人民元が対円で32年ぶりの高値を記録するなか、中国国内で“元から円への逆回転”とも言うべき資金還流が起きている。それもアニメの聖地・秋葉原でだ。中国人転売ヤーによるポケカを使った最新マネーロンダリングの実態に迫った!
中国人転売ヤーが明かした儲けのスキームとは!?
JR秋葉原駅から徒歩数分の場所に、トレーディングカード買い取り専門店が複数入居する通称「トレカビル」がある。ポケモンカード(ポケカ)や遊戯王カードを中心に、国内外のコレクターが集まる二次流通の聖地だ。
「トレカ市場は日本国内にとどまらず、全世界のファンがレアカードを買い漁るバブル状態です。'24年度の市場規模は3000億円を突破。秋葉原や池袋に売買ができるカードショップが立ち並び、実は客層の8割を外国人が占めています。お客さんはいろんな国から来ますが、近年は特に中国人転売ヤーの参入が目立ちますね」(カードショップ関係者)
なかでも目玉となるのが、「PSA10」なる認証を受けたポケカだ。これは第三者機関が真贋と保存状態を評価し、最高位の10をつけたもの。いわば“本物の中の本物”だ。
店頭にはPSA鑑定10を受けたピカチュウのレアカードが200万円超えで並ぶこともあり、その過熱ぶりがうかがえる。そんな秋葉原に今、巨額の投機マネーが流れ込んでいるというのだ。
「人民元を外貨に替えたい」中国人の切実な懐事情
カードショップの開店間近になると、トレカビルの前にはどこからともなく紙袋を抱えた中国人たちが集まる。中国人転売ヤーだ。
「その日の買い取り価格を開店とともに張り出すので、それを見ながら手元にあるカードを現金化するのが彼らの目的です。中国人転売ヤーたちは動員力にものをいわせて集めたポケカを淡々と換金して、円を稼いでいる。1人当たり一日、数十万~100万円くらいの印象ですが、複数グループが毎日のようにやってきます」(前出の関係者)
注目すべきは、彼らが集めたポケカを「日本円に替えている」点だ。
12月のある休日、トレカビルに並んでいた転売屋ヤーの1人に中国語で話しかけてみると、商売のカラクリが見えてきた。
「我々は単純な転売で利ザヤを抜いているのではありません。中国本土では今、『人民元を外貨に替えたい』というニーズが急速に高まっています。その手段として、ポケカを利用しているのです。値崩れが起きず、また将来の価格高騰が見込めるので、仕入れたら価格が上がるまで待つのもいいのだけれど、今、中国から来るオファーは元を円に替える手数料ビジネス。このほうが効率よく儲けられます。我々の倉庫にはPSA10のレアカードが山積みで保管されてますよ」
「人民元はゲームセンターのメダルと同等」?
彼らのコレクションを写真で見せてもらった。たしかに200万円はする人気キャラクターのリーリエを筆頭に、古いカードのPSA10などマニア垂涎のポケカがズラリ。
これを寝かせておくだけでも、相当な利益が見込めるはずなのだが、なぜ現金化を急ぐのだろうか。中国に詳しいジャーナリストの周来友氏はこう語る。
「中国でいくらカネを持っていたって、それはゲームセンターのメダルのようなもの。いつ政府に没収されるかわからず、『手元にあるうちに中国国外に逃がしたい』と考える富裕層はとても多い。私財没収が法律で認められている中国では、ある日突然、資産を取り上げられるなんてことは実際に起きていますから。かつては深圳の印刷所から香港に輸出される出版物に現金を紛れ込ませたり、ゴールドをハンドキャリーで運ぶ手法が取られてきましたが、今その役割をポケカが果たしているということ。中国人は人民元よりポケカを信じていると言ってもいい」
たしかに中国は資本規制を敷いており、個人の外貨購入額を年間5万ドルに制限している。
違反者には高額なペナルティや禁固刑が科されるともいうが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の試算によると、'24年6月までの第4四半期で40兆円近い人民元が中国から違法に流出したという推計もある。
世界中に大量流出する人民元マネーのカラクリ
フリーライターの奥窪優木氏がカラクリを解説する。
「中国で発行されたクレジットカードを使い、日本でポケカを大量購入する。そして、日本や第三国で売却すれば、カード決済は人民元建て、売却益は海外に残る。つまり、資産の逃避が可能となります。これを中国にいる金主の要請を受けた地下銀行と転売ヤーが密に協力しながら二人三脚でこなし、人民元を円に替えているのです。金主が支払う手数料は10~15%ほどでしょうが、今の中国ならそれでもやりたいという人は多いのでは。そもそも、この方法は高級時計やハイブランドのバッグでも実践されてきましたが、保管や輸送にコストがかからず、売値と買値のスプレッドが3~4%ほどのポケカはそれよりも適している。実に理にかなった商売ですね」
日本から見て問題がないわけではない。奥窪氏が指摘する問題は根深い。
「'25年8月、ポケカはマクドナルドとコラボしましたが、中国人転売ヤーが殺到。カードだけ抜きとられて食品が大量に破棄されていました。日本の経済活動に寄与しているかといえば微妙です。中には資金力にものを言わせ、特定のカードを買い集めて価格をつり上げてから売却するなんて荒業を使うグループもいるようですし、既存のファンからしても迷惑な存在では」
本来の目的から逸脱したところで売買されるポケカたち。この不健全なブームが収まる兆しは、今のところない。
【ジャーナリスト・周来友氏】
1963年、中国生まれ。私費留学生として来日し、1995年に東京学芸大学大学院卒業。司法通訳を務めるいっぽう、タレントとしても活躍
【フリーライター・奥窪優木氏】
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒業。日本の裏社会事情や転売ヤー組織を取材。『転売ヤー闇の経済学』など著書多数
取材・文・撮影/週刊SPA!編集部
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