「機動戦士ガンダム閃光のハサウェイキルケーの魔女」はガンダム史上最高興収になるか?【コラム/細野真宏の試写室日記】

「機動戦士ガンダム閃光のハサウェイキルケーの魔女」はガンダム史上最高興収になるか?【コラム/細野真宏の試写室日記】

1月31日(土) 7:00

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映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。

また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。

更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)

1月30日(金)から「機動戦士ガンダム閃光のハサウェイキルケーの魔女」が公開されました。

2025年の日本の年間興行収入は史上最高を更新し2744億円を記録するくらい絶好調でしたが、実は2026年になってからしばらくは新作映画が不調で旧作頼りな状況が続いていました。

そんな状況が本作の公開から変わっていきそうな予感がします。

それは本作が、2021年6月に公開された「機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ」の続編だからです。

この「機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ」という作品は「ガンダム関連の映画のあり方を変えた革命的な作品」と言っても過言ではないくらいの重要な作品なのです!

そもそも1979年にテレビアニメで始まった「機動戦士ガンダム」ですが、テレビアニメ版を再編集した映画を1981年3月に「機動戦士ガンダム」、1981年7月に「機動戦士ガンダムⅡ 哀・戦士編」、1982年3月に「機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙(そら)編」を公開しました。

特に「機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙(そら)編」については大幅に作画が描き直されていたこともあって、興行収入がシリーズ最高の23億円を記録しています。

これ以降も「ガンダム関連の映画」はテレビアニメシリーズなどとともに製作されてきましたが、本作にも関連のある「機動戦士ガンダム逆襲のシャア」(1988年)でさえ興行収入11.3億円で終わっています。

その一方でプラモデルの世界では「ガンプラ」として世界的にも巨大なマーケットを築き、いつしか「ガンダム関連の映画」は独特なビジネスモデルを構築していきます。

それは、劇場公開時に「ガンプラ」の新作を劇場で購入することができたり、まさにこれから見る新作のBlu-rayなどを劇場で購入できる、という「2次利用での利益を最大限に上げる」という手法がスタンダードになっていったのです。

もちろん、そのビジネスモデルは「機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ」でも同様に行われていました。

ところが「機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ」においては、それまでと大きく異なる動きが見られたのです。

それは、いくら自宅で何度も見られるBlu-rayなどが発売されていても劇場で見たい、という異例な動きが起こって、それまでの最高興収だった「機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙(そら)編」の23億円を超える寸前の興行収入22億円台の大ヒットを記録したのです!

これがいかに凄い現象なのかというと、実は「機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ」は劇場公開時でのBlu-ray発売にとどまらず、劇場公開前からYouTubeで冒頭の15分53秒を公開し続けていたのです。

本編95分のうち約16分がいつでも無料で見られる状態であったにも関わらず劇場に多くの観客が何度も駆けつけたのは信じ難いような吸引力ですが、その片鱗はマスコミ試写の段階でも垣間見られました。

試写前に関係者が簡単に挨拶をしていたのですが、言葉の節々から普段は感じられないような自信が読み取れたのです。

ただ、それは本編を実際に見て十分すぎるほど納得できました。

まさに、何度見ても飽きないような凄まじいクオリティーだったのです!

間違いなく「ガンダム関連の映画」最高峰の完成度で、制作費も「機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ」シリーズは別格と想定されます。

それまでの、主に2次利用で利益を生み出すビジネスモデルが確立した上での勝負だと思いますが、制作費は10億円規模かと思われるほど凄まじいクオリティーを追求している作品だったのです。

この異例な製作体制によって、「機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ」から、2次利用のマーケットだけではなく興行収入でも大きく稼げる新たなビジネスモデルが誕生したのです。

以上のような独特すぎるビジネスモデルは、製作委員会のような方式ではなく、製作がバンダイナムコ1社だからこそ実現できたものだと言えそうです。

そして、そこから「ガンダム関連の映画」が新たなフェーズに入っていき、初めて「ガンダムSEED」シリーズを映画化した「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」が2024年1月26日に公開されると、一気に「機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙(そら)編」の23億円を超え、さらには興行収入50億円も突破し53.8億円を記録したのです!

また、新たなテレビアニメ版の「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」の放送に先駆けて、劇場用に再編集された「機動戦士Gundam GQuuuuuuX Beginning」が2025年1月17日に公開されると興行収入35億円を突破し、単なるテレビアニメの先行上映とは思えない結果を生み出しています。

では、ここまでの流れを踏まえて「機動戦士ガンダム閃光のハサウェイキルケーの魔女」の興行収入について考察してみます。

まずは単純に考えると、本作の興行収入は前作の22億円規模の結果になるのでは、という話になりますが、私はそう考えません。

なぜなら、突然「ガンダム関連の映画」がメガヒットを繰り出すようになったのには、もう一つの大きな理由があるからです。

それは「鑑賞料金」です。

実は1作目の「機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ」の際には、それまでのビジネスモデルの慣習で「鑑賞料金」が“固定化されたイベント上映のような設定”のままだったのです。

それが「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」や「機動戦士Gundam GQuuuuuuX Beginning」では「一般的な鑑賞料金」となって割引対象にもなり、観客の敷居が一気に下がった、という面が大きな背景にあるのです。

そして、2作目となる本作では、もちろん一般的な鑑賞料金に変更されているため、ライバルとなるのは前作ではなく、「ガンダム関連の映画」で歴代興収1位となっている「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」と考えるのが順当なように思えます。

そう考えると、興行収入55億円を超えるかどうかが注目点ですが、キリの良い興行収入60億円が大きな目標と言えそうです。

つまり、前作から3倍近くも興行収入を引き上げることを意味しますが、果たしてそんな飛躍が可能になるのでしょうか?

まずは作品のクオリティーで比較すれば「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」よりも本作の方に軍配が上がると思います。

特に作画におけるライティングのこだわりが他のアニメーション作品と一線を画すほどリアリティーを追求している面が圧巻なのです。

例えば、現実的に軍隊が奇襲作戦を行うとすれば、それはやはり真っ暗な深夜帯を狙うということになるでしょう。

ただ、これを表現すると、背景は真っ暗なので全体的に暗い画面にならざるを得なくなるのです。

ところが「閃光のハサウェイ」シリーズでは、緻密に表現された部分が多少は見えにくくなっても徹底的にリアリティーを追求していて、ある意味では本格的な「洋画実写映画」のような風格さえも持ち合わせているのです。

昨今では作業効率化のため影を無くすような表現も模索される中で徹底的に光の当たり具合にこだわって厳格に表現し尽くしている稀有な作品とも言え、まさに「緻密な表現をすくい上げる大きなスクリーンで味わうべき映画」なのです。

次に、リピート率がどれだけ高くなり得るのか、ですが、これは入場者特典の力の入れように加えて、作品の味わい深さと連動します。

おそらく、これまでの流れで前者の入場者特典に関しては抜かりがないと思われます。

それでは作品の味わい深さはどうなのかというと、私は「見れば見るだけ発見のある作品」という評価なので、リピート率は高めに推移すると考えています。

前作においても今見ても全く色褪せていないどころか、むしろ作品への理解力や入り込み具合が上がっているように感じます。

そのくらい物語としても、作画などの表現においても、ハイクオリティーに仕上がっているシリーズなので、興行収入60億円という目標は決して非現実的なものではなく、本作には突破可能なポテンシャルがあると考えます。

果たして、「ガンダム関連の映画のあり方を変えた革命的な作品」である本シリーズは、新たな頂上に到達できるのか――大いに注目したいと思います!

【作品情報】
機動戦士ガンダム閃光のハサウェイキルケーの魔女

(C)創通・サンライズ
映画.com

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