2026年で30歳を迎える横浜流星。『流浪の月』『正体』『国宝』…俳優として踏みしめてきたその軌跡をたどる

横浜が、上方歌舞伎の名門に生まれた大垣俊介に扮した『国宝』/[c]吉田修一/朝日新聞出版[c]2025映画「国宝」製作委員会

2026年で30歳を迎える横浜流星。『流浪の月』『正体』『国宝』…俳優として踏みしめてきたその軌跡をたどる

1月2日(金) 8:30

数々の映画、ドラマで活躍し、ハードルの高い難役にも果敢に挑戦。20代という若さにして、名実共に実力派俳優へと成長し続けている横浜流星。特に今年は、NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」での主演抜擢、そしてメインで出演した『国宝』(公開中)は興行収入184.7億円を記録(2025年12月30日時点)し、邦画の実写作品の歴代最高興収を22年ぶりに更新するなど、出演作が社会現象を巻き起こした。そこで、2026年に30歳を迎える彼の俳優としての歩みを改めて振り返ってみたい。
【写真を見る】横浜と吉沢の演技も評判を呼び、国内実写映画の興行収入で歴代1位を記録した『国宝』

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■特撮や青春モノで着実にステップアップした活動初期

小学1年生から極真空手を始めた横浜は、小学6年生でスカウトされたことを機に芸能界入り。モデルの仕事をしながら空手の稽古を熱心に続け、中学3年生の時には世界大会で優勝している。空手はまず形を学び、それを徹底的に磨き上げ、組手では相手の動きを瞬時に察知し、間合いを見極めながら、自分の技を繰りだしていく。さらに大会という大舞台では審査員や観客が凝視するなかで、臆することなく実力を発揮する精神力も求められる。彼が心身共に空手の訓練で得たものが、俳優業でも役立っていることは想像に難くない。

2012年1月に放映された「仮面ライダーフォーゼ」でテレビドラマ初出演。吉沢亮が演じる朔田流星/仮面ライダーメテオの親友で稽古仲間の井石二郎役として登場した。強い朔田に追いつきたいあまり、人間を怪人へと強制進化させるスイッチに手を出し、昏睡状態に陥ってしまうという役どころも含め、のちに吉沢と『国宝』で共演することを思うと、まさに運命的なものを感じさせる。

高校生時代にレギュラーをとった特撮ヒーロー作品「烈車戦隊トッキュウジャー」では、空手をベースにした戦闘テクニックに長けるクールな青年ヒカリ/トッキュウ4号役で出演。1年間みっちり役と向き合うことになる戦隊ものでの経験が、のちの大きな糧となる。

4人組の人気ボーカルグループGReeeeN(現GRe4N BOYZ)のデビューまでの過程と名曲「キセキ」の誕生にまつわる秘話を描いた、兼重淳監督のヒット映画『キセキ −あの日のソビト−』(17)ではメンバーの1人であるナビを演じ、劇中で実際に歌声を披露。また、同じくメンバー役で共演した菅田将暉、成田凌、杉野遥亮の4人でユニット“グリーンボーイズ”を結成し、CDデビューも果たした。

活動初期の横浜にとって大きな出来事の一つは、のちに盟友ともいうべき関係となる藤井道人監督との出会いだろう。初タッグ作品は7人の若者のビターな青春群像劇『青の帰り道』(18)。彼が演じた不良青年リョウは、漠然と「いつかでかいことをやってやる!」と言うのが口癖で、地元から逃げるように上京してからはオレオレ詐欺に手を染めていく。劣等感を隠しながら強がる危うさと、誰よりも仲間思いで熱い性格のアンバランスさが印象的だった。

不良っぽいけれど内面はピュアなキャラクターでは、オーディションで役を勝ち取った2019年のドラマ「初めて恋をした日に読む話」で演じた不良高校生、由利匡平も当たり役に。髪をピンクに染めたド派手な見た目と真っ直ぐな思いを持つ性格とのギャップが魅力の由利。彼が東大受験を目指しつつ、アラサー塾講師の春見順子(深田恭子)に静かな恋心を抱いていく姿にキュンキュンする女子が急増。20代初期の大ブレイク作品となった。

■社会派作品で重厚な演技を魅せていく2022~2024年

20代半ばごろから、横浜は社会派ドラマの作品に数多く出演し、人間の暗部をにじませる、泥臭く生々しいキャラクターを立て続けに演じて、若手を代表する俳優としての地位を確かなものにしていく。『国宝』の李相日監督と初めて組んだ『流浪の月』(22)では、広瀬すず演じるヒロイン、家内更紗の恋人で上場企業に勤務するエリート会社員、中瀬亮役で出演。“誘拐事件の元被害女児”という更紗の過去を知ったあと、彼女への一途な愛情が支配、暴力へと激変する亮の狂気をはらんだ表情は観客を震撼させ、横浜は本作の演技で第46回日本アカデミー賞優秀助演男優賞、第47回報知映画賞助演男優賞を受賞した。

三木孝浩監督の『アキラとあきら』(22)は竹内涼真とのW主演作。金融業界を舞台に、竹内演じる零細工場の息子として育った山崎瑛と、横浜演じる大企業の御曹司として生まれた階堂彬の数十年にわたる波乱の人生が描かれる。同じ名前を持ちながら、正反対の境遇で育ち、出会うべくして出会った2人の熱い戦いと友情。陰のある御曹司役といい、ライバル同士の2人の関係性といい、どことなく『国宝』を彷彿とさせる作品だ。

藤井監督が手掛けた主演作『ヴィレッジ』(23)は、閉鎖的な日本の集落を舞台にしたヒューマンサスペンス。“殺人犯の息子”と周囲に疎まれ、ゴミ最終処分場で働きながら、母親が作った借金の返済に追われる鬱屈した青年、片山優はあまりに過酷な背景を背負った主人公。幼なじみの美咲(黒木華)との再会を機に別人のように自信を取り戻したのも束の間、その幸福が一瞬で崩れ落ち、破滅へと向かっていくまでの大きな変化が注目を浴びた。

『ヴィレッジ』とあわせて、横浜に第48回報知映画賞主演男優賞をもたらした作品が瀬々敬久監督の『春に散る』(23)。世界チャンピオンを目指す若手ボクサー、黒木翔吾役を演じるにあたり、横浜は本格的なボクシングの訓練を開始。日本ボクシングコミッションのプロテストを受け、C級のライセンスまで獲得した。劇中で見せた鬼気迫る数々のファイトシーンは、「役のためにやれることはすべてやる」という横浜のストイックな姿勢の結晶である。

藤井監督とのタッグ3本目の長編となる主演作『正体』(24)では、“5つの顔”を持つ逃亡犯という難しい役に挑戦。一家3人殺害の容疑で死刑判決を受けた鏑木慶一は、拘置所を脱走し、場所を変えながら潜伏を続けていく。ダークな役も数多く務めてきた横浜が演じたからこそ、鏑木が本当に殺人を犯したのかどうかのサスペンス性が一段と高まったことは間違いない。本作で横浜は第48回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞、第49回報知映画賞主演男優賞、第79回毎日映画コンクール主演俳優賞など数々の映画賞に輝いた。


■今年の顔とも言える躍進を果たした2025年

2025年は1月からNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」がスタートし、華々しい幕開けとなった。初めてのNHK、初めての時代劇映像作品にして、大河ドラマの主役に大抜擢。「烈車戦隊トッキュウジャー」から10年が経ち、横浜が再び1年以上かけて一つの役に向き合う作品に巡り会ったのだと思うと感慨深い。

現代で言うところの“メディア王”として波乱万丈の生涯を生きた蔦屋重三郎の姿を描く「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」

横浜が演じた主人公の“蔦重”こと蔦屋重三郎は、天下泰平の江戸時代中期に、出版プロデューサーとして当時のポップカルチャーを牽引した立役者。大河ドラマのなかでは痛快エンタテインメントの色合いが濃い作品なので、蔦重のキャラクターも明朗快活で人情味たっぷり。失敗してもへこたれないたくましさを持ち、世のため、人のためにとことん突っ走る姿は誰もが応援せずにはいられない。そんな愛すべき太陽のような庶民のヒーロー像は、横浜が近年の出演映画で演じてきた陰のある役柄とは正反対とも言える。横浜にこの役をオファーしたNHKのキャスティングセンスもさることながら、べらんめえ口調のチャキチャキの江戸っ子の蔦重を生き生きとまっすぐに演じきった横浜は本作でまたもや新境地を拓き、役者としての振り幅の広さを印象づけた。

主人公の3人と同じ出来事を経験し、当時の後悔を胸に抱いたまま生きる青年を横浜が演じた『片思い世界』

「べらぼう」が毎週放映されるなか、4月には『花束みたいな恋をした』(21)の監督、土井裕泰と脚本、坂元裕二のコンビによる『片思い世界』(25)が公開。本作で彼が演じたのは、子どものころに所属していた児童合唱クラブで無差別殺人事件が起こった際、たまたま外出していて現場にいなかったことに罪悪感を抱き続け、以来、優れた才能がありながらピアノを弾くことを封印している青年、高杉典真。彼は広瀬すず演じる相楽美咲の初恋の相手でもある。別の世界で生きている2人の心が通い合ったように感じられる終盤のシーンは感涙必至。広瀬との壮絶な関係性で強いインパクトを与えた『流浪の月』の亮とはまったく異なるキャラクターの彼が劇中で流す温かい涙は観客を優しく包み込み、深い余韻を残した。

横浜が、上方歌舞伎の名門に生まれた大垣俊介に扮した『国宝』

そして6月、2025年に最も話題となった邦画といえる、李相日監督の渾身作『国宝』が公開された。半年が経ったいまなお全国で上映中の本作は、任侠の一門に生まれ、女形の歌舞伎役者になった主人公の立花喜久雄(吉沢亮)が、歌舞伎名門の御曹司である大垣俊介(横浜)と切磋琢磨し、やがて人間国宝になるまでの50年を描いた壮大な一代記。光と影のように生い立ちも才能も異なる喜久雄と俊介の関係性に焦点を当てたストーリーで、吉沢と横浜は1年以上かけて、歌舞伎の所作や舞踊の稽古に励んだ。相手の存在に刺激を受けつつ、芸を高め合っていった役作りの過程からして、まさに演じた役柄そのもの。劇中、喜久雄と俊介が2人の女形の競演で踊る華やかな「二人道成寺」や、生涯最後の共演作となることを互いに知ったうえで、2人が白塗りの化粧をボロボロにしながら迫真の芝居をするクライマックスの「曽根崎心中」のシーンでは、あたかも現実とフィクションが溶け合っているかのような臨場感に圧倒された。

色白の肌、涼やかな目元、甘い雰囲気を湛えた横浜の端正な美貌も歌舞伎界のプリンスというイメージにぴったり。生まれながらに歌舞伎役者としての将来を約束されていた俊介が、喜久雄の非凡な才能に打ちのめされていく姿には胸が締め付けられる。と同時に、劣等感に苛まれても、その気持ちをぐっと抑え、喜久雄が不安な時は逆に励ましてあげる優しさに俊介の生来の性格と育ちのよさがにじむ。喜久雄の恋人でありながら俊介を支える人生を選んだ春江(高畑充希)の心情が、短いシーンのなかで違和感なく理解できるのも、春江の前で初めて本当の思いを吐露した俊介の切実さがひしひしと伝わってくるからだ。「べらぼう」では江戸幕府老中の田沼意次役で登場し、蔦重役の横浜と共演する渡辺謙が、本作では俊介の父で上方歌舞伎の名門の当主、花井半二郎を演じているのも見逃せない。

志士たちが賞金をめぐり戦いを繰り広げる「イクサガミ」では、天明刀弥という“最狂”の剣士に扮した

最近では岡田准一主演、藤井道人監督作品で、11月から世界独占配信中のNetflixシリーズ「イクサガミ」のラストに横浜がサプライズ登場したことが大きな話題を呼んでいる。Netflix週間グローバルTOP10(非英語シリーズ)で1位を獲得した本作は、武士の終焉を迎えた明治時代の京都を舞台に、腕に覚えのある292人が賞金を得るために激しいデスゲームを繰り広げるエンタメ時代劇。横浜が演じる謎めいた最狂の剣士、天明刀弥は、原作小説を手掛けた直木賞作家、今村翔吾が横浜を想定してアクションシーンを執筆したというキャラクターだ。原作では最重要人物の一人であるだけに、第2シーズンの実現と刀弥の活躍に期待が高まるばかりだ。

瀬戸内の島に転校し、島の女子高生、暁海と恋に落ちる男子高生の櫂を横浜が演じる『汝、星のごとく』

こうして振り返ると、勢いのある波に乗って、次から次へと途切れることなく話題作への出演が続いた2025年は、“横浜流星の年だった”と言っても過言ではない。すでに来年の待機作に『流浪の月』の原作者、凪良ゆうの恋愛小説を藤井道人監督が映画化した、広瀬すずとのW主演作『汝、星のごとく』が控えている。現在、20代最後の年齢を全力でひた走り、ストイックに役者としての高みを目指す彼がどんな30代を迎えるのか。今後も様々な作品で、まだ誰も見ていない新しい横浜流星を発見することが楽しみでならない。

文/石塚圭子


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