12月31日(水) 2:30
ある相続財産を特定の相続人が得て、代わりに他の相続人に代償金を払うような遺産分割は決して珍しいものではありません。
例えば、相続財産が家だけ、ないし大部分を家が占めるというような場合で考えてみましょう。その場合において、長男が実家の家を相続する、あるいは、長年親の介護をした弟がそのまま住むために実家を相続する、などというのがいい例です。
この場合に支払う代償金は、その家の価格を基準に、他の人の相続分を元に決められます。例えば、家の評価額が1000万円で、相続人が子2人の場合、どちらかが家をすべて取得すると、もう一方には通常1000万円のうち自分の持分相当である500万円程度を代償金として支払う、といった形になります。
つまり、取得する人が一方的に「100万円で」と決められるわけではないのです。代償金の額は、代償分割の対象となった財産の価額に基づいて決定され、遺産分割協議として相続人全員の合意が必要になります。
なお、実際の相続においては、市場価格を参考にしながら、当事者で話し合って決められることが多いです。
では、具体的な遺産分割協議の進め方について考えてみましょう。今回は遺言書がないものとして紹介します。
まず、相続人全員で協力して故人の自宅や銀行口座などを調査し、相続財産を洗い出します。
そして、それらすべての財産について、誰がどの財産をどのような割合で相続するべきか、話し合います。その際は、亡くなる直前7年間に行われた贈与(いわゆる生前贈与)の有無や、亡くなった方の財産の維持増加に特別な貢献(いわゆる寄与分)をした者がいるかどうかを加味して話し合います。
基本的には法律上、兄弟姉妹間においては相続分が同じ割合とされています。長男だから、長女だからという理由だけで相続財産が多くなる、あるいは少なくなるということはありません。
なお、どうしても当事者の間で納得がいかず、話し合いで遺産分割を進めることができない場合は、家庭裁判所に申し出て調停を行うか、第三者を交えての話し合いで解決するかになります。
遺産分割協議は専門的な手続きや知識が必要になりますが、結局のところ相続対象となる遺産の確認と丁寧な話し合いに尽きます。
遺産分割を行ったら、遺産分割協議書の作成を忘れないようにしてください。こちらは相続した不動産の登記に使われるものになります。さらに、「言った、言わない」を中心とした後々に起こりうるトラブルの防止にもなります。
相続はただでさえその性質上トラブルが起こりやすい出来事です。そのため、作成する遺産分割協議書には必ず下記の事項を盛り込むようにしてください。
・被相続人の氏名、死亡年月日、最後の本籍と住所
・遺産の内容および分け方
・遺産分割協議が成立した日付
・相続人全員の署名・押印と印鑑証明書
なお、書式などは基本的に自由ですので、難しく考え過ぎず、まず作成することを優先してください。
弟の「100万円でいい?」という提案が妥当かどうかは一概に言い切ることができず、実家の正確な評価額と相続分の計算によって判断するのが一般的と考えられます。
相続は家族の気持ちが交錯しやすい問題ですが、公平さを保つには、不動産の客観的な評価や、きちんとした遺産分割協議書の作成が大切です。「家族だから大丈夫」と思っていても、金額が曖昧なまま進めると、後悔することも珍しくはありません。
相続における遺産分割について不安を感じるときは、じっくり腰を据えて、家族でしっかり話し合うようにしましょう。
執筆者 : 柘植輝
行政書士
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