英国の若き演技派俳優ジャック・オコンネルのギラつきが止まらない!全米賞レースを賑わせている『罪人たち』(25)での怪演も鮮烈だったが、新作『28年後... 白骨の神殿』(公開中)でもヴィランを喜々として演じている。いや、もうこれはスゴい。悪い夢に出てきそうなほどスゴい。
【写真を見る】実は正体が吸血鬼のアイルランド系白人を怪演し、強烈な個性を発揮した『罪人たち』
若手と言ったものの、オコンネルはすでに芸歴20年以上におよぶ35歳。一般的にはアンジェリーナ・ジョリー監督による戦記ドラマ『不屈の男 アンブロークン』(14)の主演を務めたことで知られている。同作での、大戦時の捕虜生活を生き延びた実在の米軍兵士役は確かに熱演で、感動的でさえあった。一方で、彼は悪役を憎々しさと共に体現する稀有な才能を持っている。そこで本稿では、オコンネルの悪役史を中心にして、そのキャリアを振り返ってみようと思う。
■不良少年のナイーブさ、感情的な暴力性を体現
オコンネルの長編映画デビューは、15歳の時に出演した『THIS IS ENGLAND』(06)。1980年代のサッチャー政権下で、スキンヘッズと呼ばれる若き右翼思想グループに加入した少年の物語。ここでのオコンネルはスキンヘッズの一員である脇役を演じたが、反移民を声高に訴える武闘派の面よりも、むしろ気弱でナイーブな性格をうまく表現していた。
続く『バイオレンス・レイク』(08)では早くも本領発揮(?)。湖畔のキャンプ地を訪れたカップルを、恐怖の渦に引き入れていく地元の不良少年のリーダーに扮しているのだが、マイケル・ファスベンダーとケリー・ライリーという先輩俳優たちが演じたカップルを、怒り任せにひたすらいたぶり続ける。これがとにかく傍若無人で、感情的。この演技で注目されたオコンネルは続く名優マイケル・ケインの主演作『狼たちの処刑台』(09)でも似たような役を演じることに。
■『300 スリーハンドレッド 帝国の進撃』でハリウッドにも進出
『タワー・ブロック』(12)や『名もなき塀の中の王』(13)でも小悪党を演じる一方、『300 スリーハンドレッド 帝国の進撃』(14)でハリウッドに進出。さらに先述の『不屈の男 アンブロークン』がアカデミー賞で3部門にノミネートされたことで、イギリスだけでなくアメリカ映画にも頻繁に出演するようになった。
■『マネーモンスター』『罪人たち』で見せた強烈な存在感
ハリウッドに飛んだ頃の彼の作品のなかで、最もギラついた個性が生きたのはジョージ・クルーニーやジュリア・ロバーツと共演した『マネーモンスター』(16)だ。クルーニーは人気株式投資番組の司会者で、ロバーツはその番組の敏腕プロデューサー。そしてオコンネルが演じたのは、この番組を信じて株を買い大損した腹いせに、銃を持ってスタジオに乗り込み、司会者を人質にとって生放送を続けさせる男だ。本作の緊張感は、彼が牽引していると言っても過言ではない。
このあと、『ナチス第三の男』(17)や『セバーグ』(19)、『フェラーリ』(23)などで役の幅を広げていったオコンネルが、久々に強烈な個性を発揮したのが『罪人たち』。1930年代のアメリカ南部を舞台に、黒人たちのモグリ酒場に現われた旅のアイルランド系白人の男を演じている。しかしその正体は、吸血鬼だった!というトンデモ展開だが、酒場の人々をジワジワと苦しめていくこのキャラを演じたオコンネルの怪演は不気味というしかない。
■仲間に暴力を強いるクレイジーな教祖様を怪演する『28年後... 白骨の神殿』
そして注目の新作『28年後... 白骨の神殿』。『28日後...』(02)に始まったゾンビパニック映画シリーズの第4作で、前作『28年後...』(25)においてオコンネルは次回予告的にラストシーンですでに姿を見せていたが、本作でその正体が明らかになる。
パニック後の終末世界で、若者たちからなるカルト教団を率いている金髪男ジミー。邪神を崇拝し、“強い者だけが生き残る”という教義の下、信者に新参者との殺し合いを強いる、クレイジーな教祖様だ。
本作のおもしろいところは、もはやゾンビがさほど恐ろしくはなく、むしろ荒廃した地上では心まで荒れてしまった人間のほうが恐ろしいという着眼点。狂った世界で狂気に憑かれたジミーは、まさにその象徴だ。それを支えるのがオコンネルのギラついた怪演であることは言うまでもない。
今後のジャック・オコンネルは、すでにハリウッド版「ゴジラ」シリーズ最新作への出演を終えており、現在はポストプロダクション作業中とのこと。どんな役かは現時点では不明だが、こうなると彼のギラ演技を期待してしまう。まずは『28年後... 白骨の神殿』のチェックをお忘れなく!
文/相馬学
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