【映画.com独占】スティーブン・キング「『ランニング・マン』は現代の『ダイ・ハード』と絶賛!原作者×監督対談インタビュー

グレン・パウエル(右)を演出中のエドガー・ライト監督(左)

【映画.com独占】スティーブン・キング「『ランニング・マン』は現代の『ダイ・ハード』と絶賛!原作者×監督対談インタビュー

1月29日(木) 12:00

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グレン・パウエルが主演し、逃げ切れば大金を手にできるが、捕まれば即死という命懸けの鬼ごっこに挑む男の運命を描くノンストップアクション「ランニング・マン」が、1月30日から公開。ベストセラー作家スティーブン・キングが、リチャード・バックマン名義で1982年に発表し、1987年にはアーノルド・シュワルツェネッガー主演で「バトルランナー」として映画化された小説を、「ベイビー・ドライバー」のエドガー・ライト監督が新たに映画化した。

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公開を記念して行われた、原作者のスティーブン・キングとエドガー・ライトの対談インタビューを映画.comが独占入手。映画化のきっかけ、グレン・パウエルを主演に抜擢した決め手、アクション映画の金字塔「ダイ・ハード」と本作の類似点などを語り合った2人の対談インタビューをお届けする。

――原作の設定だった年に映画が公開されると想像したことはありましたか?

■スティーブン・キング(以下、キング):まさか!もちろんないよ。当時は出版社に原稿を送っても、極めて堅い返答が来た。「弊社は、ディストピア小説は出版しておりません」て。

■エドガー・ライト(以下、ライト):映画では年は言っていません。それはすごく意識していて、つまりディストピア的未来が描かれる映画の世界は、未来すぎることがない。スタンリー・キューブリックが1968年に想像した2001年が来てくれたらよかったけど。あるいは「ニューヨーク1997」も大好きな映画なんですが、これは1981年の作品で舞台が1997年。それも過ぎてしまっている。だからもっとうんと先にするか、単純に設定しない方が良い。

■キング:僕が書いていた時、1972年とかそれくらいだったと思うけど、当時は2025年なんてあまりに遠くて想像すらできなかったのにね。

――「ランニング・マン」を書こうと思ったのは?

■キング:売れる冒険小説が書きたくて。ろくに食べれていないし、子供は2人抱えていた。だから売れる本をと。結局それは、これではなかったんだけど…ディストピアの世界観が、ね。でも書きたかった世界は、あまりに残忍さが蔓延しテレビ番組(死闘ゲーム)が娯楽化したというもの。それは、これならありそう、と思ったというか。テレビで人を狩る、って本当にあり得るのではないかと。リアリティ番組とかの前だから、当時は全く分かっていない。僕にとってのリアリティ番組は「American Bandstand」(50~80年代人気だったダンス番組)だったし。

■ライト:小説で面白いのは、「ランニング・マン」は複数ある番組のひとつでしかないということ。より広い世界観を感じますよね。うち「ランニング・マン」が一番怖い番組。他にも「お熱いのがお好き」*(「How Hot Can You Take It?」)とか、「幸運のトレッドミル」*(「Treadmills for Bucks」)とか…。

■キング:個人的には「ワニと泳ごう」*(「Swim The Alligators」)が一番好き。

■ライト:そこが小説が興味深いところだと思っています。多くのことが時代を先取っていた。ネットワーク全体が、考え抜かれていますよね。

――今回の映画化はどのように実現したのでしょうか?

■キング:諸々うまく転がったというか。時折、天使が現れることがあって、エドガー・ライトは僕の天使だった。なるべくしてこうなったような。

■ライト:スティーブンとは何年にも渡ってメールのやりとりをさせてもらっています。最初は「ショーン・オブ・ザ・デッド」の後、宣伝用に素晴らしいコメントをいただいた。

■キング:「ベイビー・ドライバー」もやりとりしたなあ…。

■ライト:バックマン名義で出版された作品は、「バックマン・ブックス」として80年代半ばに再出版された時に読みました。14歳くらいだと思います。作品集にあった4作、「死のロングウォーク」(原題「The Long Walk」)、「ロードワーク」(原題「Road Work」)、「ハイスクール・パニック」(原題「Rage」)、そして「ランニング・マン」。1987年の映画を観る前に読んだんですよね。

ようやく1987年の映画を、若き映画ファンとして観たのは、まだ二十歳前だったかな。初めて、映画は必ずしも原作を踏襲しないと認識したというか…小説とは全く違うものでした。それがずっと残っていて。つまり原作から映画がもう1作、作れるはずという思い。

実は「ランニング・マン」の権利については15年前にも調べたんですが、当時は色々と複雑で形になりませんでした。それがゆくゆく僕に巡ってくるというのは、運命としか言いようがない。プロデューサーのひとりサイモン・キンバーグからメールが来て。魔法のメール。「『ランニング・マン』の映画化に興味あるって本当?」「そうだよ、もう何年も前から考えてる」と。

しかも2025年公開。原作の舞台が2025年の映画が、2025年に公開されるのは全くの偶然だけど、すごいなと。年が終わる6週間前に、ギリギリ滑り込ませた感じ。

――映画内のディープ・フェイクは恐ろしいですね…。

■キング:そこは映像で色々と作り込めるだろうと思った。ここまで(2025年)来れば、ディープ・フェイクも恐ろしい完成度だろうと。すごく好きだよ、アイデアが。あと気に入ったのは、「ところで、フリテレ(Freevee)映ってるよ」*って台詞と、あのドローン。カメラを搭載して飛び回り、至る所で人々について回る。まさに今起きている。大衆向けに作られているかどうかだけの違いであって。皆スマホで動画を撮っている。

■ライト:実は「フリテレ(「Freevee」)映ってるよ」*と言うのは、脚本共同執筆のマイケル・バコール。マイケルのカメオ出演です。

1982年の出版から、特にここ25年のリアリティ番組を受けて、視聴者は、見え方とは編集で如何様にもなる、と分かってしまった。リアリティ界隈では悪役編集(villain edit)って呼ばれる程。つまり誰であっても悪者に、編集次第で仕立て上げられると。

■キング:へえ!本当に?呼び名まであるんだ。うわ。悪役編集!

■ライト:ですよ。僕もつい最近知りました。映画作っている間に耳にしなかったのが不思議なくらい。考えてみると、「リアル・ハウスワイヴズ」(「The Real Housewives」、リアリティ番組)なんかも、必ず誰かが悪者として描かれる。「アメリカン・アイドル」や「Xファクター」のような歌のコンテストさえ、出場者にストーリーを持たせるというか、誰かを標的や悪者に、あざとく編集する。リアリティ番組ではよく目にしますよね。

僕らもちょうどコールマン・ドミンゴとジョシュ・ブローリン、それぞれボビー・Tとキリアン役でしたが、彼らの撮影に入ろうという時に、Netflixでジェリー・スプリンガー(有名司会者)のドキュメンタリーが出て。脚本や、貴方が原作に書いたことが合っていたという証明になった。出演者を操っていたとか、プロデューサーが観客を煽っていたとか、ジェリー・スプリンガー本人も共犯だった。カメラの前では、「僕は司会者でしかない。何が起こるか予測はできない」と話すけど、ドキュメンタリーによれば舞台裏で何が行われていたか、認める以上に知っていたのではないかと。

■キング:その裏返しの側面としては、観客もそれに無感覚になるというか、無関心が蔓延っていくね。ただ見るだけ、俳優を見ているようなものだ。ベン・リチャーズは生身の人間で、生身の問題を抱えている。仕事でもめたようだし、赤ちゃんは病気で…でも番組からしたら、彼はただの駒。視聴率ゲームのために動かすだけ。

――グレン・パウエルを起用した理由は?

■ライト:実際に会う前からグレンは知っていて。「エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に」や、もちろん「トップガン マーヴェリック」は観ていたけど、その後、「ヒットマン」も観たら、脚本としても参加していた。本当に芝居もコメディも上手い俳優だなと。それとグレンの大事な魅力は、彼の普通っぽさ。アクション俳優には稀有で、そこが大切だ。

こういった映画が開発に入ると、スタジオ側からスターのリストが提示される。その中で、唯一グレンだけが悪者をごまんとやっつける映画をまだ見たことがない人で、且つそこらを普通に歩いていそうな男だと思える、と思った。ハリソン・フォードみたいだと。インディ・ジョーンズと、ベン・リチャーズを比べるのは変だと思われるかも知れないけど、ハリソン・フォードも初期の役柄は弱い部分がある。欠点のある人間で、結構やっつけで切り抜けたり、映画でずっと必死こいていたりして。「レイダース失われたアーク《聖櫃》」も、インディが顔をグーで殴られて、ドサッと倒れるシーンが思い浮かぶし。

最近のアクションものは、既に最高レベルに達したキャラクターが多い。ジョン・ウィックは世界最高のヒットマンで、ジェイソン・ボーンは記憶喪失だけど超絶すごいスパイでしょう。ベン・リチャーズは、少なくとも原作では完成されたアクションヒーローではない。映画では建設現場で働いている設定にしてタフな男ということになっているけど、訓練を受けた殺し屋でもないし、スーパーヒーローでもない。だから総じて観客は、「コイツがどうやって勝つわけ?」と思う、が狙い。

――序盤でドル紙幣にアーノルド・シュワルツェネッガーの顔が印刷されています。1987年の映画へのオマージュと、すごく面白いギャグでした

■ライト:シュワルツェネッガー氏に感謝です。あれを承認してくれたんですから。既にカリフォルニア州知事を務められていますが、この世界では大統領も務めたということで。

――キングさんはSNSでライト監督の「ランニング・マン」を「現代の「ダイ・ハード」だ」と称されています。何故でしょうか。

■キング:そうだね…何かキラリと光るものがあるんだ。

■ライト:似てますよね。1本目の「ダイ・ハード」では、ジョン・マクレーンは警察官でありながら、映画のほとんどは直感で動く。あの映画がワクワクするのは、ジョン・マクレーンがずっとアップアップの状況でテロリストと戦うところにあるかと。アクション映画の醍醐味として、主人公が死ぬかも、と思わせないと。「ダイ・ハード」はアクション映画の古典。全てがバッチリはまっている。

アクションヒーローは脆さが必要だと思っています。グレンを観ていて素晴らしいのは、本当にその場で起きていることに、リアルタイムで反応していくところですね。

映画で活かしたかった原作の大きな要素が、全てが一人称で語られるところです。主人公の主観的な目線で全てが進行し、観客も番組に出演する感覚を体験する。嬉しいことに観た人の何人かから、「全て彼の視点だから、番組に出ているような気がした」と言われました。

■キング:すごく好感度が高いキャラクターだよね。主人公は愛され要素が大事だから。彼は本当にそう。具現化してくれた。良いね。

【作品情報】
ランニング・マン

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