1月23日(金) 21:10
結論から言うと、信託契約の中に運用方針やルールを書き込むこと自体は可能です。家族信託では、誰が受託者となり、どの財産をどのように管理し、受益者(利益を受ける人)にどう渡すかを、契約で設計できます。
たとえば「株式比率は〇%まで」「信用取引は禁止」「レバレッジ型の投信は購入しない」など、一定の制約を設ける発想もあり得ます。
ただし注意点として、信託は“未来のすべての運用判断を完全に固定する仕組み”ではありません。市場環境や家族の状況が変わる中で、受託者が受益者の利益を守りながら適切に管理する必要があり、受託者には忠実義務などの法的義務も課されます。
つまり「ルールは書けるが、細かすぎる縛りは実務上うまく機能しないことがある」というバランスが重要です。
信託でできるのは、単に財産を引き継がせることだけではありません。たとえば親が元気なうちに信託を組成しておけば、将来判断能力が低下した場合でも、受託者が信託財産を管理し続けられます。
株式や投資信託などの金融資産も対象になり得るため、「売却・乗り換え・分配」などを受託者が行える設計にしておけば、子どもがいきなり相場判断を背負わなくて済む形も作れます。
また、相続のタイミングだけでなく「毎月〇万円を生活費として給付する」など、受益者への渡し方を調整することも考えられます。これは遺言代用信託の考え方にも近く、死亡後の資金の受け取り方(時期・金額・方法)を定めておくことで、遺族の生活資金を確保しやすくなります。
不安の本質が「子どもが投資判断できない」ことなら、運用の主体を子どもに移さず、受託者(たとえば信頼できる親族や専門家)に担わせる設計が現実的です。そのうえで、子どもは“受益者”として利益を受け取るだけにする形も選べます。
信託契約に運用方針を書き込む際は、細かい商品名まで縛るよりも、考え方を整理して「何を禁止し、どこを裁量にするか」を明確にすることが重要です。
たとえば禁止事項としては、信用取引や仕組債、デリバティブ取引など、リスクが大きく仕組みも複雑なものを対象にする方法があります。一方で、すべてを禁止してしまうと、相場急変時に損切りもできず“塩漬け”になるリスクもあるため、一定の売却判断や資産配分の調整は受託者に任せたほうが合理的です。
また、信託財産の運用は「受益者のために行う」ことが前提です。受託者が自己都合で動かせないよう、利益相反を防ぐルールも信託法で意識されています。だからこそ、受託者を誰にするか、監督役(信託監督人)を付けるかなど、運用方針と同じくらい体制設計が大切になります。
さらに証券口座を絡める場合、「信託口口座」をどう作るか、証券会社側の対応が可能かも確認が必要です。信託専用口座の考え方自体は広く知られていますが、取扱いは金融機関ごとに差が出やすいため、制度設計と実務対応をセットで進めるのが安全です。
信託契約に運用方針や投資ルールを書き込むことは可能であり、高リスク商品の取り扱い不安を減らす手段にもなります。ただし細部まで固定しすぎると、環境変化に対応できず逆に不利益となる場合もあります。
禁止事項と裁量範囲を整理し、受託者の選定や監督体制まで含めて設計することが重要です。証券資産を含む場合は、信託口口座など実務面の確認も欠かせません。家族の安心を守るためにも、早めに専門家へ相談しながら進めましょう。
厚生労働省認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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