2月7日(土) 4:20
閣議決定で発表されたとおり、2026年度から物価高に対応して控除額を引き上げる仕組みが導入されます。まず、合計所得金額が2350万円以下である個人は、基礎控除が62万円となり、給与所得控除の最低額は4万円増えて69万円です。
これに加えて、年収約489万円以下の層には期間限定で42万円の特別加算が設けられます。
これらを合計すると「62万円+69万円+42万円=173万円」となり、さらに給与所得控除の最低保障額の特例で5万円加算され、178万円まで所得税がかからない仕組みの完成です。
2026年度に適用される新制度で、手取りがどれほど増えるのかを年収別にシミュレーションしてみると、所得層によって差が生じてきます。
まず、年収200万円の層では、2025年度と比較した税金の減少額は約7000円にとどまる見込みです。一方、年収600万円の中間層では、約3万7000円もの減税となり、今回の改正で大きな恩恵を受ける層となります。
これに対して、年収1000万円の高所得層では、税金の減少額は約8000円と、年収600万円層に比べてメリットが縮小される結果となりました。
この差が生まれる理由は、所得489万円以下(給与収入で年収665万5000円以下)という条件で付与される、42万円の「特別加算」があります。年収600万円の給与所得者は、給与所得控除を差し引いた後の「合計所得金額」がこの条件を満たすため、手厚い加算をフルに受け取ることができます。
しかし、年収1000万円を超えると合計所得金額が基準を上回るため、特別加算は5万円にまで激減し、結果として減税額が抑えられてしまうのです。中間層にとっては手厚い改定となりますが、ほかの層では実感はやや薄いものになるかもしれません。
所得税の壁が178万円にまで引き上げられることで、税制面での「働き損」は大幅に改善されますが、社会保障の分野では「130万円の壁」が解決されないまま残っています。
178万円まで所得税がゼロになったとしても、年収が130万円を超えた瞬間に配偶者は扶養を外れ、自ら健康保険や年金保険料を支払わなければならないルールは変わりません。この社会保険料の負担は重く、年収130万円を超えた直後に発生する負担額は、年間で約20万円から25万円にものぼります。
例えば、年収129万円の人は所得税も社会保険料もゼロですが、年収140万円の人は、所得税こそ今回の改正でゼロに抑えられても、社会保険料(20万円と想定)の支払いにより、実質的な手取りが120万円程度まで減少し、手元に残るお金が少なくなるという逆転現象が起こるのです。
税金の壁が178万円に広がったことで、心理的には「もっと稼げる」と感じやすくなりますが、社会保険の崖に落ちないためには、一気に年収170万円以上を目指すか、130万円を死守するかという二択が迫られることになるでしょう。
今回の改正では、納税者本人だけでなく「配偶者控除」の適用条件も緩和される方向で調整されており、合計所得額は58万円(年収123万円)以下でしたが、この基準も62万円(年収136万円)以下へと引き上げられます。
また、年齢19歳以上23歳未満の子どもを抱える世帯では、2025年に新設された「特定親族特別控除」なども活用することで、世帯全体の可処分所得の底上げが見込めます。
しかし、ここでも「世帯主の税金が安くなるメリット」と「配偶者の社会保険料負担増」での比較が重要です。130万円の壁を超えて社会保険料を支払うことになれば、世帯全体でのプラス分が相殺されるだけでなく、マイナスに転じるリスクもあるため注意しましょう。
2026年からの「178万円の壁」への移行は、年収600万円層で約3万7000円の減税をもたらすなど、所得ベースで489万円以下(給与収入で665万5000円以下)に近いほど恩恵が大きく受けられるでしょう。
一方、年収200万円や1000万円の層では減税額は少なく、さらに社会保険の「130万円の壁」が併存し続けることで、扶養内パート層の働きづらさの解消はされません。
税金が安くなるというメリットの裏にある社会保険料負担を見据えながら、世帯全体での手取りを最大化するための選択が必要でしょう。
財務省 令和8年度税制改正の大綱の概要
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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