【写真】EXO・スホの“逆”ポッサムから始まるエンタメ傑作「世子<セジャ>が消えた」
ヒット作「ポッサム〜愛と運命を盗んだ男〜」の脚本家チームが再集結したことで放送前から大きな注目を集めた韓国ドラマ「世子<セジャ>が消えた」。1月7日(水)にはDVD-BOXの第2巻が発売される。時代劇特有の様式美を守りつつ、現代的なスピード感を備えた構成とEXOのリーダー・スホの魅力をとことん押し出した同作。その多層的な構成の妙と俳優陣の熱演によって生み出された丁寧な世界観、そして複雑に絡み合う息もつかせぬ人間ドラマの深層を考察していく。
■斬新な設定の裏に隠された緻密なミステリーと人間群像
同作は主演にEXOのリーダー・スホ、ヒロイン役に「PRODUCE48」「2037」で知られているホン・イェジを起用。さらに「ポッサム〜愛と運命を盗んだ男〜」の脚本チームが“逆ポッサム”を物語のフックに仕込むなど、キャッチーなテーマが散りばめられている。
ポッサムとは再婚が許されない当時、未亡人を誘拐することで再婚するという風習を指す。基本的に男性が女性を…というパターンなのだが、今回は男、それも勘違いから次期王である世子(セジャ)がポッサムされてしまう。
ここまでであればコメディーチックなラブコメっぷりを想像するのが普通だが、同作はただのラブコメには収まらない。世子であるイ・ゴン(スホ)を拉致したのは、チェ・ミョンユン(ホン・イェジ)の父チェ・サンロクが手配した者たち。それは世子ビン(世子の嫁)候補であるチェ・ミョンユンが背負った「夫を亡くす」という、過酷な宿命を回避させるためだった。
形だけの婚姻を済ませることで、「夫を亡くす」という宿命を誤魔化そうとする父。だがそのせいで誘拐されてきた男が死ぬかもしれないと知ったチェ・ミョンユンは、その男が誰かを知らないまま逃がすことを決意する。相手が世子であることも、世子ビンであることも知らない2人の出会いだ。
驚きの縁で出会った2人だったが、イ・ゴンが現王より権威を持つ大妃ミン氏の不貞という禁忌を見てしまったことで物語は予測不能なミステリーへと変貌を遂げる。誰が味方で誰が敵かわからない疑心暗鬼の状況下で、イ・ゴンは自らの生存と正義を懸けて見えない巨大な敵と対峙していく。
複層的に積み上げられた謎解きの要素と、それぞれの登場人物が抱える切実な事情が複雑に絡み合う構成。単なるラブコメでも、単なる難解なミステリーでもない。同作が老若男女の興味を惹く理由は、こうした“エンタメ全部盛り”が理由だ。
■「30代の自分を投影した」と語るスホが到達した新境地
時代劇初主演となったスホ(EXO)は、本作において俳優としての圧倒的な存在感を証明した。彼が演じる世子イ・ゴンは一見するとお気楽で茶目っ気たっぷりな人物だが、内面には強い正義感と鋭い知性を秘めている。
スホは動画インタビューで、本作を「30代になる今まで生きてきて、僕の人生が込められた作品です」とコメント。彼は以前の活動で培った端正なイメージを崩すことなく、過酷な運命に翻弄されながらも高潔さを失わない世子イ・ゴンの姿を見事に作り上げた。
特に後半、自らの地位を捨ててでも愛と正義を貫こうとするゴンの姿には、これまでにないたくましさと憂いが同居している。命を狙われる緊迫したシーンで見せる鋭い眼差しと、愛する女性を見守る際の柔らかな表情のギャップ。30代になるまでに培ったドラマ・映画・舞台での演技経験をフルに活かしきった、魂を感じる好演が光る。
今作におけるスホの魅力は、単なるビジュアルの美しさだけではない。彼は王宮という巨大な権力構造のなか、イ・ゴンという役を通してさまざまな問いを投げかけてくれる。世子という栄光が約束された身分にありながら、不正を知って立ち上がる理由は幼い義侠心ではない。“国を背負う者”としての強い正義心からということが、大けがを負ってなおわずかにもブレない姿勢からひしひし伝わってくる。そんなイ・ゴンの真っすぐさを、眼差しと表情で表現しきったのがスホだ。
さまざまな挑戦を繰り返してきたスホ。イ・ゴンに彼の30年が詰まっている…という表現も納得の役どころと言えるだろう。
■愛と忠義の狭間で揺れる3人の宿命と複雑なミステリー
物語の焦点となるのは主人公イ・ゴン、ヒロインのチェ・ミョンユンが立ち向かう巨大な陰謀だ。権力を持つミン氏の不貞に隠された背景も含め、誰が敵か味方かわからない非常に複雑な人間関係がストーリーを盛り上げる。
そしてもう1つ、イ・ゴンの異母弟であるトソン大君(キム・ミンギュ)がチェ・ミョンユンを慕うことで織りなされる切ない関係性。これもまた、同作の根幹に関わる大きな鍵だ。
イ・ゴンとチェ・ミョンユンはお互いを誰とも知らないまま縁を持ち、慕いあうことになる。だがトソン大君はチェ・ミョンユンが世子ビンと知り、“兄を取り除いて王になればチェ・ミョンユンと一緒になれる”という誘惑を受けてしまう。兄弟が想い合う絆を利用する宮廷の権力闘争。残酷で切ない運命が翻弄するのは、イ・ゴンやチェ・ミョンユンだけではない。
家族の罪や身分の壁、宿命と誰かの陰謀。多くの要素が混然一体となった“単純ではない問題”に対して、何を基準に選択するのか。同ドラマが訴えかけてくるのは一面的なエンタメ体験ではなく、人間の“強さ”がどこから来るのかという深い問いだ。
同ドラマのDVD-BOXは全2巻で、2025年12月に発売された1巻に続いて1月7日(水)に最終第2巻が発売。第1巻には特典として台本リーディング映像、ポスター撮影映像、スホのインタビュー映像が収録されていたが、第2巻には未公開ビハインド映像とエンディングビハインド映像が納められているという。世界観により深く入り込める、ファンにはたまらない映像特典と言えるだろう。
スホの魅力、兄弟愛、恋愛、宮廷の権力劇、味方が敵になる疑心暗鬼…すべてが詰め込まれた、まさに「エンタメ全部盛り」の同作。全20話に凝縮された濃密な物語は、何度見返しても新しい発見を味わえるはずだ。
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