1月28日(水) 21:00
在職老齢年金とは、60歳以上で厚生年金を受給しながら働く人を対象に、賃金と年金の合計額に応じて年金を調整する制度です。
現在は、賃金(月額)と年金(月額)の合計が一定額を超えると、超えた分の半額が年金から差し引かれる仕組みになっています。この「一定額」が支給停止調整額です。
制度の目的は、現役世代とのバランスを保つことでしたが、一方で「働く意欲を削ぐ」「人手不足対策に逆行する」といった批判も長年指摘されてきました。
背景にあるのは、深刻な人手不足と高齢者就業の拡大です。日本では65歳以上の就業者数が年々増加しており、シニア世代はもはや「支えられる側」だけではありません。それにもかかわらず、一定以上稼ぐと年金が減る仕組みは、「働いた分だけ損をする」と受け取られがちでした。
こうした状況を受け、政府は高齢者が無理なく働き続けられる環境づくりの一環として、支給停止調整額の引き上げを検討しています。
支給停止調整額が引き上げられると、これまで年金が減額されていた人でも、より多くの収入を得ながら年金を満額近く受け取れるようになります。
つまり、「働けば働くほど年金が減る」という構図が緩和され、「稼ぎながら年金をもらう」ことが現実的になるのです。特に、専門職や管理職など、一定水準以上の収入を得ているシニア層にとっては、実質的な手取り増加につながる可能性があります。
特に注目したいのは、60代前半から後半にかけて働く人への影響です。これまで「これ以上働くと年金が減るから」と、労働時間や収入を意図的に抑えていた人も少なくありませんでした。
支給停止調整額が引き上げられれば、そうした“働き控え”をする必要性は薄れ、経験やスキルを生かして柔軟に働く選択肢が広がります。また、企業側にとっても、熟練人材を継続的に確保しやすくなるというメリットがあります。
結果として、個人の生活安定だけでなく、社会全体の生産性向上にもつながる制度改正だと言えるでしょう。
ただし、見直しは確定事項ではなく、具体的な金額や適用時期は今後の制度設計次第です。また、年金制度全体の持続性とのバランスも考慮されるため、全面的な撤廃ではなく「段階的な緩和」となる可能性が高いでしょう。
重要なのは、「年金はもらうだけのもの」ではなく、「働き方とセットで考える時代」に入っているという点です。今後は、自身の収入見込みやライフプランを踏まえ、在職老齢年金の仕組みを理解した上で働き方を選択することが求められます。
2026年に向けた支給停止調整額の見直しは、シニア世代の働き方を大きく変える可能性を秘めています。
「年金が減るから働かない」ではなく、「働いても年金が減りにくい」社会へ。この制度改正は、高齢者自身だけでなく、日本全体の労働力確保にもつながる重要な転換点と言えるでしょう。
厚生労働省在職老齢年金制度の見直しについて
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
【関連記事】
「足りなくて働いてるのに…」年金が「支給停止」になる場合がある?「在職老齢年金」について解説