『孤独のグルメ』原作者で、弁当大好きな久住昌之が「人生最後に食べたい弁当」を追い求めるグルメエッセイ。今回『孤独のファイナル弁当』として取り上げるのは『調理パン弁当』。果たして、お味はいかに?孤独のファイナル弁当vol.12「今日は調理パン弁当にしてみよう」
ボクは中学時代、まだ給食がなくて弁当だった。家の事情で弁当が作れなかった人のために、毎朝パンの注文があった。紙袋に「卵サンド」とか「カレーパン」とか品名が印刷されていて、欲しいパンに個数を書き入れ、合計金額を入れる。お昼にそのパンが袋に詰められて、教室に届くのだ。
ボクは弁当が好きだったから、ほとんどパンは買わなかった。でも友達の中には、親からもらったパン代を使わず、全部フトコロに入れるヤツらもいた。彼らは昼食抜きだから当然腹ペコになる。そこでいろんな生徒に弁当を少しずつもらっていた。それを「コジキ」と呼んでいた。おおらかな時代だった、と思ってください。そのカネはゲームセンターや、一枚400円だったレコードのシングル盤を買うのに使われていたな。
そんなことを思い出すパン弁当だ。
今日のパン屋は奥に工場があり、何を食べてもおいしい。たまに来るとつい買いすぎる。だがもう午後4時だったので、多くのパンは売り切れていた。でも焼きそばパンが一個だけ残っていた。慌ててトレイに手づかみでのせる。空いてるんだから慌てなくてよい。トング使え。
カレーパンもあった。これは思わず取ろうとして、思いとどまった。焼きそばパンにカレーパンて、コドモじゃん。少し考えようよ、オトナとして。一応ファイナル弁当なんだから。最後の一食が焼きそばパンとカレーパンって。バカっぽいじゃん。でも焼きそばパンはもうトレイの上だ。誰も見てないと思うが、棚に戻すのは反則だ。
なら追加は何にする。ふとお惣菜に目がいった。パンなしのお惣菜単独もの。ポテトサラダなどの他に「とうもろこし揚げ」が残っていた。とうもろこしのかき揚げは好きだ。これは天ぷらではないがフライものだ。小さいのが4本。スタイリッシュだ(そうか?)。買おう。
もうひとつパンが欲しい。残品少なく、かなり迷った。アンパンマンの顔のパン、何度も喉から手が出たが引っ込めたことを告白する。それはウケ狙いだろう。自意識過剰か?でも軽すぎ甘すぎだ。
で、結局食べたことがないトマトの薄切りが並んだピザパンみたいなのを買った。チャレンジ。飲み物は無糖のカフェオレ。
夜、仕事場で食べた。トマトピザパン当たり。すっごくうまかった!パン生地がもっちりとしていて、うっすらチーズにトマトの酸味、そこにオリーブの実とハーブが効いてる!白ワイン欲しい。焼きそばパンも麺の中にキャベツ・もやし・ハムが入っていて、紅生姜がなくても大丈夫。充実の食べ応えの立派な焼きそばパンだった。
とうもろこし揚げ、食べたら全然スタイリッシュでなく、ふにゃぐにゃだった。2本残して持って帰る。酒の肴にはいいだろう。
【久住昌之】
1958年、東京都出身。漫画家・音楽家。代表作に『孤独のグルメ』(作画・谷口ジロー)、『花のズボラ飯』(作画・水沢悦子)など。Xアカウント:@qusumi
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