今年の春高バレー、男子は京都の東山高校が6大会ぶりの優勝を果たした。そのなかで、出色のパフォーマンスを見せた6選手を紹介する。
優勝した東山のエース、岩田怜緯 photo by スポニチ/アフロ
■岩田怜緯(いわた・れい京都/東山高校2年)
大会MVPを受賞した、身長189cmのアウトサイドヒッター。新潟・中之口中3年時に全国優勝を経験し、U16日本代表にも選出された、将来の活躍が期待される選手のひとり。1年時からレギュラーとして出場を重ねてきたが、前回は京都の予選決勝で洛南・中上烈(現・早稲田大)とのエース対決に敗れ、春高出場を果たすことはできなかった。
その悔しさをバネに、今季は成長を遂げた。インターハイでは駿台学園(東京)に敗れたが、国民スポーツ体育大会ではリベンジ。スパイク時の高さとスピードも増した。特に、身体全体をしなやかに使うフォームから放つバックアタックは強力で、春高でも随所で光った。高校三冠を狙っていた鎮西(熊本)との準々決勝では、第2セットの27対27の場面で、相手の同学年エース・一ノ瀬漣とお互いにバックアタックを打ち合う壮絶なラリーを繰り広げた。
エースとして精神面も成長し、優勝を飾った直後には「エースとしてチームを勝たせたいと思っていた」と語り、誰よりスパイク練習に取り組んできたことも明かした。最終学年の来年、同じ舞台でどんな姿を見せるか注目したい。
■伊藤颯希(いとう・さつき京都/東山高校2年)
岩田と同じ中之口中で全国優勝を経験。「ディフェンスや、細かいつなぎのプレーを大切にする東山で日本一になりたかった」と東山へ。スタメン出場ではなかったが、要所で投入され、リリーフサーバーとして存在感を発揮した。
特に清風(大阪)との決勝では、17対19と先行された第1セット終盤、伊藤のサーブ時に5連続ブレイクで逆転。第2セットも同様にブレイクを重ね、試合を通して12.5%とチームトップのサーブ効果率を残した。
紛れもなく優勝に貢献する活躍をしたひとりだが、伊藤自身は「まだまだ足りない」と自己採点は低い。理由は明確。中学時代からチームメイトであり、ライバルと目する岩田に「まだ負けているから」と断言する。
「中学の頃から怜維に負けたくないと思ってきたし、今もライバル視しています。でも現時点では、怜維に大きな差をつけられてしまっているのも事実。最上級生になってどれだけ怜維との差を縮められるか自分自身もすごく楽しみにしているし、自分の成長する場でもあると思っているので、ここから頑張っていきたいです」
最も近くにいるライバルと切磋琢磨しながら、さらなる成長を誓う。
■尾﨑亮太(おざき・りょうた大阪/清風高校3年)
初優勝を目指し、高校3年間で初めてたどり着いたセンターコート。清風にとっては実に7年ぶりとなる決勝の舞台で躍動した。身長186cmで、もともと攻撃力の高さを武器としてきたが、真のエースになるために精神面での覚醒が求められ続けてきたなかで、駿台学園との準決勝で覚醒の時を迎えた。
大会を通じて好調を維持してきた1年生エースの西村海司が負傷退場したあと、仲間から託されたトスを「自分が決めるしかない」と打ち続けた。相手のブロックが集中するなかでも、無理に決め急ぐことなくコースを見て打ち分けた。
準決勝の最終セットはまさに獅子奮迅の活躍で、チームを勝利に導いた。夏のインターハイで敗れた相手に見事なリベンジを果たし、「自分を信じてトスを託してくれてありがとう、という気持ちが込み上げた」と涙した。
春高前には膝痛もあったが、チームにとって欠かせぬ大黒柱。「"緊張しい"だけどやるしかない、と気合を入れた」と尾﨑は明かしたが、チームメイトからも「いるといないではチームがまったく違う」と信頼も厚い。下級生が多くコートに立つなか、3年生エースとしてチームをけん引した1年間。最後の春高でたくましさを増したエースに成長した。卒業後は関西1部の強豪、近畿大でさらなる高みを目指す。
■西村海司(にしむら・かいじ清風高校1年)
多くのエースが躍動した今大会で、間違いなく大会の"主役"と呼ぶべき活躍を見せた1年生エース。中学時代から世代を代表するエースとして活躍し、主将を務めた全中選抜で国際大会も経験した勝負強さや、大舞台で躍動する度胸のよさを春高でも見せつけた。
身長は181cmと決して高くないが、跳躍力を活かした高い打点から叩きつけるスパイクに加え、日本代表選手を彷彿とさせるフェイクセットも難なくやってのける。華のあるプレーで何度も会場を沸かせた。
清風で初めてのタイトル獲得を目指したインターハイは、直前で右足首を捻挫し、100%のプレーができずに準々決勝で駿台学園に敗れた。その悔しさと、上級生からの激励を受け、春高では初戦から「まったく緊張しなかったし、ただただ楽しかった」と目を輝かせていた。
大会の大一番と位置づけて臨んだ準決勝の駿台学園戦でも、42本のスパイクを打ち続けたが、途中で両脚がつり、左ふくらはぎを負傷。途中交代を余儀なくされたが、何度も「もう一度コートに戻りたい」とベンチでともに戦う姿勢を見せ、勝利の瞬間には「ごめん」と周囲に謝りながらも勝利の涙を流した。
リカバリーの時間は限られており、決勝は万全な状態で臨めたわけではなかったが、それでも相手の状況を見極めて着実に得点。攻撃力だけでなく守備力も磨かれ、負けたあとは「悔しい」と口にしながらも、「それ以上に抱いた感情があった」と熱っぽく語った。
「春高はずっと憧れていた場所だったので、とにかく最初から最後まで楽しかった。個人的には、姉(昨年の金蘭会の主将としてベスト4に進出。現在は東海大でプレーする西村美波)の成績を上回りたいと思ってやってきたので、姉ちゃんに勝てたのは嬉しいです」
大舞台で進化する1年生。新チームでの活躍が今から楽しみだ。
■竹内祐一郎(たけうち・ゆういちろう東京/駿台学園1年)
安田学園中のエースとして、全中を制覇。同学年で中学時代から何度も対戦してきた清風の西村が「絶対負けたくない相手」という1年生エースは、春高の大舞台でもその力を見せた。
身長は181cmながら、スパイク技術に加えて状況判断能力が高く、状況に応じてどこにどう打てば決まるかを瞬時に見極める。引き出しの多さも、出場選手のなかでトップクラスの実力者だ。派手なプレーばかりでなく、気づけば竹内がいて、確実に決めるという場面も。バレーボールIQの高さをセンターコートでも発揮し、準決勝の清風戦ではチーム最多の24得点を叩き出した。
攻撃力に加え、高校で磨かれた守備力も武器のひとつ。ただレシーブを上げるだけでなく、次のプレー、攻撃につなげるレシーブで、春高でもロングラリーを展開。しかし、フルセットの熱闘を繰り広げた準決勝では、竹内のスパイクがラインを割り、それが決勝点となって4連覇が潰えた。
敗れた瞬間、両手で顔を覆い涙。「ここで決められるエースになりたい」と雪辱を期す来季、どれほどの成長を遂げ、同じ舞台に立つのか。今季は「春高優勝」をチーム目標に掲げて臨んだが、来季の駿台学園が掲げる目標とともに、2年生になる竹内のプレーにも期待は高まるばかりだ。
■一ノ瀬漣(いちのせ・れん熊本/鎮西2年)
大会前から最も多くの注目を集めた、世代を代表するエース。1年で出場した昨年の春高ではダブルヘッダーを経験し、疲労回復もままならず準々決勝で東山に敗れ、「何もできなかったし、自分の力が足りなかった」と涙した。
強いエース、チームを勝たせる鎮西のエースになる、と誓って臨んだ今季はインターハイ、国民スポーツ体育大会を制覇。東山とフルセットを戦った国スポの決勝では、最終セットに3対8と5点のビハインドを背負った状況から「これぞエース」という活躍でチームを逆転勝利に導いた。
鎮西にとって初となる高校三冠に向け、迎えた春高。直前の天皇杯では格上のVリーグ、SVリーグのチームと渡り合い、春高での活躍にも期待がかかったが、その期待の大きさに加え、昨年11月に畑野久雄監督が急逝。さまざまなプレッシャーを背負った影響もあり、初戦の愛工大名電戦ではミスも目立った。「プレッシャーがすごくて」と吐露し、「自分のプレーが不甲斐ないので、もっとチームを楽にできるようなプレーがしたい」と涙した。
ダブルエースとして鎮西をけん引してきた3年生の岩下将大は、「一ノ瀬に助けてもらってきた試合ばかりなのに、誰よりも気負って責任を背負っていた」と言い、さらにセッターで主将の福田空も「2年生の一ノ瀬に頼ってばかりじゃダメだと思っていたけれど、大事な場面で一番信頼できるのが一ノ瀬だった」と、思いを込めたトスを託した。
これぞ名勝負と語り継がれるだろう東山との準々決勝で敗れ、人目もはばからず号泣。最後までチームの勝利のために戦い続けたエースに対し、会場からは大きな拍手が送られた。
新チームでは主将になり、鎮西の象徴とも言うべき「3番」を背負う。高校界を代表するだけでなく、日本バレーボール界の未来に光を灯すエース、一ノ瀬の姿を見る日が待ち遠しい。
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