2026年は午(うま)年。古来より馬は、時に生活の糧として、時に信頼のおける相棒として、時に人々を熱狂させる対象として人間社会と深く結びついてきた。そんな馬だからこそ、映画をはじめ様々なエンタメの題材にもなってきた。本稿では、午年にこそ観てほしいオススメの“馬映画”を独断と偏見でピックアップしていく。
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■灼熱の砂漠横断レースを愛馬との友情で駆け抜ける『オーシャン・オブ・ファイヤー』
19世紀末、馬に乗って長距離を走り抜くエンデュランス競走で連戦連勝のカウボーイが砂漠横断レースに参加する『オーシャン・オブ・ファイヤー』(04)。フランク・ホプキンス(ヴィゴ・モーテンセン)と愛馬ヒダルゴは、アメリカ西部で繰り広げられるクロスカントリーレースで無敗を誇るも、現在は旅回りの一座に加わり、酒に溺れる生活を送っている。しかし、彼の評判を聞きつけたアラブの族長の使者が現れ、フランクにあるレースへの参加を呼びかける。それは1000年もの歴史を持ち、3000マイルにもおよぶ灼熱の砂漠を横断する“オーシャン・オブ・ファイヤー”だった。
主人公ホプキンスを演じるのは、牧場育ちで「ロード・オブ・ザ・リング」三部作でも見事な乗馬を披露したヴィゴ・モーテンセン。彼をレースに招くアラブの族長役で『ドクトル・ジバゴ』(65)のオマー・シャリフも出演する。灼熱の気候だけでなく、砂嵐やライバル選手からの妨害など過酷を極めるレースのハラハラ感はもちろん、盗賊にさらわれた族長の娘を救出する「インディ・ジョーンズ」ばりのアドベンチャーも展開されて大興奮。
そしてなにより、ヒダルゴとホプキンスの友情が胸アツ。息の合ったコンビプレーで貴重な水を手に入れたり、盗賊を撃退したり。ホプキンスの心が折れ、レースを投げだしそうになった際には、傷を負って横たわるヒダルゴが立ち上がり、相棒を励ましてレースへの復帰を促したりもする。クライマックスのデッドヒートでは、先頭を走る屈強なアラブ馬を後ろから差していくヒダルゴの勇姿に一瞬たりとも目が離せず、思わず食い入るように見入ってしまう。劇中の絆は現実でも本物だったようで、ヒダルゴを演じた5頭の馬のうちの1頭を撮影後にモーテンセンが購入している。
■ジャッキー・チェンが馬とのかけ合いで魅せる『ライド・オン』
ジャッキー・チェン主演の『ライド・オン』(23)も馬との絆を描いたアクション。かつて香港映画界で名を馳せた伝説的なスタントマンのルオ・ジーロン(チェン)。しかし現在は落ちぶれ、会社を経営する友人から譲られた愛馬チートゥと共に撮影所の馬小屋で暮らしていた。そんな時、口約束で譲られていたチートゥが競売にかけられるという事態に。困り果てるルオだが、借金取りから逃げる際にチートゥに乗って映画さながらのアクションを披露したことがSNSで拡散され、これをきっかけにスタントの仕事に復帰することになる。
仔馬の頃にチートゥを引き取り、愛情深く育ててきたルオには息子も同然。スタントを教えようとするルオに対し、チートゥが言うことを聞いてくれなかったりとコミカルなかけ合いでも楽しませてくれる。彼らの活躍は評判となり、次々とオファーも舞い込んでくるが、スタントの内容はより危険なものに…。大学の法学部に通う娘シャオバオ(リウ・ハオツン)にも咎められ、チートゥにとって大切なことはなにか?とルオも思い悩むようになっていく。70歳を迎えたジャッキー・チェンがアクションだけでなく、父親としての葛藤も体現。ちょうど本作が初主演作から50周年にあたり、劇中にはチェンが体を張ってきた過去作のスタント映像も差し込まれるなどファンにとっても感慨深い作品に。
■“奇跡の馬”の視点を通して戦場となったヨーロッパを映しだす『戦火の馬』
舞台化もされたマイケル・モーパーゴ原作の児童文学をスティーヴン・スピルバーグ監督が映画化した『戦火の馬』(11)。第一次世界大戦直前のイギリス、農家の少年アルバート(ジェレミー・アーヴァイン)は父親が買ってきた1頭のサラブレッドに“ジョーイ”と名付け大切に育ててきた。しかし、ヨーロッパ全土を巻き込む戦争が勃発し、ジョーイは軍馬として戦地へ送られることに。やがてジョーイはイギリス人将校やドイツ軍の脱走兵、農家の老人とその孫娘といった様々な人たちと戦地で出会っていく。
アルバートも親友との再会を信じて軍に入隊。両者の絆を軸に物語が進み、いくつもの戦火をくぐり抜け“奇跡の馬”と呼ばれるジョーイの視点を通して、荒れ果てていくヨーロッパの大地が映しだされていく。ジョーイが颯爽と駆ける姿が美しい一方で、騎馬隊の突撃、それを狙撃する機関銃の連射などリアルな戦場の様子も再現されている。トム・ヒドルストン、ベネディクト・カンバーバッチらいまをときめくスター俳優、『アダムズ・アップル』(05)などアナス・トマス・イェンセン作品でマッツ・ミケルセンと何度も共演しているニコラス・ブロも出演している。
■1頭の競走馬との出会いが失意の男たちの運命を変える『シービスケット』
2025年は競馬を題材にしたドラマ「ザ・ロイヤルファミリー」も話題になったが、映画でもたびたび競馬がフィーチャーされている。その1本が『シービスケット』(03)だ。実在した競走馬を描いた名作小説を映画化。大恐慌時代のアメリカを舞台に、息子を亡くした資産家と元カウボーイの調教師、片目が不自由な騎手ら失意のなかにいる3人が、一頭の競走馬“シービスケット”と出会ったことで、競馬の世界に傾倒しながら人生の再起を懸けようとする。
資産家を「トロン」シリーズのジェフ・ブリッジス、調教師を『アメリカン・ビューティー』(99)のクリス・クーパー、そして騎手役を「スパイダーマン」シリーズのトビー・マグワイアが演じる。当時の映像を参考に、限りなく忠実に再現されたレースシーンは必見!
■競走馬を育てようとした一人の主婦の実話『ドリーム・ホース』
『ドリーム・ホース』(20)は実在する競走馬とその育て主となった一人の主婦を描く感動ストーリー。イギリスのウェールズの小さな村で、仕事と家事、親の介護を繰り返すだけの日々に満たされない思いを抱えていたジャン(トニ・コレット)。ある日、馬主経験のある税理士のハワード(ダミアン・ルイス)の話を聞き、自分でも競走馬を育てたいと思い始める。資金難やノウハウのなさといった問題を、地元の人たちからの出資とハワードの協力でなんとかクリアすると、安価で手に入れた牝馬から生まれてきた仔馬に「ドリームアライアンス(夢の同盟)」と名付け、片田舎から最高峰のレースを目指していく。
競走馬への出資にあたってジャンたちが大切にしたルールが、決して儲けようとするのではなく、“胸の高鳴り”を目指すこと。ドリームアライアンスの初レースが決まり、まるで小学校の遠足のようにみんなでマイクロバスに乗って会場に駆けつけたり、レースの結果に一喜一憂したり。掛け値なしに誰かを応援することが人生を輝かせてくれることを教えてくれる。
■劇用馬として皐月賞2着馬が登場する『超高速!参勤交代』
『超高速!参勤交代』(14)は、『空飛ぶタイヤ』(18)などの本木克英が監督を務め、佐々木蔵之介が主演を務めた異色の時代劇。徳川吉宗の治世、磐城国(現在の福島県東部と宮城県南部にあたる)のわずか1万5000石の弱小藩、湯長谷藩に幕府から突然の参勤交代が言い渡される。湯長谷の金山をねらう幕府の老中、松平信祝(西村まさ彦)の策略で、通常なら8日間を要するところを、わずか4日間で行えというのだ。藩主の内藤政醇(佐々木)は家老の相馬兼嗣(西村まさ彦)らと共に、奇想天外な作戦を練っては実行に移し、4日間での参勤交代を成功させようとする。
実は本作も競走馬に関連する作品で、劇用馬として「シャコーグレイド」がクレジットされている。シャコーグレイドとは、「ウマ娘 プリティーダービー」でもおなじみのトウカイテイオーが勝った1991年の皐月賞で、16番人気の低評価を覆し2着に入った馬。その後も息長く競走生活を続け、ナイスネイチャやメジロライアン、ライスシャワーといった馬とも激闘を繰り広げファンから愛された。
■「ウィ・ウィル・ロック・ユー」でもアガる『ROCK YOU!』
『ROCK YOU!』(01)も馬上槍試合を題材にした馬映画。老騎士の従者をしていた青年が、突然死した主人に代わって試合に出場。運よく優勝してしまったことで、その後も貴族の名を偽って仲間と共に各地の大会に参戦していく。
馬上槍試合とは、一対一で向かい合う騎士が馬で疾走しながら手にした武器で相手を攻撃する中世ヨーロッパで流行した競技。とはいえ、本作では冒頭で流れるクイーンの「ウィ・ウィル・ロック・ユー」をはじめロックナンバーが劇中曲として使用され、仲間との絆あり、貴婦人とのロマンスあり、ライバルとの攻防も相まって爽快なスポ魂映画としての趣も。のちに『ダークナイト』(08)でジョーカーを演じるヒース・レジャーの騎士道精神あふれる好青年ぶりも熱い!
■騎馬隊の戦闘シーンにも注目の『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』
「ロード・オブ・ザ・リング」三部作の前日譚にあたる長編アニメーション『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』(24)。“槌手王”ヘルム(声:市村正親)による統治のもと、平和な日々を送っていた騎士の国ローハン。しかし、ヘルムに恨みを持つ野心家のウルフ(声:津田健次郎)が異民族を率いてローハンを侵略し、王の息子たちをはじめ大勢が命を落としてしまう。王国滅亡の危機に王女ヘラ(声:小芝風花)は、民を率いて崖に背後を守られた角笛城への籠城を決意する。
ローハンとは、おもに『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』(02)の舞台となった人間の国。その国土には広大な平原が広がり、“馬の司の国”とも呼ばれている。国民は馬と心を通わせることができるとされ、建造物や甲冑など武具にも馬の装飾が見られる。本作でも騎馬隊による戦闘シーンが描かれるなど、やはり馬が強い印象を残している。
午年には、馬が力強く駆けるイメージから、行動力や躍進、発展、成功といった意味があるとも言われている。今回紹介した馬映画からもそういったポジティブなエネルギーが得られるかも?
文/平尾嘉浩
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