闇バイトに手を出してしまった青年が森のなかで規格外のヒグマと対峙するモンスターパニックアドベンチャー『ヒグマ!!』(公開中)。鈴木福が主演を務めるほか、NHK連続テレビ小説「ばけばけ」でも話題の円井わん、『燃えよ剣』(20)など俳優としても活躍するはんにゃ.の金田哲、ベテランの宇梶剛士らも出演し、『ミスミソウ』(18)の内藤瑛亮が脚本と監督を務める。
【写真を見る】本当にここは日本…!?異世界に迷い込んだような廃墟、ロシア村の内部に潜入
軽トラを体当たりで横転させ、人間など爪のひと振りで粉砕してしまうヒグマ。この恐怖のモンスターが根城にしている廃墟のロケ地となったのが、2004年に閉鎖された新潟県阿賀野市にあるテーマパーク「新潟ロシア村」だ。今回このロシア村に、X(旧Twitter)ほかSNSで60万人以上の総フォロワー数を持ち、幻想的な廃墟写真などで世間を魅了する写真家toshiboと共に前代未聞の潜入取材を敢行。実際に現地に足を踏み入れた臨場感あふれるレポート、撮影された写真&映像を紹介していく。スクリーンのなかで暴れ回るヒグマの脅威と、現場で感じた「いつなにが起きてもおかしくない緊張感」を体感してほしい。
■危険な闇バイトに手を出した青年が巨大なヒグマに追われ、廃墟へ逃げ込む…
主人公は18歳の小山内(鈴木)。大学合格の通知を受け取ったその日、特殊詐欺被害に遭った父親が多額の借金を残してこの世を去ってしまう。進学を諦め、金策に走る彼が手を出したのは、皮肉にも父を追い詰めた闇バイトだった。
ある日、最も高額な報酬が見込める拉致工作に参加した小山内。しかし、拉致のターゲットである若林桜子(円井)を森へ運んだ時、上からの指示は若林の始末&死体遺棄へと変わっていた。意を決していよいよ実行しようとしたその時、森の奥から現れたのは警察でもヤクザでもない、巨大なヒグマだった!
襲い来るモンスターの前では、加害者も被害者もない。小山内は、高い戦闘スキルを持つ若林とバディを組み、生き残るための逃避行を開始する。そして彼らが逃げ込んだ先こそが、ロシア村だったのだ。
■ついに廃墟となったロシア村に潜入
車を降りた瞬間、ひんやりとした空気が肌を刺す。周囲を森に囲まれ、外界から隔絶された異界のよう。
「ここで小山内たちはヒグマと対峙したのか…」
廃墟がついにその姿を現し、思わずそんな言葉がこぼれる。ただならぬ空気のなか、辺りは静けさに包まれており、小山内と若林が建物に逃げ込む姿が自然と頭に浮かび上がる。
風が吹くたびに、どこかが軋む音が響き渡る。正直に言おう。怖い。それはオカルト的な怖さではない。もしもいま、茂みからヒグマが現れたら、私たちは確実に餌食になる。そんな生物としての本能的な恐怖が背筋を駆け上がるのだ。
■荒れ果てたまま放置されているホテル跡地
朽ち果てたホテル跡地。映画でも重要な場所として登場し、思わず目を奪われてしまう。「ここ、なにがあったかわかります?もともと廃墟だったホテル棟で火事があってそのままの状態になっているんですよ」とtoshiboが興奮しながら説明する。
1階から3階までを貫く巨大な吹き抜けは、経年劣化により一部が崩落。天井から降り注ぐ光が、散乱した瓦礫を照らしだしている。映画では、この高低差と足場の悪さがスリルを加速させている。どこからヒグマが現れるかわからない、そんな緊迫感で汗ばんできた。
■神秘的な美しさを漂わせる教会
次に向かったのは、敷地内に建っている教会。劇中で、ヒグマが喰い殺した獲物の肉塊が山のように積まれていた場所だ。
見上げると丸い形をした天井があり、美しい飾りが残されている。「中心の円窓にはイエス・キリストの肖像が描かれているんですよ!意外と廃墟からこういう情勢が知れておもしろいんですよね」というtoshiboの解説を聞きながら、神秘的な空気が漂う教会を見渡す。
教会を抜けるとそこには階段が。若林が闇バイトのリーダー格である“9番”(岩永丞威)と激しいアクションを繰り広げていた場所だ。螺旋状の階段を見つめていると、映画のなかで飛び散っていた汗や熱気までが漂ってくるような気がした。toshiboがシャッターを切ると、ボロボロの教会がまるで歴史的な絵画のように切り取られる。その美しさが逆に、ここで起きた戦いの激しさを際立たせていた。
■人間が去ったあとの寂しくも美しい時間が流れる
いないはずのヒグマにビクビクしながら移動を続ける。3階へ向かう途中、廊下の窓から外を見ると、森の木々が風に揺れているのが見える。「あそこでハンターの神崎(宇梶)がライフルを持って走っていたな…」と映画のシーンが頭に浮かぶ。
たどり着いた客室には、剥がれ落ちた壁紙や家具が放置されている。かつての日常がそのまま時を止めた様子は、生々しい温度を感じさせる。ここで小山内たちは、知恵と勇気を振り絞ってヒグマに立ち向かう。壁に残る汚れを見ていると、彼らの荒い息遣いが聞こえてくるようだ。
また別の部屋では、若林が推しているホストのアイル(演じているのは鈴木)のライブ配信を見ながら投げ銭をしているシーンも撮影されたという。元自衛官の彼女が闇バイトに応募したきっかけが、ホストにお金をつぎ込んでしまったからという理由は意外だった。若林の深い悲しみや、やってしまったことの重さが染みついたこの部屋では、ヒグマの怖さとはまた違う、人間社会の冷たい闇を感じさせる。
映画には登場しないエリアにも潜入。toshiboがカメラを向けると、単なる瓦礫からでも物語が見えてくる。「廃墟は『終わった場所』ではなく、人が作ったものが自然に還っていく『途中』の場所なんです」と語る言葉通り、ここには人間が去ったあとの寂しくも美しい時間が流れていた。
■テーマパーク特有の作り物めいた豪華さ、本物のボロボロ感が一緒になったロシア村
そもそも、本作のロケ地になぜ、ロシア村が選ばれたのだろうか?本来であれば、映画の舞台でありヒグマが生息している北海道で撮影するところだろう。その経緯を佐藤圭一朗プロデューサーの言葉を借りながら紹介したい。
撮影にあたって佐藤プロデューサーは“現実的な問題”で悩んでおり、最終的に関東近郊で撮影することになったという。「もちろん最初は北海道を夢見ました。でも、私たちの映画の規模で北海道ロケを行うのは物理的に不可能でした。そこで、関東甲信越エリアで『人里離れた山奥』かつ『画(え)になる廃墟』を探し回ったんです」。
決め手となったのは、“高さのある構造”と“車が入れること”。実は佐藤プロデューサーと内藤瑛亮監督は、2020年頃に別の企画で一度、このロシア村を下見していたという。その時の記憶が、今回の撮影場所への採用につながった。
関東近郊の廃墟といえば工場や倉庫などが定番だが、それらはどうしても“平べったい”造りになりがちだ。それに対してロシア村は、山の斜面に沿って建物が配置されているため、非常に立体的な構造をしている。それが映画にどんな効果をもたらすのだろうか?佐藤プロデューサーは「上から見下ろす、下から見上げるという高さの違いが自然に作れる。これはアクションやパニック映画において、演出の幅をすごく広げてくれるんです」と説明する。
“どこの国でもない”雰囲気とロシア村ならではのデザインも重要だった。日本の田舎の廃墟だと生活感が強すぎてしまうが、ロシア村の建物はテーマパーク特有の作り物めいた豪華さと、時間が経って壊れた本物のボロボロ感が一緒になっている。これが劇中で「日本であって日本でない、閉じ込められた世界」という説得力を生みだしているのだ。
現在、新潟ロシア村は管理されており、一般の方の無断立ち入りは固く禁止されている。しかし、映画館のシートに座れば、誰もがこの場所へ鈴木福改め小山内と一緒に潜入できる。今回の取材で体感した、美しくもすさまじい廃墟の空気感、そこで暴れ回るヒグマとの命懸けのバトル。異様で不気味な世界に、ぜひ映画館の大スクリーンでどっぷりと浸ってほしい。
取材・文/AINAI
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