錦織圭の具体的な助言に、奈良くるみは驚愕指導のあとフォームはそっくりになっていた

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錦織圭の具体的な助言に、奈良くるみは驚愕指導のあとフォームはそっくりになっていた

1月27日(火) 6:50

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錦織圭という奇跡【第11回】

奈良くるみの視点(3)

◆松岡修造の視点(1)〜(5)最初から読む>>

◆細木秀樹の視点(1)〜(3)最初から読む>>

◆奈良くるみの視点(1)>>「『SLAM DUNK』を貸してくれたのは、圭くんだった」

◆奈良くるみの視点(2)>>コートで豹変。厳しい要求に「そんなの無理だよ!」

世界が新型コロナウイルスに覆われた、2020年からの2年間──。それは、世界中を転戦することを生業(なりわい)とするテニスプレーヤーにとって、とりわけ困難な時期でもあった。

渡航規制や入出国後の隔離義務があるために、ひとたび海外に出たら、長期遠征を余儀なくされる。世界を覆った閉塞感は、旅を生活の場とするテニス選手たちを、心身ともに疲弊させた。

キャリア最高位32位を記録した奈良くるみさんにとっても、この頃は精神的にもプレー面でも多くの浮き沈みを経験した数年間だったという。そんな彼女のキャリア終盤は、錦織圭との関わりが増えたタイミングでもあった。

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奈良くるみさんはコロナ禍で錦織圭と一緒に過ごしたphoto by Sano Miki

奈良くるみさんはコロナ禍で錦織圭と一緒に過ごしたphoto by Sano Miki



2021年の3月、奈良さんは遠征先の北米で負傷する。コロナ禍の異国での治療は難しいが、帰国によって奪われる時間も大きい。

そんな折に、「うちに来れば?」と提案してくれたのが、錦織だったという。

「ケガをして、どうしようかと困っていた時に、圭くんに相談してみたんです。そうしたら、『うちに来れば』って。圭くんの家にトレーナーのロビー(・オオハシ)さんもいたので、『ロビーに診てもらえるから』ということで、コーチの(原田)夏希さんと一緒に圭くんのお家に行かせていただきました。

当時はコロナ禍だったので、IMGアカデミーに外部の人は入れなかったんです。なので日中は、圭くんたちはIMGに行き、私はずっと圭くんの家の近所でランニングや軽いトレーニングをしていたのかな?で、夕方に圭くんたちが帰ってきてから、ロビーさんに診ていただいて。そんな感じで、5日間くらいいた気がします。

圭くんがめっちゃ優しいなと思ったのが、毎朝、スムージーを作ってくれたことなんですよ。当時の圭くんはかなり健康志向で、すごくヘルシーなスムージーだった記憶があります。食事は正直、私のほうが量を食べていたくらいで。『こんなに重いもの食べるの?』って指摘されたこともありました。あとは、みんなで謎の鍋を作った覚えが......ちょっと微妙な味でしたね。

夕食のあとは、必ずみんなでカードゲームをやるんです。そういう時も、圭くんは勝負師というか、すごく頭を使っているなって思いました」

【見るだけでも学ぶことがあった】まるで合宿のようにともに過ごし、リラックスしつつも、錦織から多大なモチベーションも得た5日間──。

その効果もあっただろうか。直後に参戦した4月末のチャールストン開催のWTA500ツアー大会で、奈良さんは予選を突破し、本戦でもベスト16へと躍進。それは、前年にモチベーションを失いかけ、引退も考えていた奈良さんにとって、ここ数年で得た最高の戦果でもあった。

それから1年後の2022年4月にも、奈良さんは日本のナショナルトレーニングセンター(NTC/東京都北区)で、錦織と多くの時間を共有した。当時の錦織は、股関節の手術からの復帰を目指し、NTCで調整していた時期。リターンの強化に取り組んでいた奈良さんは、近くで練習する錦織から大きな影響を受けたという。

「たまたま圭くんと私がNTCで、同じ時間帯で練習することが何度かあったんです。あの時は、最初は私が圭くんのとなりのコートでリターン練習していたのかな。そうしたら圭くんに、フォアハンドのテイクバックが大きいって言われたんです。

たしかに、テイクバックをコンパクトにしたほうがリアクションは早くなる。ただそうすると、私としてはパワーを出せるイメージが湧かなかったんですね。

そこで、圭くんのリターンをじっくり見てみたら、たしかにテイクバックは小さいけれど、体のローテーションがしっかりしてるんです。腕ではなく、体の回転で引き込む感じだなと思って。そこからはイメージもできるようになったので、やっぱり、見るだけでも学ぶことがかなりあるなと感じました」

そこからの錦織は、具体的な助言も与えてくれたという。

「かなり細かく見てくれました。『ボールへの入り方が遅い』とか、『そんなに前に突っ込まなくていいよ』とか、逆に『遠すぎる』とか。『じゃあ、俺がやるから見ててね』って、デモンストレーションを見せてくれたり。アドバイスも言語化がうまいですし、いい加減なことは言わないという印象があります。

【テニス、辞めてもいいのかな】続けて、こんなエピソードも教えてくれた。

「たとえば、(原田)夏希さんが圭くんに『フォアでクロスを打って相手を外に追い出す時、どういうことを意識している?』って聞いたことがあったんです。その時は、あんまりはっきりした答えがなかったんですが、次の日に『考えてみたんですが、やっぱりボールの外側を叩くイメージです』って教えてくれました。

その時だけでなく、こちらの質問に対してしっかり考えて答えを出し、ちゃんと言葉で伝えてくれたことが何回かあったので、やっぱりすごく頭を使っているし、本当に頭がいいんだなと思いました。テニスを作り上げることに関しては『ここまで考えてるんだな』と感心したし、学ぶことはとても多かったです」

これらの日々は奈良さんにとって、多くを学び、純粋にテニスに打ち込んだ充実の時だったのだろう。実際にこの個人指導のあと、奈良さんのリターンのフォームは錦織とそっくりになっていた。

錦織との練習後、最初に参戦した韓国開催のITF(国際テニス連盟)賞金総額2万5千ドル大会で、奈良さんは5つの白星を連ね、ひとつもセットを落とすことなく優勝した。

それはここ一年ほど、納得できる試合や「力を出しきった」との感覚から遠ざかっていた奈良さんにとって、久々に覚える充足感と達成感でもあった。

「がんばれているから、テニス、辞めてもいいのかな」

そんな思いがふと「降ってきた」のは、優勝の翌日だったという。

2022年8月──。奈良さんは錦織に、引退の意思を伝える。多くの関係者やファンに見守られながら、14年のプロキャリアに終止符を打ったのは、その1カ月後のことだった。

(つづく)

◆奈良くるみの視点(4)>>引退を伝えると「もったいない」を連呼



【profile】

奈良くるみ(なら・くるみ)

1991年12月30日生まれ、兵庫県川西市出身。ジュニア時代から「天才テニス少女」として名を馳せ、中学・高校時代も数々の国内タイトルを制す。2009年にプロ転向し、2014年のリオ・オープンでツアー初優勝。2015年にはセリーナ・ウィリアムズ、2016年にはビーナス・ウィリアムズから金星を挙げる。2022年9月の東レ・パンパシフィック・オープンを最後に現役引退。ランキング最高位シングルス32位。身長155cm。



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