。ただ、現状では優勝はとても難しいと思っています。一段二段上がるために、何かを変えていかないと、早稲田はまだ勝てないのかなと思っています」

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