過去最大の最終赤字を見込むなど経営苦境にあえぐ資生堂。1月6日には、当初は200人前後としていた希望退職の募集について計257人の退職が決まったと発表し、SNS上では、資生堂の将来に不安を抱く従業員が多く存在するのではないかという見方も出ている。
同社は取材に対し「もともと想定していた200人を上回る応募があったので、そのなかから運用ルールに基づいて先着順で受付を行い、適用されたのが257人ということになります」と説明する。同社はここ数年、複数回にわたり人員削減を行ってきたが、復活の兆しはあるのかを探ってみたい。
過去最大520億円の赤字…資生堂を襲う減益の波
資生堂は昨年11月、従来は60億円の黒字としていた2025年12月期連結最終損益について、520億円の赤字になる見通しだと発表。前期(108億円の赤字)に引き続き2年連続の赤字で、赤字額は同社としては過去最大となる。売上高は前期比3%減の9650億円、コア営業利益は前期(364億円)とほぼ同額の365億円。同社はここ数年、不安定な業績が続いている。営業利益が過去最高を更新した19年12月期から一転して20年12月期は最終損益が赤字となり、翌年度には黒字に回復したものの23年12月期まで減益が続き、24年12月期には再び赤字に陥った。
業績低迷の大きな要因の一つが、米国事業の不振だ。海外で積極的なM&Aを続けてきたが、16年に買収した「ローラメルシエ」など米国3ブランドの赤字が続き、21年に7億ドルで売却したが、24年12月期に売却代金の一部が回収不能になるリスクが生じて128億円の引当金を計上。19年に買収したブランド「ドランク・エレファント」も低調で、25年12月期に米国事業で468億円の減損損失を計上。同事業の25年1~9月期のコア営業損益は75億円の赤字に拡大している。
「年内回復は困難」業界関係者が語る厳しい現状
中国・トラベルリテール事業もさえない。中国事業は消費者の節約志向と貯蓄性向の高まりを受けた消費の低下継続が原因で、23~24年12月期にかけて売上高は前期比減。トラベルリテール事業は中国人旅行者による消費の減少や市場のディスカウントプロモーションによる価格競争の高まりを受けて、24年12月期は売上高が前期比24%減となった。同社は減収とトラベルリテール縮小によるビジネスミックス悪化の中でも固定費低減・コストマネジメントで高い収益性を堅持する方針を示している。
「トラベルリテールの事業は主に空港や免税店での中国人観光客向けの販売だが、中国政府による国内での転売規制や訪日自粛の呼びかけなどもあり、少なくても年内に大きく回復する見込みは少ない」(小売り業界関係者)
選択と集中。コアブランドへの投資配分を明確化
同社は再浮上への施策としてグローバルで250億円のコスト削減(2026年)を行い、コアブランドの「SHISEIDO」「クレ・ド・ポーボーテ」「NARS」、ネクストブランドの「エリクシール」「アネッサ」「フレグランス」等、そして次世代ブランドの役割を明確化して戦略性に沿った投資配分を徹底し、28年までに10以上の最新技術をブランドへ搭載して間断なく発売していく方針だ(「2030 中期経営戦略」より)。昨年10月には、敏感肌向けスキンケアシリーズ「dプログラム」の商品ラインナップを刷新して従来より約1割低い価格設定としたが、資生堂にとっては異例の値下げとなった。
「dプログラムの値下げはドラッグストアやスーパーなどで幅広い年齢層の消費者に手にとってもらうことが狙いとみられるが、現在の資生堂は中価格帯で強い商品がなく、高価格帯の商品で勝負しなければならないのが課題」(同)
TSUBAKI、シーブリーズも…主力ブランド放出の誤算
同社は20年12月期に最終赤字に転落したことを受け、経営改革の一環として中価格帯とされる日用品事業の切り離しを断行。ヘアケア商品「TSUBAKI」、男性用ブランド「uno(ウーノ)」、ボディーケアブランド「シーブリーズ」といった一般消費者向けに訴求力の高いブランド群を欧州系ファンドに売却した。
「国内市場に限っていえば、化粧品・スキンケアはとにかく競合商品が多く、消費者も低価格品を追い求める傾向が強まっているので、高価格帯で勝負してきた資生堂にとってはますます厳しくなってくる。値下げした『dプログラム』も敏感肌向けスキンケア商品でトップの花王『キュレル』のほうが安くて人気が高く、追いつくのは難しい。より一般消費者に近いアイテムである日用品事業を手放したことが、結果的にボディーブローのようにきいてくるかもしれない」(同)
国内1割の早期退職…加速する人員削減の波
そんな同社は経営再建のため痛みを伴う改革として、人員削減も進めてきた。24年には国内従業員の約1割にあたる1477人の早期退職を行い、昨年8月には米国子会社で300人を削減した。そして昨年11月には希望退職プログラム「ネクストキャリア支援プラン」として200人前後の希望退職を募集すると発表。今年1月には、当初見込みを上回る計257人の退職が決まったと発表した。資生堂は次のように説明する。
「このプログラムは弊社の一定の年齢や勤続年数などを満たした人について、あらかじめ定めた募集期間と運用ルールに基づいて運用しました。その過程において、当初予定を上回る人数の募集があったので、運用ルールに基づいて先着順で受付を行った結果として257人に適用になりました」(資生堂担当者)
同社の25年12月期第3四半期(累計)のセグメント別売上高は、中国・トラベルリテールが前年同期比6%減、アジアパシフィックは1%減、米州は9%減、欧州は4%増、日本は横ばい。日本セグメントはインバウンド向け売上の減少を「エリクシール」「クレ・ド・ポー ボーテ」の新商品の販売好調やEC売上増で補った。
中国・トラベルリテールは「クレ・ド・ポー ボーテ」「NARS」の成長継続や 「SHISEIDO」のEC販売好調などで回復傾向にあるとしている。米国は「ドランク・エレファント」の苦戦が続くが在庫クリーンアップや固定費削減を進め、「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」の高成長をテコに業績回復を見込む。
資生堂の復活に期待したい。
<TEXT/山田浩二>
【山田浩二】
飲食チェーンや学習塾、小売り企業を経てIT企業でシステム開発業務に従事。現在はフリーのライターとして主に企業・ITなどのジャンルに関する取材・記事執筆を行っている。
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