ジェームズ・キャメロン監督によるSF超大作「アバター」シリーズ。その第一章のラストを飾る最新作『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』が、全国の劇場にて絶賛公開中だ。神秘の星パンドラを舞台に、元海兵隊員のジェイクは、パンドラの先住民ナヴィの女性ネイティリと家族を築き、侵略者である人類(スカイ・ピープル)との戦いを続けていた。そんな彼らの前に、同じナヴィでありながらパンドラ憎むアッシュ族が立ちはだかる。「炎」をテーマに描かれる壮絶な戦いの行方とは――。今回は、アッシュ族を率いるリーダー・ヴァラン役の日本語吹替を担当した田村睦心に、自身が演じたヴァランの魅力や、作品の見どころについて語ってもらった。
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――『アバター』最新作の日本版声優に決まったときは、どう思われましたか?
田村「あんな有名な作品の!」という驚きのあるオーディションだったので、「決まった」と聞いたときは本当にうれしかったですね。
――田村さんが演じられたヴァランというキャラクターの印象をお聞かせください。
田村シュッとした顔立ちや怪しげな空気をまとっていることもあって、最初は割と大人っぽいイメージを持っていたんです。でもオーディションで「もう少し可愛らしく、未熟な感じを出してほしい」と言われて、「そっちなの?」って(笑)。実際に観ていただくとわかると思うんですが、ヴァランって恐ろしい部分をたくさん持っているキャラクターでありながら、割と素直で可愛いところもあるんですよ。なので、その方向性になるように演じさせてもらいました。
――ヴァランを演じるにあたって、どんな点を大切にしようと考えましたか?
田村一見すると悪役然としたキャラクターなんですが、その想いや行動の根幹には、エイワ(パンドラの調和を保つ神のような存在)に裏切られたという辛さや悲しさ、そしてエイワに頼らず自分たちの力でなんとかしなければならないという強さがあると感じました。そうした恨みや憎しみの感情が怒りに変わり、彼女の悪役らしさにつながっているのかなと思ったので、その部分を大事にしながら演じました。
――ヴァランを演じる中で、挑戦しようと考えたことは何でしょうか。
田村可愛さを残したまま、恐ろしさをどう表現するかという点ですね。ネイティリに寝首をかかれるシーンもそうですが、ヴァランって憎らしく見える一方で、どこか間の抜けた感じや愛らしさもあるキャラクターなんです(笑)。そうした情けないところはきちんと情けなく表現しつつ、攻撃する側に回ったときは、蛇のように恐ろしく、ねちっこく。そのメリハリをしっかり見せられたらいいなと思っていました。
――収録の様子について教えてください。
田村基本的には、ヴァランを演じているウーナ・チャップリンさんの声を参考にしながら、相手との距離感や彼女の気持ちを掴んでいきました。収録中も、「ここは少し違うかも」「映像と合っていないかも」と感じた部分は、何度か録り直しをさせてもらいました。例えば、ヴァランが幻術のようなものを使うシーンでは、最初の芝居だと動きが足りないと言われて、より憎しみやエイワへの想いを訴えかけるよう、大きなお芝居に変更しました。
ヴァランはクオリッチの強さにゾッコン?
――田村さんがオススメしたい、ヴァランの注目シーンはどこですか?
田村ヴァランは、意外と物語の要所要所で登場するキャラクターなんですよね。いろいろな場面でサリー一家を襲撃するので、そこはぜひ楽しみにしてほしいです。個人的にすごく好きなのは、クオリッチ大佐から銃を受け取るシーンですね。「私のものだ!」と言わんばかりの強欲さが出ているんですけど、とにかくヴァランがめちゃくちゃうれしそうで可愛いんです。そこは、ぜひ注目してほしいポイントです。
――クオリッチとの関係については、どう思われていますか?
田村「エイワと戦うなら俺が必要だ」と言われた瞬間の、ヴァランの魅入られたような目つきの変化も印象的でしたし、スカイ・ピープルの基地に一緒に凱旋したときなんかは、ドヤ顔で歩いていましたから(笑)。利用して捨てるような関係ではなく、お互いをきちんと認め合っている関係なんだろうなと感じました。
――田村さん視点で見た、クオリッチの印象を教えてください。
田村第一作、第二作がああいう感じだったので、正直ちょっと怖い存在ではありました(笑)。軍人気質ですし、ジェイクとの因縁もあって、登場するたびに「うわ、出た!」と思っていました。でも本作では、ジェイクたちと行動を共にするシーンもあって、味方にいるとすごく心強い存在だということがわかりましたし、息子のスパイダーとのやりとりを見ていると、意外といい人な一面も垣間見えるんですよね。でも、やっぱり私は家族を大切にするジェイク派です(笑)。
――父親となったジェイク率いるサリー一家ですが、今回も激動の運命が待ち受けています。本作で特に共感したキャラクターはいましたか?
田村余計なことをしてしまうロアクが、一番共感できるかもしれないです(笑)。一番人間味があるというか、いろいろな規則やルールがあっても、それに縛られず、熱い友情のために無茶をしてしまうところがあるじゃないですか。そういう部分にすごく共感しました。特に、追放されたパヤカンを追うことを諦めなかった彼の姿にはグッときましたね。前作から続く仲間たちとの強い絆が描かれているところも、見ていて面白いなと思いました。
――実際にスクリーンで映像をご覧になっての感想をお聞かせください。
田村やっぱり『アバター』は映像がすごいですよね。もちろん期待して観てはいたんですが、それを遥かに超えてきました。本当に美しい映像で、空のシーンでは「自分が飛んでいるみたい」と感じるほど没入してしまって、襲撃シーンは本当に怖かったです。映画を観ているというより、テーマパークのアトラクションのような感覚で、森や空、海、火山といった壮大な自然が広がるパンドラの世界に入り込んでいく感覚でした。これまで登場してこなかった場所も描かれていますし、約三時間、ずっと興奮しながらパンドラの旅を楽しませてもらいました。
――吹替版ならではの『アバター』の魅力について教えてください。
田村字幕版ならではの良さもあると思うんですが、吹替版はやはり映像に集中できるところが大きな魅力だと思います。没入感も高まりますし、日本語ならではのニュアンスをセリフから感じ取ることもできます。字幕版とはまた違った感覚で楽しめると思うので、ぜひ吹替版でも観ていただけたらうれしいです。
――最後に、ファンの皆さんへメッセージをお願いします。
田村『アバター』といえば映像美が注目されがちですが、一作目、二作目から続く「家族の絆」の物語でもあると思っています。これまでも涙を誘う展開がありましたが、今回はさらに心を揺さぶられる内容になっています。ぜひ映像美だけでなく、素晴らしいストーリーそのものも体感してもらえたらうれしいです。
田村睦心(たむらむつみ)
6月19日生まれ。アイムエンタープライズ所属。主な出演作はTVアニメ『魔神創造伝ワタル』(星部ワタル)、『百姓貴族』(荒川弘)、『神統記(テオゴニア)』(カイ)、『小林さんちのメイドラゴン』(小林さん)、『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』(エルメェス・コステロ)ほか。
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