林陵平×下田恒幸プレミアリーグ前半戦総括前編
イングランド・プレミアリーグはアーセナルが首位でシーズン後半へ。試合中継の解説と実況でお馴染みの林陵平と下田恒幸の両氏に、ビッグクラブのここまでの戦いを振り返ってもらった。
【動画】林陵平×下田恒幸プレミアリーグ2025-26前半戦総括前編↓↓↓
【アーセナルに死角はないのか】
林
プレミアリーグの前半戦を振り返っていかがですか?
下田
予想外のことが多すぎて、頭の整理ができていないです(笑)。
林
これがプレミアリーグの面白さではあると思いますね。まずは首位アーセナルから振り返っていきましょう。
プレミアリーグ首位のアーセナルを引っ張るデクラン・ライスphoto by Getty Images
下田
すべてがうまく進みすぎていますね。昨季までの約3年間は、リーグ最終盤に向けて選手が足りないという状況が続いていました。それをここまでうまく埋めるのかと感心しています。
林
前半戦もガブリエウ・マガリャンイスとウィリアン・サリバの両センターバックを筆頭にケガ人が出ましたが、彼らの穴を埋める補強ができています。また、中盤では特にアンカーのマルティン・スビメンディがハマったのも大きいと思います。
下田
スビメンディのことはどう思っていましたか?
林
プレミアリーグの強度に適応できるか不安な部分を感じていましたが、前任のトーマス・パーティ(現ビジャレアル)のように中盤で潰せています。特にビルドアップによるゲームコントロールの部分では最高ですよね。
下田
球出しがうまいですよね。
林
スビメンディがアンカーに入ったことでデクラン・ライスも輝きだしました。昨季よりもビルドアップの形に柔軟性が増して、相手からすれば、さらに捕まえづらくなったと思います。ほとんど隙はありませんが、そのなかで触れておきたいのがビクトル・ギェケレシュですね。
下田
僕はカイ・ハヴァーツでいいと思っている派です(笑)。
林
今のアーセナルのスカッドのなかでは異物感があってハマっていないと思います。スポルティング時代のようなプレーを見せることができていません。
下田
僕の中でミケル・アルテタ監督が志向している戦い方は、ストライカーが狭い幅の中で点を取る勝負をするよりも、選手全体が動くイメージがあります。ギェケレシュはそのようなタイプではありませんよね。
林
ボックスタイプですが、ヘディングがあまり強くないのでゴールから遠ざかっています。守備時のプレッシャーや攻撃時の縦のスピードなど、他のタスクで良さは出ていると思いますが、移籍金を考えると期待値よりは低いのが現状ですね。
下田
林さんは後半戦のギェケレシュはどうなると思いますか?
林
どれだけアルテタが我慢をするかですね。チームに馴染むのはハヴァーツやガブリエウ・ジェズスだと思います。
下田
ここまでの強さを考えると今季のアーセナルに死角はないですか?
林
最後までわかりませんが、「今年タイトルを獲らなければいつ獲るのか」というぐらいに強いです。
【積み上げてきたマンチェスター・シティ】
林
続いてはマンチェスター・シティです。
下田
僕はケビン・デ・ブライネ(現ナポリ)のような選手が退団したことで、シーズン開幕当初に「普通のチームになったな」と思ったんですよ。ただシーズンが経つに連れて、かつてのペップ・グアルディオラが体現していたサッカーにブラッシュアップされていった印象です。
林
シーズンの立ち上がりは選手の入れ替えが多かったことで、固定のメンバーが決まらなかったと思います。前進の仕方もいろいろな形を試していました。元リバプールのペピン・リンダースがアシスタントコーチになって縦の速さも生まれました。
下田
確かに。
林
今はメンバーもある程度は固まったことで、ビルドアップや崩しの局面の完成度が上がっています。左サイドバックのニコ・オライリーも効いていますね。
下田
中盤の選手をサイドバックにコンバートして、その選手のレベルを上げているのがペップだと思います。右サイドバックに定着したマテウス・ヌネスもそうじゃないですか。そういうのが彼の"凄み"ですよね。
林
ヨシュコ・グバルディオルも左から真ん中にポジションを移してハマってきていて、最終ラインの安定がチームの安定にもつながったと思います。そしてGKのジャンルイジ・ドンナルンマですよ。
下田
ドンナルンマは止めますね。止める力が凄いです。
林
シュートストップに関してはドンナルンマが世界最高峰だと思います。しかし、後ろの安定というところで、そのグバルディオルとルベン・ディアスが負傷してしまいました。
下田
ジョン・ストーンズもいないですよね。
林
となると、人が足りないのでセンターバックの問題が出てきます。ナタン・アケやアブドゥコディル・フサノフがいますが、クリスタル・パレスからマーク・グエイを獲得する噂もありますね。
下田
ペップはセンターバックの起用法もうまい監督だと思いますが、とはいえ3人もいないとなると難しいですよね。
林
優勝を考えると足りないと思います。あと今季のトピックスは左ウイングのジェレミー・ドクですよ。
下田
「独特」だからね(笑)。
林
外だけじゃなくて、内側でも独特にプレーできるようになりました、これもペップのおかげだと思います。そして最前線にはアーリング・ハーランドというモンスターもいる。ケガ人こそ増えていますが、アーセナルを追っていくとすればシティですよね。
下田
それは同感です。ちゃんと積まれている感じなのがすごいなと思います。
【予想できなかったリバプールの悩み】
林
続いてはリバプールです。
下田
現在の状況は予想していましたか?
林
いや、予想できないでしょう(笑)。
下田
後出しっぽくて申し訳ないですけど、開幕から7連勝とずっと勝っていたじゃないですか。でも、劇的に勝ちすぎていたので「これ怪しくないのかな?」と思っていました。土俵際でギリギリ勝っていましたけど、危うさは感じていました。
林
確かにゲーム内容は良くなかったですよね。結果が出ていたので、その部分はあまり見えていなかったですが、両サイドバックや中盤、前線にジェレミー・フリンポンやフロリアン・ビルツ、ウーゴ・エキティケらを加えたなかで、アルネ・スロット監督には迷いがあったと思います。
下田
悩んでいるように見えますか?
林
柔軟性と流動性がカギだった昨季のチャンピオンズリーグ(CL)王者パリ・サンジェルマンに近いレベルのチームにしたいのかなと思いました。ただ、それがうまくいかなかったです。
下田
一気にメンバーを変えすぎたのもありますよね。
林
あそこまで大金を使って選手を獲得した場合は、変えざるを得ないと思います。逆に選手を獲得しすぎて難しくなったように見えますね。
下田
僕はユルゲン・クロップ政権からスロット1年目まで主力だったトレント・アレクサンダー=アーノルド(現レアル・マドリード)とルイス・ディアス(現バイエルン)が退団した穴の大きさを感じています。ゲームによってはこのふたりで勝利が決まることもあるほどの存在感でした。
林
その代わりになるような選手プラスアルファという意図で選手を組んだと思いますが、難しかったですね。アレクサンダー=アーノルドがいなくなったことによってモハメド・サラーも影響を受けましたし、ルイス・ディアスがいなくなったことで左ウイングがコーディ・ガクポしかいなくなりました。
下田
これも痛いですよね。変化があまりつかないですもんね。
林
現時点でリバプールは首位と勝ち点を大きく離されているので優勝は厳しいと思います。ただ、CL圏内は可能な位置なので、ここからスロットがどのように立て直すのか見ていきたいです。
>>後編「チェルシー、マンチェスター・ユナイテッド、トッテナム&日本人選手をチェック」につづく
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