
『砂浜に坐り込んだ船』(新潮社)著者:池澤 夏樹
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◆亡き友人との対話テーマ
文学全集の編者として著者の名前を見かける機会が増えた。だが実作者としての池澤夏樹に、ときどき会いたくなる。8篇を収める新しい短篇集はだから、とてもありがたい。
一貫したテーマがある。すでに死んでしまっている友人・知人との対話。冒頭の表題作が印象的だ。
ある日、新聞に石狩湾新港近くの浜に座礁した船の写真が載った。ベトナムの貨物船は、砂の上に坐りこんだように写っていた。現地に行って船をみる。
“坐礁した船は美しかった”
帰宅して撮った写真を見ているうちに、死んだ友人がすぐ傍にいるような感覚に襲われた。彼の住んでいた家、母親との静かな生活。抑制の効いた文体が印象的だ。
【書き手】
陣野 俊史
1961年長崎生まれ。文芸評論家、フランス文学者。ロック、ラップなどの音楽・文化論、現代日本文学をめぐる批評活動を行う。最新作に『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』(集英社)。その他の著書に『フランス暴動 - 移民法とラップ・フランセ』『じゃがたら』(共に河出書房新社)、『フットボール・エクスプロージョン』(白水社)、『フットボール都市論』(青土社)など。
【初出メディア】
日本経済新聞 2015年12月17日
【書誌情報】
砂浜に坐り込んだ船
著者:池澤 夏樹
出版社:新潮社
装丁:文庫(237ページ)
発売日:2018-05-29
ISBN-10:4101318239
ISBN-13:978-4101318233
