12月30日(火) 4:40
まず、年収の壁の基本的な仕組みを見ていきましょう。そのうえで「年収200万円以上」の人への影響を解説します。
年収の壁とは、税金や社会保険料を支払うことになる収入のボーダーラインのことです。
「所得税の壁」や「住民税の壁」「社会保険料の壁」など、年収の壁にはいくつか種類があります。
このうち、今回の税制改正で議論に上げられているのは、「所得税の壁」です。
これまで、所得税の壁は長らく103万円でしたが、2025年度からは160万円まで引き上げられました。そして、この壁をさらに引き上げようという議論が、与野党の間で行われていました。
所得税における年収の壁は、「基礎控除」と「給与所得控除」の合計によって決まります。
・ 基礎控除:納税者の合計所得金額に応じて差し引かれる、基本的な控除
・ 給与所得控除:会社員やアルバイトなどの給与所得者の合計所得金額に応じて差し引かれる控除
現行の160万円という課税水準は「基礎控除95万円」と「給与所得控除65万円」を合算したものです。
所得税や住民税などの税金は、その人の「収入」から「控除」した金額に基づき計算されます。そのため、収入が控除の合計を下回る人には、税金がかかりません。これが、年収の壁の基本的な仕組みです。つまり、年収の壁の引き上げの本質は、収入から差し引かれる「控除」の増額です。
そして今回の議論は、この基礎控除と給与所得控除をそれぞれ4万円ずつ(合計8万円)引き上げることで、年収の壁を168万円にしようというものでした。
ここでポイントとなるのが、基礎控除と給与所得控除は、納税者本人の合計所得金額によって異なるという点です。
年収の壁が103万円から160万円になった改正においても、年収に応じて段階的に控除額が上乗せされる仕組みが取られています。
例えば、現行の基礎控除の金額は図表1の通りです。
図表1
国税庁 No.1199基礎控除
基礎控除は、年収200万円以上の人についても、合計所得が2350万円以下であれば令和6年分以前と比べると控除額は引き上げられているため、税負担が減り、手取りの上昇を期待できます。
当初、年収の壁は168万円に引き上げられると報じられていましたが、2025年12月18日に「178万円」までの引き上げで与野党の合意が形成されました。
160万円から168万円の引き上げ案では「基礎控除と給与所得控除をそれぞれ4万円ずつ引き上げ」とされていましたが、ここからさらにそれぞれ5万円ずつ上乗せされる形です。
さらに、基礎控除の上乗せの対象が年収200万円未満から、年収665万円以下にまで拡大されたのも大きなポイントです。この改正は納税者の8割に恩恵があり、主に中所得層への影響が大きいと報じられています。
年収の壁が160万円から178万円に引き上げられることにより、所得税は年収200万円の場合で約4000円、年収600万円の場合で約3万6000円減額される見込みです。(単身世帯の場合・復興特別所得税を除く)
ただし、今回引き上げられるのはあくまで「所得税の壁」についてです。年収の壁には、ほかにも「住民税の壁」や「社会保険料の壁」などがあります。パートやアルバイトで働く人は、「所得税の壁」は超えなかったとしても、これらの壁を超えることにより、税金や社会保険料の負担が新たに生じる場合もあるので注意が必要です。
年収の壁の引き上げの本質は、基礎控除と給与所得控除の増額です。そのため、壁が引き上げられることは特定の年収帯の人だけでなく、多くの納税者にプラスの影響を与えます。
なお、当初、年収の壁は168万円に引き上げられるとされていましたが、178万円に引き上げられることが正式に決定しました。また、対象となる層が年収665万円にまで拡大されたことで、中所得層を中心に手取りアップが期待できます。
国税庁 No.1199基礎控除
自由民主党 令和8年度与党税制改正大綱
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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