【写真】松本幸四郎と池波正太郎の縁は歌舞伎『息子』でも
舞台、名作映画、韓国ドラマや中国ドラマなど、多様なラインナップを誇るCS放送「衛星劇場」。毎月歌舞伎の名作を放送する同局だが、1月には『鬼平犯科帳 血闘』をテレビ初放送。歌舞伎ならではの迫力を持つ名作舞台を中心に、1月のオススメラインナップを掘り下げていく。
■池波正太郎の代表作「鬼平犯科帳」
小説家・池波正太郎が残した「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」に並ぶ不朽の名作「鬼平犯科帳」。江戸時代に実在した役職「火付盗賊改方」の長官・長谷川平蔵を主人公とした“捕物帳”…現代でいう刑事モノ小説だ。
普段は粋で茶目っ気もあり、寛容な人柄の平蔵。だが外道の犯罪者を相手にするときは“鬼の平蔵”…“鬼平”と呼ばれるほどの苛烈さを示し、凄腕の剣術で切り伏せる。人殺しも躊躇しない強盗たちにとっては常に警戒する相手であり、目の上のたんこぶだった。
同作品のユニークな点は、平蔵自身が昔はとんでもない悪童だったという点が物語に深く関わっていること。平蔵は家督を継ぐまで多くの悪事を働いており、そのころは幼名「銕三郎」にちなんで「本所の銕」とあだ名されていたという。
そうした経緯から悪友を多く抱えていた平蔵。彼はそうした昔の知り合いを「火付盗賊改方」になってからも上手く頼り、外道な盗人たちを検挙するためのスパイに使うことになる。
だが「悪は悪」と利用して終わりではなく、人情味あふれるやり取りもまた同作の大きな魅力の1つだ。外道には容赦しないが、昔悪事を働いていたという者であっても人並み以上に温かく接する平蔵。人を殺さず、女に手を出さず、入念な手配と計画で「ある日気づいたら蔵のなかが空だった」という手際を働く昔ながらの大盗賊には、ある種の経緯すら払っていた。
一度悪の道を知った平蔵の人間観は、「悪いことをしながら善いことをし、善いことをしながら悪事をはたらく」という作中のセリフに表れている。こうした平蔵の人間性が多くの悪人の心を掴み、また読者の心も惹きつけた。善性に目覚めた悪人たちは火付盗賊改方のスパイとして盗賊たちの懐にもぐりこみ、命を懸けてその計画を未然に防ぐ役割を担ったのだ。
ちなみに平蔵は実在した長谷川宣以という人物の生涯をモデルとしており、作中のエピソードも史実に沿った話が多い。長く愛される平蔵の物語は小説からドラマ、映画にもメディアミックスを果たして愛され続けた。
「鬼平犯科帳」はドラマ・映画でも平蔵役を勤め、二代目中村吉右衛門が長らく演じてきたシリーズ。 今回放送されるのは、「二代目中村吉右衛門に捧ぐ」として2025年7月に上演された松本幸四郎が平蔵役を勤める舞台だ。
■若き日の“鬼平”を描く歌舞伎「鬼平犯科帳 血闘」
歌舞伎で描かれる「血闘」は、“本所の銕(銕三郎)”と呼ばれた放蕩無頼の若き鬼平が登場する人気作。ドラマ版のエンディングテーマとして親しまれてきたジプシー・キングス「インスピレーション」の調べとともに、初夏の江戸を舞台とした物語が展開される。
同作を演じるにあたり、歌舞伎情報サイトのインタビューに「“新しい歌舞伎”、“二代目吉右衛門”、この二つが自分のなかでのキーワードです。今の“鬼平”である私が、“鬼平”を歌舞伎にしたらこうなるという決定版、“鬼平歌舞伎”と言ってもらえる作品をつくる。そして十二分に吉右衛門の鬼平を思い出していただきたい。それを頭の真ん中に置いて取り組んでいます」と語った松本。叔父であり長く平蔵役を務めてきた二代目中村吉右衛門への思いと、原作への愛が感じられる言葉だ。
歌舞伎ならではの立廻り、迫力、あっと驚く伏線。原作の良さを見事に舞台へ落とし込んだ『鬼平犯科帳 血闘』。衛星劇場では年明け1月1日(木)の夜6時15分ほかから、同作をテレビ初放送する。
また松本幸四郎がテレビドラマ・映画でも演じてきた長谷川平蔵に感じる魅力、そして「二代目中村吉右衛門に捧ぐ―」と掲げられた言葉の意味を語る「松本幸四郎『鬼平犯科帳』特別インタビュー」も1月1日(木) 夜6時ほかからオンエア。同舞台に込められた想いを改めて知ることで、より深く物語に没頭できるだろう。
なお衛星劇場ではほかにも、「立川談志 生誕90年」を記念した番組を放送予定。天才落語家・立川談志の落語哲学を知ることのできる「映画 立川談志 ディレクターズ・カット」(1月2日[金]昼1:50ほか)に加え、「粗忽長屋」を生涯最後に演じた貴重な高座を含む映像遺産「遺芸 立川談志」(1月2日[金]昼3:55ほか)などを特集する。
名作はいつまでも色あせない。日本人の心を揺さぶる物語と日本の伝統芸能の組み合わせを、この貴重な機会に逃さず楽しみたいものだ。
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