歯を磨いた直後にコーヒーを飲んでいる、歯磨き後のうがいは念入りに——このどちらかに心当たりがある人は要注意です。歯磨きは一日の中で、お口の中がもっとも清潔になる瞬間。しかし実は磨いた“直後”の行動次第で、せっかくのケアがほとんど無駄になってしまうことがあります。
今回は歯科医の立場から、患者さんにも必ずお伝えしている、“歯磨き直後に絶対やってはいけない”5つの行為と、その理由をお伝えします。
①強いうがいを何度もする
歯磨き後にスッキリしたくて何回も強いうがいをする方は少なくありません。しかし、これが大きな落とし穴です。毎日歯磨きしているのに、実はむし歯予防効果を自分で消している状態かもしれません。
歯磨き粉は高濃度フッ素(1450ppm)配合のものを使用すると、むし歯予防効果が高まります。歯磨き粉に含まれるフッ素などの有効成分は、歯磨きの後、歯に残ることで効果を発揮します。
そのため磨いた直後に勢いよく何度もすすいでしまうと、ケアの“主役”である有効成分がすべて流れ落ちてしまい、せっかくの効果が発揮されない状況となります。推奨は「少量の水で5秒、1回だけ」。多くても2回までにとどめましょう。水の量は、
ペットボトルのキャップ2杯分(10~15ml)くらい
が目安です。
②歯磨き直後に飲食する
歯磨き後の歯の表面は、汚れが落ちているだけでなく、歯の表面を覆って保護しているタンパク質の膜(ペリクル)も一時的に剥がれており、酸や着色に対して無防備な状態です。このタイミングで飲食すると、歯のコーティングがないので、せっかくキレイにした歯がダイレクトにダメージを受けやすくなってしまいます。
特にコーヒーや、果物の酸、糖分などの影響は大きく、着色やむし歯リスクを高めます。さらに、歯磨き粉の有効成分も飲食によってすぐに落ちてしまい、歯磨きで汚れを取り除いた意味がなくなってしまいます。
理想は歯磨き後2時間は飲食をしないことと言われていますが、目安は「
まずは30分、飲食しない
」。どうしても何か飲むなら水だけが好ましいです。実際、しっかりと歯磨きをしているのにむし歯や着色が進んでしまう患者さんにお話を聞くと、「磨いた直後に飲食していた」「念入りにうがいをしていた」というケースは非常に多く見られます。
③すぐにマウスウォッシュを使用する
歯磨きの後に、マウスウォッシュを使う習慣のある人は多いです。しかし、殺菌や口臭予防が目的の一般的な洗口液(アルコール系など)は、歯磨き直後は避けて下さい。お口をしっかりとすすぐことで、歯磨き粉に含まれるフッ素などの有効成分が流れてしまうためです。マウスウォッシュを使用する場合も、飲食と同様に
少し時間を空けてから
にしましょう。
ただし、例外もあります。むし歯予防が目的のフッ素洗口液(フッ素うがい薬)や、歯科医が処方するタイプのものは、歯磨き直後の使用で問題ありません。持っている製品の使用タイミングがわからない場合、歯科医院で相談をしましょう。
ちなみに、マウスウォッシュと液体歯磨き(デンタルリンス)は異なるものなので、注意してください。液体歯磨きは、うがいをしてからブラッシングの順番です。
④すぐにガムを噛む
キシリトールガムであっても、歯磨きの直後に噛むのはオススメしません。市販のガムは、キシリトールではない代用甘味料や糖分が入っていることもあります。たとえキシリトール100%ガムだったとしても、
歯磨きの直後は噛まないほうが良い
です。
キシリトールは、菌の働きを抑える効果はありますが、フッ素のように歯を修復して強くする直接的な効果とは異なります。さらに、ガムを噛むことで唾液が多く出ると、歯磨き粉の有効成分を洗い流す可能性もあります。キシリトールガムは飲食後やお口の渇きが気になった時、甘い物が食べたくなった時の代替として利用するのが理想です。
⑤歯磨きの後に歯間清掃
多くの人が勘違いしているのが、歯間清掃のタイミングです。
フロスや歯間ブラシは「仕上げ」ではなく、「準備」として行うのが正解
です。フロス、歯間ブラシ、ジェットウォッシャーなどの歯間清掃は、歯磨きの前に行うのが基本なのです。
先に歯間の汚れを除去することで、歯磨きの清掃効果が高まることや、歯磨き粉の有効成分が歯間にまで行き届きやすいことがわかっています。また、歯磨きの後に歯間清掃をして、さらにお口をすすいでしまうと歯磨き粉の有効成分をしっかりと流してしまう結果になってしまいます。
歯間清掃を行い、しっかりとお口をすすいでから、歯磨きをしましょう。
1つだけでも今日から実践しよう
お口はしっかりとうがいしなければならないという印象を持っている方は多いと思います。喉の奥についた菌やウイルスを落とすガラガラうがいと、お口の中全体の菌を落とすぶくぶくうがいは似て非なるものです。
普段のうがいはしっかりと行い、歯磨き後のうがいはほどほどにしましょう。
もし今日から一つだけ変えるなら、「
歯磨き後は少量の水で1回だけすすぎ、30分は何も口にしない
」。それだけでも、むし歯・着色リスクは確実に下がります。
朝や昼などの忙しい時間帯は忘れてしまうかもしれませんが、唾液が減ってお口の中の菌が増殖しやすい就寝前だけは、このルールを守ってください。
歯磨き粉は薬ではないので、塗るだけでは歯磨きの意味がないのですが、お口の病気予防に有効な成分が入っていることも事実です。その効果を最大限引き出せるよう、ぜひ今日から歯磨き後の習慣も見直してみて下さいね。
<文/野尻真里>
【野尻真里】
一般診療と訪問診療を行いながら、予防歯科の啓発・普及に取り組んでいる歯科医師です。「一生涯、生まれ持った自分の歯で健康にかつ笑顔で暮らせる社会の実現」を目標にメディアで発信をしています。X(旧Twitter):@nojirimari
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