1月31日(土) 8:10
相続手続きには「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内の「熟慮期間」があり、この期間中であれば「単純承認」以外に、財産の範囲内で借金を引き継ぐ「限定承認」や、すべての財産と借金も受け取らない「相続放棄」が申述できます。
掲題の例ではすでに1年が経過していることから、原則としてはこれらの手続きはできないことになります。ただし、相続の際に借金の存在をまったく知らなかったなど特別な事情がある場合は、例外的に認められることもあり、繰り下げて申述を可能とした判例も存在するようです。
相続税を計算するとき、被相続人が残した借入金などの「債務」や「葬儀費用」を遺産総額から差し引くことが可能です。しかし、差し引くことができる債務は、被相続人が死亡したときに存在した被相続人の債務(借入金や未払金など)で確実と認められるものに限られています。
相続税の基礎控除の金額は「3000万円+(600万円×法定相続人の人数)」となっています。仮に相続時に500万円の借金の存在が判明していたとすると、相続財産の総額から控除でき、以下のような計算で「基礎控除の範囲内」に収まり、相続税申告が不要となっていた可能性もあるでしょう。
「4000万円(遺産の総額)-500万円(借入金〈債務〉)=3500万円」
相続した借金に消滅時効が完成していれば「援用」することで、返済義務を免れることができる可能性も残っています。掲題のように遺産分割後に借金が発覚した場合でも、時効期間が経過しており、途中で裁判手続や書面での催告などによる「完成猶予」や、返済・債務の承認による「更新」がなければ、返済義務を免れる可能性があります。
2020年4月の法改正以降、改正民法では、債権は原則として「権利を行使できることを知った時から5年」または「権利を行使できる時から10年」のいずれか早い時点で時効により消滅し得ます。
ただし、時効で借金を消滅するためには「援用」という手続きで相手方に対して「時効の完成」を主張しなければなりません。
もし、債権者からの督促に応じて全部または一部を返済したり、支払いを認める言動をしたりすれば、時効はその時点から数え直しとなります。消滅時効の援用を主張する場合でも、調査と複雑な手続きが求められるほか「相続税の払い過ぎ」も主張する場合は「更正の請求」も視野に入れた相談が必要になります。
いずれにせよ弁護士をはじめ、専門家の助力を仰いだほうが安心です。
今回のケースでは、500万円の借金が「相続時」に発覚していれば相続税の申告が不要だったかもしれません。相続を知ってから3ヶ月以内なら相続放棄という選択肢も検討できました。
仮にすでに相続税を申告・納付している場合でも、借金が被相続人の死亡時に存在したことや金額が確実と認められることなど一定の要件を満たせば、「更正の請求」により払い過ぎの調整を図れることがあります。
こうした状況では相続した借金に「消滅時効」が完成していれば「援用」という手続きを行い「時効の完成」を主張すれば、時効として借金を帳消しにできる可能性が残っています。調査や複雑な手続きが必要になりますが、弁護士など専門家に相談することで解決できる可能性はあります。
国税庁 遺産総額から差し引くことができる債務
国税庁 相続財産から控除できる葬式費用
国税庁 相続税の総額の計算
最高裁判所 相続の放棄の申述
日本司法支援センター法テラス 消滅時効とは何ですか。
国税庁 相続税及び贈与税の更正の請求手続
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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