1月28日(水) 2:30
日本の平均年収470万円前後という数字は、国税庁が公表している「民間給与実態統計調査」をもとにしています。この調査では、会社員やパート・アルバイトを含む給与所得者全体の平均給与が算出されています。
最新の「令和6年分民間給与実態統計調査」では平均給与は478万円(前年比18万円の増加)となっており、「平均年収470万円」前後といわれても良い結果です。ただし、この「平均」という言葉が、多くの人の感覚とずれを生む原因になっています。
年収の話で重要なのは、「平均値」と「中央値」の違いです。平均値は、全員の年収を合計して人数で割った数字です。一方、中央値は、年収を低い順から並べたときにちょうど真ん中にくる人の年収を指します。
年収分布では、一部の高所得者が平均値を大きく押し上げる傾向があります。そのため、平均年収470万円と聞いても、多くの人が「自分や周囲とは違う」と感じやすいのです。実際、中央値は平均値よりも低くなりやすく、多くの人の体感に近い数字を示します。
本記事のテーマでもありますが、「自分は30歳で年収400万円。平均より低いのでは?」と周囲と自分を比較して不安になる人もいるでしょう。しかし、年齢別に見ると印象は変わります。
厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」を見ると、30歳前後の平均年収は400万円前後のゾーンに集まっています。
同調査では、25~29歳は月額26万7200円(×12=約320万円、賞与を含めると約388万円)、30~34歳は29万9500円(×12=約359万円、賞与を含めると約442万円)となっています。つまり、30歳で年収400万円という水準は、決して珍しいものではありません。
「平均年収470万円」は全年齢を対象にした数字であり、40代・50代や比較的年収が高い層も含まれています。そのため、「自分はずれているのではないか」と感じるのは自然なことといえるでしょう。
平均年収とのずれを感じる理由は、数字のトリックだけではありません。私たちが接する「周囲の人」は、年収構成がかなり偏っています。
例えば、同じ会社・同じ業界・同じ地域の人とばかり話していると、年収水準は似通いやすくなります。また、正社員中心の職場や、逆に非正規雇用が多い環境では、見える年収の世界が大きく変わります。
前記統計の平均年収470万円は、全国・全業種・全雇用形態をまとめて算出された数字です。細かいデータを見ない限り、自分の生活圏にある情報と一致しないのは、当然といえるでしょう。
もう1つ重要なのが、「年収=使えるお金」ではない点です。同じ年収でも、住んでいる地域や家族構成、社会保険料や税金の負担によって、手取りや生活の余裕度は異なります。
同じ30歳・年収400万円でも、独身であれば貯蓄に回せる余地がある場合が多いかもしれませんが、子育て世帯であれば家計に余裕を感じにくい場合があります。年収の多寡よりも、「生活に対して十分かどうか」で考える視点が欠かせません。
平均年収は、社会全体の傾向を知るための指標であって、個人の評価基準ではありません。特に30代前半は、これから昇給やキャリアの分岐点が訪れる時期です。大切なのは、以下の3つの観点です。
・年齢や業界の平均値に対して極端な給与水準になっていないか
・今後の昇給に見込みやキャリアアップの展望があるか
・希望する生活設計に無理がないか
これらの点については、ライフプラン表を用いて確認してみるとよいでしょう。
日本の平均年収470万円という数字は、全年齢・全雇用形態を含んだ「平均値」にすぎません。30歳で年収400万円という水準は、年齢別に見れば決して低いわけではなく、体感と統計がずれて感じるのは自然なことです。
平均値に振り回されず、自分の年齢や生活状況に合った視点で年収を捉えることが、将来の不安を減らす第一歩といえるでしょう。
国税庁 令和6年分民間給与実態統計調査
厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況
執筆者 : 上嶋勝也
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
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