37歳で想定外の妊娠をし、2025年8月末に男児を出産した。
妊娠に気づいたのは16週に入ってからだった。長年の生理不順や「妊娠は難しい」と言われていた過去に加え、ADHD(注意欠如・多動性障害)の特性でセルフネグレクト癖があり体調管理がおざなりになること、算数障害(発達障害の一種で数字、計算に困難を抱える学習障害)で生理周期を正しく把握していなかったことなど、いくつもの要因が重なっていたのである。
この連載であまりにも「16週まで妊娠に気づかないはずがない。生理がこないことに気づかないのはおかしい」とコメントをいただくので、産後4か月で生理が再開したことを機に、生理記録アプリを遡りChatGPTを使って受精日を逆算してみた。
2024年の8月から生理が3か月間来なかったため妊娠検査薬を使うも陰性。婦人科でホルモン剤を処方してもらい12月に生理をこさせ、翌月にも短期間の出血があったことがアプリの記録から判明した。ずっと生理が不安定だったのでそれを生理だと思っていたが、着床時の出血の可能性が浮上した。
そして妊娠判明が3月末。妊娠周期は最後の生理日からの計算なので、生理がないなと思ったらあっという間に16週経ってしまう。改めて毎月の生理管理の重要性を思い知らされた。
精神科医と産婦人科医、助産師、保健師が連携
このようにして、妊娠判明からドタバタで出産、育児に突入した。私には脳内を整理できず混乱してしまうADHDの特性や、計算が苦手な算数障害の特性がある。また二次障害で睡眠障害や双極性障害Ⅱ型があり気分の浮き沈みもある。そのため育児は相当困難なものかもしれない、産後うつになるかもしれないと不安で、妊娠中から出産する病院の助産師さんと地域の保健師さんが連携してくださり気にかけてもらっていた。
精神科の主治医から出産する病院の産婦人科宛に私の特性や病状について手紙を書いてもらい、準備は万全にしていた。
ところが、いざ育児が始まってみると発達障害や二次障害に関しての不安は覆された。おそらく、病んでいる暇がなくなったのだ。医師に相談した上で、妊娠中もでも害のない種類の睡眠薬を飲んでいたが、産後は夜間授乳もあり睡眠薬など飲んでいたら起きられない。
以前かかっていた心療内科で過剰に薬を出されていたため、転院したクリニックでは減薬を進められていた。主治医の指導のもと妊娠前から少しずつ薬を減らしており、ゆくゆくはゼロを目指していた。当初は1日20錠近かった薬が妊娠後期には夜寝る前の睡眠薬1錠までに減っていたのだ。
そして、夜間授乳のため睡眠薬も飲まなくなった。それできちんと授乳の合間に眠れるのかと思うだろうが、おそらくホルモンのせいだろうか。授乳やオムツ替えなど息子のお世話が終わって息子が寝たらすぐに自分も眠り、息子が小さく「フェ……」と声を上げただけですぐに起きてまたお世話をする、ということができるようになった。
しかし、細切れ睡眠では眠った気がしないのは当たり前だ。夫が1年間の育休を取ってくれたので、週2〜3回、夜間のミルクを1回分お願いして5時間通して睡眠を取れる日を作った。
2週間外来や保健師訪問、1か月健診・3〜4か月健診では今回もまた? と思うほど産後うつの検査もあったが、まったく問題がなかった。
発達障害があっても、育児ができるかどうかは子と環境による
私の場合は育児により妊娠前よりメンタル面が良くなったが、発達障害の人みんなに「子どもがいるとメンタル面が良くなるよ」とは言えない。
我が家は夫が長期間の育休を取りきちんと家事や育児をしてくれる・子を夫に見てもらい長時間自由に過ごせる日がある・子の成長や発達が育児書や育児アプリ通りでよく寝てくれる方といった、最適な環境や条件がそろっているから、私は病まないですんでいるのだ。
メンタル面に問題はないものの、ADHDの薬のコンサータを飲まなくなったため、忘れ物やうっかりミスは多い。コンサータを飲むとシャキッと目が覚めるため、飲んでしまうと息子が寝てこちらも眠れるタイミングのときに眠れなくなる気がして飲んでいないのだ。
ADHDの困りごとでよくあるのが忘れ物。それは2回目の予防接種のときだった。朝から息子を連れて夫と病院へ向かった。受付で予防接種予診綴表を提出すると看護師から「シールはありませんか?」と聞かれた。
はて? シール?
そう思って問うと、予診票のつづりに貼らねばならないバーコードと名前が記載されたシールだった。そういえば前回の予防接種の際にシールを貼ったことを思い出した。マザーズバッグの中を探すもシールはない。病院までは徒歩10分ほどだが、取りに帰るのはかなりだるい。
どうしようかと思っていると、ひとまず予防接種を受けて午後にまたシールだけ持ってくればいいと言われ、午後に病院にシールだけを持って行く二度手間となってしまった。
忘れ物対策と予防接種のスケジュール管理
その次の予防接種からは行政から送られてきた予防接種の案内の封筒ごとマザーズバッグに入れて持って行くことにした。そうすればもし、他に何か必要なものが出てきても封筒の中を探せばいいので忘れ物はなくなる。ただ、余計な資料も一緒に持参しているのでかさばりはするが。
ただでさえ子連れのお出かけは荷物が多い。忘れ物防止のため、基本的にマザーズバッグの中は補充や入れ替えのとき以外はいじらないようにしている。バッグの中身はオムツ、おしり拭き、使用済みオムツを入れるビニール袋、液体ミルク、哺乳瓶、着替え、タオル、ガーゼだ。
もともとカバンの中身はぐちゃぐちゃのタイプだったが、使わなくなったポーチ類(オムツ用ポーチや赤ちゃんの着替えや哺乳瓶を入れるのにちょうどいい大きさのもの)を大量に友人が譲ってくれたので、それをそのまま利用して、産前よりもカバンの中がスッキリしている。
また、予防接種のスケジュールはとても複雑だ。「このワクチンを打つのはこの時期がよい」「このワクチンを打ったら次のワクチンを打つまでは1か月あけること」といった具合で、繰り上がりや繰り下がりのある暗算がぱっとできない算数障害を持つ身からすると、いつ次のワクチンを打てばいいのか計算ができない問題があった。
しかし、前回の記事を読んだママ友から予防接種スケジュール管理アプリ「ぴよログ予防接種」を教えてもらい解決した。どのワクチンをいつ打てばいいのか、おすすめの時期が一目でわかる仕様になっている。アプリだけでなく、病院でも次はいつどのワクチンを打てばいいのか毎回予診票のつづりに付箋をつけてくれるので助かっている。
妊娠中から希望していた完全ミルク育児に移行
さらに、ADHD対策の一貫で完全ミルク育児にした。ADHDの人は入眠困難やナルコレプシーなど睡眠の問題を抱えていることが多い。私も睡眠障害がある上、7時間は寝ないと頭が働かないため、少しでも睡眠時間を確保できるよう完全ミルクにしたのだ。(母乳はミルクと比べて消化が良いので2〜3時間おきの授乳が必要となり、長時間休めない)
できれば最初から完全ミルク育児にしたかったのだが、栄養のある初乳だけは与えたかったのと出産した病院が母乳推奨だったので母乳とミルクの混合にしていた。
しかし、2か月半の頃に息子の直母拒否(直接乳房から飲んでくれなくなること)が始まった。産後ケアの際に助産師さんに相談すると、お腹がすいているときに乳を吸ったのに出が悪くて嫌になってしまったのだろうとのことだった。
もうそんなに胸も張らなくなっていたのでこれを機に完全ミルク育児に移行した。卒乳は完全に乳腺を閉じないと生理のときにピリピリと胸が痛むとのことで、助産師さんが卒乳のための乳房マッサージをしてくれて、私の母乳工場は閉鎖された。
完全ミルク育児にしたらぐんとラクになった。今までは夜間のミルクを夫に頼むのは胸の張りの関係で1回までだったのが、一晩(深夜と早朝の2回)頼めるようになり、その分睡眠時間を確保できるようになった。
「母乳育児VSミルク育児」論争
母乳とミルク、どちらがラクなのかはSNSのママアカウントでは頻繁に議論されるが、その人の環境と性格によると思う。
ミルクはミルク代がかかるが母乳は経済的だ。また、ミルクは調乳や哺乳瓶の消毒の手間がかかるし外出の際に荷物が多くなるが、母乳は母親が何も道具を必要とすることなく、服をめくれば子に与えることができる。しかし、母親が体調を崩した際、完全母乳だと子がミルク慣れや哺乳瓶慣れをしていなくて、飲んでくれない恐れもある。
もともと我が家は酒好き夫婦だったので、焼酎のお湯割りを飲むために加熱殺菌済みの水が出るウォーターサーバーを導入していた。それを今はミルクを作るために使っている。ウォーターサーバーを使えば最初に作りたい量の半分お湯を入れて粉ミルクを溶かし、その後差し水をもう半分加えれば、1分で適温のミルクが完成する。
哺乳瓶の消毒も、ピジョンのポチット(ボタンを押すだけで哺乳瓶のスチーム消毒、乾燥を全自動で行える機器)を使っているのと、哺乳瓶を4本使いしているので、4本たまったら哺乳瓶を洗って入れるだけだ。いろんなものを消毒できるので、おしゃぶりや歯固めなども一緒に入れて消毒している。
このような環境なので、うちは完全ミルクにして良かった。どちらがラクかというと、どちらもメリット・デメリットがあって自分に合うほうを選べばいいのだと思う。
特性に合った育児で「育児が楽しいゾーン」に突入
現在、息子は4か月半。新生児の頃はまだ赤ちゃんが昼夜の区別がついていない上、3時間おきの授乳なので「寝てはいけない拷問つらすぎる」状態だったのが、夜通し眠ることが増えて体重の増えも良いので夜間授乳もほぼ必要なくなり、親も休める時間が増えてきた。来月からは離乳食も始まるので準備中だ。
ちまちました細かい作業が苦手なので離乳食も極力作りたくなく(最初のうちは量も小さじ1とかなのでその量を小分けにして作るのも面倒)、フリーズドライのお粥や生協の冷凍の野菜や白身魚のペーストを用意した。でも、慣れてきたら手作りもしようと、離乳食の本を買い、次回の産後ケアでは助産師さんが離乳食について教えてくれることになっている。
自分は発達障害だし産後うつにもなりやすそうだと思っていた育児。出産翌日「今日から母子同室です」とコットに乗せた赤ちゃんを連れて来られ、「ひぃ! こんなよくわからない生物と二人きりなんて無理です!まだ体も回復していなくて会陰が痛くて骨盤もグラグラなのに一晩中抱っこ!? しかも退院したら、泣き止まないときにどうすればいいのかすぐに聞ける助産師さんもいない……」と思っていたのに、意外とやれている自分に驚く。
最近は息子と毎日散歩に行くのが日課になっている。また、友人が1か月違いで出産したため、来月は新宿にあるお子様連れ歓迎カフェにて子連れでランチ予定。初めての親子二人での遠出が楽しみでたまらない。
息子はよく寝るしよく笑う。自分も新生児期よりかは眠れるようになったため余裕ができ、息子の成長と共に育児が楽しいゾーンに突入した。最近は自分が障害者であることをだんだん忘れつつあるが、油断をしているとADHD特性の困りごとが発生してしまうと思われる。今後も自分の特性に合わせた育児をしていきたい。
<文/姫野桂>
【姫野桂】
フリーライター。1987年生まれ。著書に『発達障害グレーゾーン』、『私たちは生きづらさを抱えている』、『「生きづらさ」解消ライフハック』がある。Twitter:@himeno_kei
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