両さん、ハマちゃんに学ぶ「欠点も含めて愛される中年男性」の条件。歴史・カルチャーに学ぶ“推され力”とは

共演者にもらったラブブと自身のVTuberキャラのアクスタを持つ吉田氏

両さん、ハマちゃんに学ぶ「欠点も含めて愛される中年男性」の条件。歴史・カルチャーに学ぶ“推され力”とは

1月15日(木) 15:52

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成果や肩書きだけでは人はついてこない――。実は日本社会では古代から、「推される人」こそが中心に立ってきたという。歴史上の英雄から人気漫画の名キャラクターまで、時代や分野を超えて支持を集める存在には共通点がある。なぜ日本では“推されない人”は権力者になれないのか。歴史とポップカルチャーを横断しながら、“推しオジ”という視点で日本人のリーダー像をひもとく。

日本をつくりあげているのは“推しオジ”たち

“推しオジ”が組織の中心となる構図は今に始まったことではない。古今東西、さらにはポップカルチャーに至るまで、日本をつくりあげているのは“推しオジ”たちなのだ。日本の歴史上の人物に実例を見いだすのは、明治天皇の玄孫で、'24年に上梓した『国史教科書』(令和書籍)がベストセラーとなった作家の竹田恒泰氏。

「日本の歴史上、功成り名を遂げた傑物は、ほぼ全員が周囲から推されて権力や地位を得ている。つまり、“推しオジ”ばかり(笑)。一方、欧州や中国では戦争に勝った者が新しい王朝を立て、権力者となってきた。会社員に置き換えれば、『オレが!オレが!』と実績を上げ、競争に勝った人が出世するようなもの。さかのぼれば日本では、初代の神武天皇が日本人同士が争い、殺し合っていたのをやめさせて、一つの家族のようにまとめようと日本を建国した。古代から戦争で功績を上げたというだけで人々の信認を得られる文化は、日本にはないのです」

日本では推されないと権力者になれない!?

こうした推しの文化や思想は、武家政権になっても変わらなかったという。

「日本では天皇に信認されて初めて国民の納得が得られ、『やっぱりこの人がリーダーだよね』と推されることができる。確かに、戦に強いのは武家が権力者になる大きな条件の一つですが、天皇に認められ、国民から推されないことには政権を取れない。だから、天皇を倒すための戦争は一度も起きなかった」

武将たちが武勲を競い合い、下克上によって地位を上げた群雄割拠の戦国時代でも日本特有の推し文化が揺らぐことはなかった。

「独裁者のイメージが強い織田信長でさえ自分の力だけでのし上がったのではなく、正親町天皇が引き上げた側面も強い。室町幕府が衰退し、足利将軍への信認が失墜するなか、久しぶりに天皇が目をかけたのが信長だった。それは、信長に『この男、何かしそう』という期待感や空気感があったから。この特徴は、豊臣秀吉、徳川家康にも共通する。歴史に学べば、“推しオジ”になる第1の条件は、実績や数字より、何かやってくれそうな空気感を纏うことです」

武将の特質から導いた“推しオジ”の条件

竹田氏は、3人の武将に共通する特質から導いた“推しオジ”の条件をこう続ける。

「3人は、いざとなれば命を差し出してでも主君を守る臣下を持っていた。現代の政界やビジネスの場合でも『この人についていってダメならしょうがない』と慕う仲間や部下がいる人は強い。かつて、二階堂進官房長官は『趣味は田中角栄』と激推しを公言していた。ただ、推される側の田中首相の政治姿勢もブレることがなかった。ブレるリーダーにはブレる仲間しか集まらない。第2の“推しオジ”の条件は、ブレないことでしょう」

3人の武将に通じる「推される力」はまだまだある。

「信長は強引でイキっているように見えて、抜け目なく落としどころをつくっている。戦った多くの戦国武将と的確に和睦しており、特に徳川家康とは清きよ州す 同盟で和睦したからこそ、天下人に上り詰めた。“推しオジ”の第3の条件は、引き際をわきまえること。また、3人は家臣の働きをよく見ていた。信長は桶狭間の戦いに勝った際、第一の恩賞を敵将・今川義元の首を取った武士ではなく、義元の居場所を知らせた野武士上がりの臣下に取らせている。第4の条件は、部下をよく見ていることでしょう。ただし、現代の会社ではよく見すぎるとハラスメントになります(苦笑)」

3武将から学ぶ推しオジの流儀

一つ、何かやってくれそうな空気感

二つ、ブレないこと

三つ、引き際をわきまえる

四つ、部下をよく見ている



漫画キャラは心情がわかるから推される

推しオジになるヒントは漫画の登場人物からも得られる。

「世の多くのオジさんは『オレと距離を取れ』という態度が多いですが、推しオジになる初手は、アイドルのように『好きになってOK』というサインを発信することです」

そう話すのは、筋金入りのアイドルファンとして知られ、東京大学大学院で推し活研究をするニッポン放送アナウンサーの吉田尚記氏。「マンガ大賞」発起人でもある彼に推しオジ的なキャラを尋ねると、「『孤独のグルメ』の井之頭五郎でしょうね」と即答した。

「ただし、五郎は漫画だから“推しオジ”になり得ています。黙食で言葉を発さないのに、漫画では心の中がすべて明らかになっているから推されるのです。自分の気持ちや思いを発信しない人が好かれることはない。だから、推しオジになるには自分の心情を表現することが必須なんです」

その表現として、吉田氏はラブブ(人気のぬいぐるみ)を鞄につけているという。

「共演者のアイドルの女のコから面白いからと渡されてつけているのですが、ラブブを持ち歩いていると、『なんで?』と聞かれるので、接点を持つきっかけになる。だから好きなアニメやアイドルがいるなら、会社のデスクにアクリルスタンドを置いてみましょう。『好き』を勝手にアピールしてくれます」

肝心なのは、あくまで「好きなもの」をアピールすることだ。

「オジさんは何かを表現するときに『○○が嫌い』と言いがちですが、それはNGワード。そもそも好きとは不合理な感情で、何かを好きな状態の人には隙ができます。そして、隙がない人は好かれません。なぜなら、その人に隙間がなければ、推したい人が入っていく余地がないからです」

レジェンド級の推しオジキャラの共通点

また、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の両さんや、『釣りバカ日誌』のハマちゃんなどレジェンド級の推しオジキャラには、「アイツだからしょうがない」と思わせるという共通点があるという。

「あれぞまさに、『欠点も含めて愛される』という推しの最終形態です。他の人がやったら問題だけど免罪される。なぜそうなるのかと言うと、ラクをするだけでなく何かしらの犠牲を払っているから。両さんはお金にはすごく汚いのに女性の扱いがすごくきれいだし、ハマちゃんも釣りのために仕事をサボるけど、人情家で愛妻家。だから彼らは欠点も含めて推されるのです」

吉田氏によると「推しとモテは違い、能力やスペックが問われることは稀」だという。

「むしろ、『あの欠点もいいよね』と思われているのが、推されている状態です。だから、欠点を隠さずに、むしろ武器にすべき。足が臭いのが悩みなら、『俺、めっちゃ消臭スプレー使ってるよ』くらい言ったほうがいいんです」

歴史と漫画キャラに学び、推しオジを目指すべし。

【作家・評論家 竹田恒泰氏】
皇學館大学非常勤講師。'06年、『語られなかった皇族たちの真実』(小学館)で山本七平賞受賞。'21年、正論新風賞受賞。著書多数

【ニッポン放送アナウンサー 吉田尚記氏】
漫画、アニメ、アイドルに精通し、VTuberとしても活動。'25年より東京大学大学院で「推し活とウェルビーイング」について研究中

※週刊SPA!1月13日・20日合併号より

取材・文/週刊SPA!編集部イラスト/サダ



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