絶体絶命のピンチでも揺るがなかったドジャースの結束力ロハスの同点弾と山本由伸の緊急登板

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絶体絶命のピンチでも揺るがなかったドジャースの結束力ロハスの同点弾と山本由伸の緊急登板

12月31日(水) 9:40

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L.A Timesが報じたワールドシリーズ第7戦の舞台裏(後編)

2025年シーズンの米大リーグ(MLB)ワールドシリーズは歴史に残る激闘だった。勝負は第7戦までもつれ込み、延長11回でブルージェイズを制し、連覇を成し遂げたのはドジャースだった。

その全軌跡に密着したのが、地元紙Los Angeles Times(ロサンゼルス・タイムズ)だ。同紙はこの歴史的な勝負の行方を詳報し、「ドジャース王朝が幕を開けた」と論じた。

120点を超える秘蔵写真と日本未公開の13万字以上の詳述で、21世紀初の連覇達成への道のりを記した『L.A TIMES』公式独占本『DODGERS' JOURNEY(ドジャース・ジャーニー)大谷翔平・山本由伸 みんなでつかんだ世界一』(Los Angeles Times編、児島修 訳/サンマーク出版刊)。日米同時刊行された本書からその一部をお届けする。

ワールドシリーズ連覇を達成し、ロバーツ監督(写真左)と抱き合う大谷翔平photo by L.A Times

ワールドシリーズ連覇を達成し、ロバーツ監督(写真左)と抱き合う大谷翔平photo by L.A Times





【満身創痍で迎えた朝】(ジャック・ハリス2025年11月1日)

前夜、地区シリーズ第2戦以来の先発出場となったベテラン二塁手のミゲル・ロハスは、苦しい体勢で試合を決めるダブルプレーを完成させた際に、肋間筋の痛みが再発。そのままチームメイトにもみくちゃにされたために、さらに状態が悪化した。

翌朝目覚めると、左脇腹がうずき、腕を頭上に持ち上げることすら辛かったという。

ロハスは振り返る。

「チームドクターから『出られそうか?』とメッセージが来たんだ。とにかく球場に行って、バットを振ってみないとわからないと答えたよ」

ロハスは試合前に長時間の治療を受け、さらに痛み止めの注射を数本打ってもらい、なんとかプレー可能な状態に持っていった。「彼はトラマール(痛み止め)で"武装"したよ」とデーブ・ロバーツは冗談交じりに話す。ロハスが打撃練習に立つと、オーナーのマーク・ウォルターもロハスのスイングに感心し、「強い打球を飛ばしているじゃないか」と周囲に漏らしたという。

こうして、ロハスは9番セカンドでスタメンに名を連ねた。

9回の打席に立ったロハスは、ドジャースにとって最後から2番目の希望だった。

この時点でチームは3対4まで追いついていた。ジャスティン・ロブレスキ、タイラー・グラスノー、エメ・シーハン、ブレイク・スネルの救援リレーが踏ん張ったおかげだ。また、8回にはマックス・マンシーがホームランを放ち、2点差を1点に縮めた。

ネクストバッターズサークルに大谷翔平を置いて打席に立ったロハスの目的はただひとつ。

「ショウヘイのために塁に出ようとしていた。僕はホームランバッターじゃない。狙ってホームランを打ったわけじゃなかったんだ」

実のところ、今季ロハスは右投手からまだ1本もホームランを打っていなかった。しかし、この打席は最高の内容になった。ブルージェイズのクローザー、ジェフ・ホフマンに対してファウルで粘ってフルカウントに持ち込み、甘く入ったスライダーを捉えた。

「内角低めの得意なコースだったよ」と、今季わずか7本塁打のロハスは振り返る。

「第8号」の打球はブルージェイズのブルペンを越えてレフトスタンドに飛び込んだ。9回1アウトからの奇跡の同点弾に、ロジャース・センターが静まり返った。

「試合の神様は、努力する者を称える。今日は彼を称えたんだ」

ロバーツは、ロハスについてこう語った。36歳のロハスは今オフFAになり、来年末の引退を検討しているが、控えに回っても声を出し、チームの精神的支柱であり続けてきた。フレディ・フリーマンも続く。

「まったくもって信じられない。僕らを救った一打だよ」

【想定外だった切り札投入】生き返ったドジャースは、まもなく次の決断を迫られた。

9回裏、スネルが1アウトからヒットと四球を与える。

ここでロバーツは、当初考えてもいなかった手を打った。第6戦に登板した山本は、最終戦で使うつもりのなかった唯一の投手だった。しかし山本の思惑は違った。「必要なら投げられる」と首脳陣に申し出たのだ。

ロバーツは、山本を起用するのは緊急事態だけにしておこうと考えた。だが、サヨナラのランナーが二塁にいるのは、まさにその緊急事態だ。

「大舞台を求める選手はいるものだ。ヨシ(山本由伸)を心の底から信頼している」

立ち上がりは苦しかった。山本は最初の打者に死球を与え満塁とした。次に打たれたゴロはセカンドのロハスが捕球し、すかさず捕手のスミスに送球。スミスがホームベースをギリギリで踏みフォースアウトに仕留めた。その次が、ヘルナンデスとパヘスが交錯し、ヘルナンデスがうつぶせに倒れた左中間への当たりだ。

「ウィリー・メイズばりの『ザ・キャッチ』を披露しようと思ったんだけど、彼がぶつかってきてね」ヘルナンデスは笑う。

「負けたと思って伏せていた。そしたら、『大丈夫?』って声をかけられて。『えっ、捕ったの?』『Yeah』で、『よし、行くぞ!』ってなったんだ」

そして試合は延長戦にもつれ込んだ。10回表にドジャースが満塁のチャンスをふいにするが、その裏は山本が三者凡退に抑える。そしてついに11回。スミスがシェーン・ビーバーの甘めのスライダーを仕留め、レフトスタンドに叩き込み、これが決勝打となった。

「なんとか届いてくれと思っていたよ」

そう言ったスミスも、手の骨折から復帰してまだ1カ月も経っていなかった。

「ここぞという場面で打ってくれた」

フリーマンが胸を張った。

【スター軍団を支えたもの】最後の3つのアウトも、山本が続投した。ブルージェイズはランナー一、三塁とするが、スプリットでアレハンドロ・カークのバットをへし折り、ショートゴロのダブルプレーに打ち取った。最後の1球は、遊撃手転向1年目にしてゴールドグラブ賞の最終候補まで残ったムーキー・ベッツが処理した。

2023年のオフに3億2500万ドルで契約した日本のスター、山本について、フリードマン編成本部長はこう語った。

「山本の能力が高いのはわかっていた。でも、今夜のようなことが生身の人間にできるとは......到底思えなかったね」

それを言うなら、この日の試合もドジャースが追いつけるようには到底思えなかった。

「全体としては、決してうまく戦えたわけじゃない」とフリードマンは認め、こう続けた。

「でも、肝心かなめの場面で、選手たちが本領を発揮してくれた」

ここ数年のドジャースの成功を支え、高額なスター軍団の強さの原動力となったもの。それは選手たちが築いた文化、そして第7戦の絶体絶命の劣勢ですら揺るがない結束力だった。

選手たちはこれを糧にワールドシリーズ優勝へと進み、ここに「ドジャース王朝」が確立したのだ。

試合後、ゴーグルを着け、シャンパンとビールにまみれたロバーツはこう語った。

「本当に特別なものを築き上げた、そう確信している。この年月でこれだけのことを成し遂げたのは、まったく驚くべきことだ。それを王朝と呼ぶかどうかは解説者やファンに任せるとして、ここまでたどり着いたチームを大いに誇りに思う」

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