1月28日(水) 4:10
現行では「基礎控除58万円」「基礎控除の特例37万円」「給与所得控除65万円」の160万円となっていた所得税非課税枠が178万円に引き上げられることになりました。
この「所得税が発生し得る目安」が、いわゆる「年収の壁」と呼ばれるものです。なお、年収の壁には社会保険や扶養など別の基準もありますが、ここでは所得税の壁を指しています。
令和8年税制改正大綱では「基礎控除62万円」(合計所得金額が2350万円以下の場合)、「給与所得控除69万円」(最低保障額)への引き上げが決定されました。
また、令和8年分と9年分の「基礎控除等の特例」では、合計所得金額655万円以下の場合の加算額を、合計所得金額が489万円以下なら42万円、489万円超なら5万円に改正することが決まっています。
さらに令和8年および9年における給与所得控除の最低保障額を5万円引き上げる特例が創設されました。
このため令和8年分・9年分は、一定の所得要件を満たす場合に、「基礎控除62万円」「基礎控除の特例42万円」「給与所得控除69万円」となり、新設の「給与所得控除の最低保障額の特例5万円」により、課税最低限は最大で「178万円」になる見込みです。
健康保険・厚生年金の壁には性質の違うものがあり、「106万円の壁」は勤務先の社会保険に加入するかどうかの基準、「130万円の壁」は家族の扶養に入れるかどうかの基準です。
なお「106万円の壁」で意識されてきた収入要件(月8万8000円)は、改正法の公布から3年以内に撤廃予定で、施行時期は最低賃金の状況などを踏まえ政令で判断されます。
一方、(19歳〜23歳未満〔配偶者を除く〕を除き)年収が130万円を超えると扶養から外れ、健康保険料・厚生年金(または国保・国民年金)の負担が発生します。
そこで、扶養(保険料負担なし)の状態から外れた場合を想定し、加入先が「勤務先の社会保険」になるケースで試算します。例えば東京都で年収130万円程度(45歳、介護保険第2号被保険者)だと、標準報酬月額はおおむね11万円前後となり、従業員負担の社会保険料は月あたり約1万6000円、年額で約20万円になります。
掲題のように年収120万円から「あと10万円」増やして年収130万円前後に乗せても、保険料負担が新たに発生する局面では、増やした分以上に手取りが目減りする可能性があります(時給1500円なら年10万円は約66時間に相当)。
保険料負担分(約20万円)を見越して150万円まで稼ぐ場合、月給換算12万5000円で、標準報酬月額は9(6)等級に上がります。
年間の社会保険料負担は(7295円+1万1529円)×12=22万5888円となり、実質手取りは127万4000円程度、掲題の時給で約200時間追加で働いたとしても、手取りが増えるのは7万円程度と思われます。
「178万円の壁」ギリギリまで稼いだ場合、月給換算14万8333円で12(9)等級となるため、(8685円+1万3725円)×12=26万8920円の負担になります。実質的な手取りは151万1080円となり、「150万円」より23万7080円増やすことができる計算です。
ただし、「160万円の壁」を超えるため、配偶者特別控除が満額受けられず、配偶者の年収に影響がでる可能性があります。所得税の壁引き上げ後も「130万円の壁」など影響が大きいものもあり、働き方は熟慮する必要がありそうです。
いわゆる「178万円の壁」は所得税非課税枠を指す金額です。ここが引き上げられても、扶養から外れる「130万円の壁」は残り、社会保険料の負担で実質手取りはあまり増えない、または減ってしまう可能性も考えられます。どのくらい「稼ぐ」かは、総合的かつ慎重に考える必要があるかもしれません。
厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト
財務省 令和8年度税制改正の大綱
財務省 令和8年度税制改正の大綱の概要
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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