青山学院大「黒田朝日の衝撃走」への布石は飯田翔大が「花の2区」で打ち込んでいた

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青山学院大「黒田朝日の衝撃走」への布石は飯田翔大が「花の2区」で打ち込んでいた

1月16日(金) 7:05

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花の2区で順位を5つ上げた青学大・飯田翔大 photo by SportsPressJP/AFLO

花の2区で順位を5つ上げた青学大・飯田翔大 photo by SportsPressJP/AFLO





第102回箱根駅伝を大会新記録で制し、2度目の3連覇を成し遂げた青山学院大。5区・黒田朝日(4年)の歴史に残る走りのインパクトは凄まじかったが、その黒田が当初、務めると見られていた花の2区に起用されたのが飯田翔大(2年)だった。

区間順位こそ10位だったが、チーム順位を5つ上げる走りを見せた飯田はいかに大エース・黒田に代わり、エース区間の役割を果たしたのか。そこに至るまでの歩みも含めて、振り返る。

【「5区・黒田」構想を実現したMARCH対抗戦の快走】今年の箱根駅伝で青山学院大は10時間37分34秒の大会新記録を打ち立て、史上初となる2度目の3連覇を果たした。レース前は混戦予想も、蓋を開けてみれば、青学大が往路、復路、総合の完全優勝。2位の國學院大に2分30秒以上の大差をつける圧勝だった。

その最大の功労者は、5区で驚異的な走りを見せた"シン・山の神"こと黒田朝日であることに異論はないだろう。

黒田は過去2大会、各校のエース格が集う2区で好走しており、今回も2区が最有力と見られていた。

「黒田は1年生の時から山上り候補でしたが、1年生の時は故障で(起用できず)、2、3年の時は若林(宏樹)がいましたので2区で起用しました。4年目はシーズン当初から黒田の起用も考えてはいましたが、やはり駅伝には流れがあるので、ほかの選手の成長が見られない場合には2区しかないと思っていました」

原晋監督も『5区・黒田』というプランを思い描きながらも、チーム状況を鑑みて、3年連続の2区起用に傾きつつあったようだ。

ところが、チームの課題だった"ほかの選手の成長"があった。それが顕著に見られたのが11月22日に開催されたMARCH対抗戦2025だった。このレースでも黒田は圧巻の走りを披露し、10000mで27分37秒62という青学大記録を打ち立てた。そのほかにも、2年生の折田壮太が初の10000mで27分43秒92と黒田に次ぐ好タイムで走り、宇田川瞬矢(4年)、飯田翔大(2年)、佐藤愛斗(2年)も27分台の自己ベストをマークした。

「MARCH対抗戦での27分台、12月の最終選抜強化合宿と来て、10日前からのみんなの状態を見極めた時に、黒田を5区に回しても、2、3、4区で大きく引き離されることなくレースが進められると思いました」

最終決定は10日前あたりだったという。このようにして、原監督がかねてより温めてきた『5区・黒田』が実現した。

その黒田に代わって、花の2区を任されたのが2年の飯田だった。

【1年目の悔しさを糧に成長】1年目は、3つの大学駅伝で出走はおろか、エントリーメンバーに入ることさえも叶わなかった。

「5000mの持ちタイムが2番手で入学して、すぐに国際大会(U20アジア選手権)にも出場し、三大駅伝は走れるだろうと考えていたのに、1年目はひとつもエントリーできませんでした。全日本(大学駅伝)を折田が走り、箱根では小河原(陽琉)が区間賞。同期のそういう姿は、チームメイトとしてうれしいことでしたが、自分としてはやっぱり悔しかった。まだそこの舞台に立てていない自分、ケガをしてしまっている自分に腹が立ったというか、もどかしい気持ちでいっぱいでした」

飯田は1年目をこう振り返る。実力者ぞろいの2年生世代のなかでも、国体3位など輝かしい実績を引っさげて入学しながら、ルーキーイヤーには悔しさばかりを残した。

その悔しさを糧に、前回の箱根後から存在感を示し始めた。昨年2月は、宮古島大学駅伝で6区区間賞の活躍を見せ、鹿島祐徳ロードレースでは優勝を飾った。

「2月のハーフマラソンや駅伝でしっかり走れたことが自信につながりました。2年目になったタイミングで、今年は絶対に主力でやっていけるっていう自信があったので、練習でもプラスアルファで自分なりにアレンジを加えるなどしてきました」

新年度を迎えても好調をキープし、5000mでは国内最高峰の日本選手権にも出場を果たした。

そして、秋を迎え、まずは出雲駅伝で出番を勝ち取った。任されたのは、留学生も多く起用される3区だった。しかし、大学三大駅伝デビュー戦で、辛酸を舐めることになる。

2区の折田が苦戦し11位でタスキを受け取ると、飯田も区間10位と力を発揮できなかった。その後、5区の塩出翔太、6区の黒田が連続区間賞と4年生が意地を見せたが、チームは7位に終わった。「自分のところで優勝を見えなくしてしまい、とても悔しい思いをした」と振り返る。

ただ、今季培ってきた実力は確かなものだ。飯田はすぐさま挽回し、全日本大学駅伝では6区区間賞と活躍した。その後もMARCH対抗戦で27分台と快走し、初めての箱根駅伝では2区の大役を任された。

【心の準備はできていた】2区を言い渡されたのは2〜3週間前だったが、自身のなかではすでにその心づもりはできていた。「急に言われて焦る気持ちはあまりなかった」と飯田は言いきる。

想定外だったのは、1区の小河原の走りだった。本来1区を予定していた荒巻朋熙(4年)が直前に胃腸炎になり、4区予定の小河原が急遽コンバートされた。それでも「小河原は調子がよかったので、区間賞近くで来るかなと思っていた」と飯田は言う。ところが、第2集団でレースを進めていた小河原は15kmを前に遅れをとってしまう。

飯田が小河原からタスキを受け取ったのは、先頭から1分19秒差の16位だった。

「想定より大きく遅れてきて、難しいレースになった」。それでも、飯田は落ち着いていた。難所の権太坂まではペースを抑えて走りつつも着実に順位を上げ、目安にしていた権太坂を越えると一気にペースアップした。そして、区間10位ながら、設定タイムだった1時間07分00秒〜30秒を大きく上回る1時間06分29秒で走りきり、5つ順位を上げる活躍を見せた。権太坂の定点(15.2km)から戸塚中継所までの約8kmは、区間賞のヴィクター・キムタイ(城西大4年)に次いで、全21人中2番目の速さだった。

1区で出遅れながらも、飯田が悪い流れにはまることなく走りきったのは大きかった。今回は"しのぐ"2区になったかもしれないが、飯田が踏ん張ったからこそ、5区での逆転劇が生まれたと見ることもできるだろう。

今回の箱根駅伝で原監督は『輝け大作戦』を発令したが、10月の出雲駅伝には『ばけばけ大作戦』を掲げて臨んだ。

この作戦名は、島根県を舞台とした連続テレビ小説『ばけばけ』にちなんだものだったが、飯田や折田ら若い力が「どう化けるかを期待していた」うえで命名した作戦でもあった。

今回の箱根駅伝では、2区の飯田だけでなく、6区の石川浩輝(1年)と7区の佐藤愛斗(2年)が区間3位、アンカーの折田が区間2位と、次代を担う若い戦力が躍動した。出雲で味わった"悔しさ"は、箱根で見事に"歓喜"に化けた。そればかりか、下級生が来季につながる活躍を見せた。出雲で不発だった『ばけばけ大作戦』は、2カ月半の時を経て成功裡に終わったと言っていい。

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