ラグジュアリー界の巨人が所有していた、特別なフォード・サンダーバードがオークションに登場

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ラグジュアリー界の巨人が所有していた、特別なフォード・サンダーバードがオークションに登場

1月8日(木) 12:11

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「ベルナール・フォルナス」という名前を聞いてピンと来る人は、ラグジュアリィ・ビジネスに精通している。2002年から2013年まで、世界屈指の宝飾・時計ブランド、カルティエ・インターナショナルの社長兼CEOを務め、同時にリシュモングループの共同CEOとして手腕を振るった人物である。

【画像】内外装どこを見ても新車のよう!美しくレストアされた、サンダーバードF-コード(写真17点)

しかし、フォルナス氏のもうひとつの顔を知る者は少ない。

同氏は40年以上にわたって自動車を収集し続けてきた、筋金入りのクラシックカーコレクターとしての顔を持っていたのだ。幼少期、モロッコで父親のアルファロメオやアメリカ車に乗せてもらった記憶が、彼のクルマ愛の原点となった。

1984年、クラシックカーがまだ今日ほど評価されていなかった時代、彼はジャガーXK150クーペを購入。これが40年以上にわたるコレクションの始まりだった。そんなフォルナス氏が愛蔵してきた15台のコレクションが2025年、ボナムズが世界各地で開催するオークションで放出されることになった。

6月29日のスイス・ボンモントセール、8月15日のモントレー・カーウィークでのクエイルオークション、そして10月12日のベルギー・ズーテセール。ボナムズが満を持して企画したこの一連のセールには、1963年フェラーリ250GT/Lルッソ、1964年アストンマーティンDB5コンバーチブル、2010年フェラーリ599GTOといった名車が並んだ。なかにはアラン・ドロンがかつて所有していた1975年レンジローバーも含まれていた。

ちょっと気になるのが8月のクエイルオークションに登場予定だった1957年式フォード・サンダーバードF-コードだ。オークション開催直前、出品が何らかの事情により取り消されたのだ。その後、10月のオードレイン・オークションでも、ズーテセールでも成約に至らず、1月22日から23日にかけて開催されるスコッツデールでの出品が決まった。なお、過去3回のオークションでの予想落札価格は23万ドル~26万ドルと表示されていた。

余談だがボナムスにとって今年初開催となるスコッツデールの出品車両、全車から予想落札価格が明示されなくなり「予想落札価格はお問合せください」となっている。入札に真剣な顧客情報の収集、そして囲い込みを図ろうとしているのだろうか?

話をサンダーバードF-コードに戻そう。

サンダーバードF-コードは総生産台数わずか196台という希少性もさることながら、その存在意義が特別だ。フォードが同モデルを生み出した理由は、NASCARレース参戦のためのホモロゲーション取得(VINナンバーが”F”から始まるので”F-コード”と呼ばれ、エンスーには”F-バード”とも呼ばれる)。つまり、これは公道を走れるレーシングカーなのだ。

パワートレーンは312立方インチ(5.1リッター)のY-ブロックV8エンジンに、マクロック/パクストン製の遠心式スーパーチャージャーを装着。公称300馬力だが、実際には360馬力程度を発揮していたとの説もある。1950年代において、14秒台でゼロヨンを駆け抜ける性能は前代未聞だった。当時のライバル、シボレー・コルベットの燃料噴射仕様さえ置き去りにする加速性能を誇った。

1957年のデイトナ・スピードウィークでは、フェーズIと呼ばれる15台の競技仕様F-コードのうち1台が、アメリカンスポーツカーの新記録となる138.755mph(約223km/h)を叩き出している。これは、前年にコルベットが打ち立てた記録を6mph上回る数値だった。

フォルナス氏のサンダーバードが纏うのは漆黒のレイヴン・ブラック。全196台が生産されたF-コードのうち、このボディカラーを選んだオーナーは56名に過ぎない。そして当該車両の真価は、そのコンディションだ。出品カタログの写真を見れば一目瞭然だが、内外装どこを見ても「新車」と言われても疑わないレベルなのだ。

テキサス州ダラスを拠点とするサンダーバード界のマエストロ、エイモス・ミンターとその息子ジャスティンの手によるフルレストアが施されている(フルレストア後、1000マイルしか走行していない)。このミンター親子は1955年〜1957年の2シーターサンダーバード専門のレストアラーとして知られ、二世代にわたってこのモデル”だけ”に人生を捧げてきた職人たちである。

当該車両にはもう一つの付加価値がある。前オーナーにレーシング界のレジェンド、ジャック・ルーシュの名が刻まれていることだ。ルーシュ・パフォーマンスの創業者であり、フォードのモータースポーツ活動において数え切れないほどの勝利とチャンピオンシップをもたらした人物である。

サンダーバードF-コードを含む今回のコレクション放出について、フォルナス氏本人からの公式コメントはない。2013年にカルティエとリシュモングループの経営から退いた後も、彼は世界中のコンクール・デレガンスやオークションに姿を見せ続けてきた。しかし、15台という規模でのコレクション放出は、人生の節目を感じさせる。

自動車に限らずコレクターによる終活は、新たなコレクターへ”バトンタッチ”する文化の新陳代謝なのかもしれない。


文:古賀貴司(自動車王国)Words: Takashi KOGA (carkingdom)
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