あなたは、店員さんを理不尽に怒鳴りつける客を目にしたことはありますか? 見ているだけでも胸が痛んで体がすくむのに、実際に割って入る勇気が出る人は少ないでしょう。
今回は、その光景に出くわした女性が、思わず行動してしまったエピソードをご紹介します。
「使えないわね!」ドラッグストアで目撃したカスハラ
真山愛佳さん(仮名・32歳/事務職)は、仕事帰りに最寄りの駅近くのドラッグストアへ、柔軟剤を買いに立ち寄りました。
「私があれこれ商品を選んでいると、少し離れたところから甲高いヒステリックな声が聞こえてきたんですよ」
愛佳さんが振り返ると「
ちょっと! なんで商品の位置も分からないの? このサプリはどこかって聞いてるの!
」と50代くらいの女性が若い店員さんを責め立てていたそう。
女性は腕を組み、睨みつけるように店員さんを見下ろしていました。
「近くで商品を見ていたお客さんたちは気まずそうに目を逸らしていて……空気が一瞬で凍りついたみたいな感じでした」
店員さんは完全に怯えていて、「す、すみません……私、タイミー(※スキマ時間バイトアプリのタイミーを使って働く人)なので、すぐに社員さんに確認してきます」と申し訳なさそうに頭を下げました。すると女性はため息混じりに「
本当に使えないわね
」と言い放ったのです。
タイミーさんにぶつけられた心無い言葉に……
「私はその光景を棚のかげから見ながら、胸の奥がチリチリしました。実は私も学生時代に、同じような経験があったんです。
当時ドラッグストアでアルバイトをしていた私は、まだ不慣れで商品の場所や在庫状況をすぐに答えられないことがあったんですよ。ある日、棚の商品を探していると突然『
なんでそんなことも分からないの! 全然ダメね!
』と、怒鳴りつけるお客さんがいて。
もちろんその方の理不尽さは分かっているつもりでいましたが、当時の私はただただ怯えるしかなくて。あの時の悔しさと無力感が、タイミーさんが怒鳴られている光景を見た瞬間、一気に蘇ってしまったんですよね」
慌ててバックヤードに走っていく店員さんの背中に、その女性は「1分しか待たないわよ!」と追い打ちをかけるように心ない言葉をぶつけていました。
勇気を出して女性に声をかけた
「その偉そうな態度を見ていたら無性に腹が立って……私はどうしても我慢できなくなりました。つい、『
なんで自分で探さないんですか? サプリのコーナーはあそこにあるじゃないですか
。“使えない”のはあの店員さんじゃなくて、あなたの方かもしれませんね』と、割って入ってしまったんですよ」
女性がギョッとして振り向くと、愛佳さんは「それにあの店員さん、誠実に対応されてますよね?
“分からないことを確認する”って、ちゃんとした接客ですよ
。怒鳴り散らすよりよっぽどまともだと思います」と続けました。
「お店は静まり返り、私は“ヤバい、やっちゃった”と内心怖くなっていました。ついあのタイミーさんに過去の自分のことを重ねて熱くなってしまった……とちょっと後悔しつつ、密かに膝がガタガタ震えていたんですよね」
ですが愛佳さんの中の“あの時、何も言えなかった自分”が、今度こそ誰かが傷つくのを見過ごしたくないとざわめいたんだそう。
すると、
近くにいたおじさんがポツリ「ほんとそれ」とつぶやきました
。
立場や状況を利用して強く出る人が許せない
「そしたらその女性は顔をそむけ『ふんっ』と言って、カゴをその場に置いて立ち去っていきました。よかったとホッとしながらそのカゴを片付けようとすると、タイミーさんが走ってきて『本当にありがとうございました』と涙目でお礼を言ってくれて……
怖かったけど、やっぱり言ってよかったと思ったんですよね
」
タイミーさんはやがて笑顔になり、何度も頭を下げながら愛佳さんが帰るのを見送ってくれたそう。
「私はあの女性客のように、立場や状況を利用して相手に強く出る人を、もう見過ごしたくないと思いました。『確認します』と言えるのは、誠実に仕事をしている証拠だし、何も悪くありません。タイミーさんのように、柔軟な働き方で人手不足の現場を支えている人たちが、安心してのびのび働ける社会であってほしいと願っています」と、真っ直ぐな瞳で語る愛佳さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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