“イタいおばさん”呼ばわりが止まらない…「好きな服を着ているだけで叩かれる現象」はなぜ繰り返されるのか

“イタいおばさん”呼ばわりが止まらない…「好きな服を着ているだけで叩かれる現象」はなぜ繰り返されるのか

12月29日(月) 8:47

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みなさんこんにちは、ファッションスタイリスト&ライターの角佑宇子(すみゆうこ)です。

昨今、よく目にする「消齢化社会」という言葉。年齢によって生まれる価値観の違いが薄れてきており、世代で物事を区分けしない社会現象を指している新語です。この概念はファッション界においても非常に肯定的な意見が多く、「年齢にかかわらず好きな服を着れば良い」といったエイジレスファッションを謳う世論が年々強まってきています。

なんとも前向きで素晴らしいスローガンですが、さて、私たちは本当に“年齢”に関係なく、好きな服を着ても良いものなのでしょうか。今回は、高まるエイジレスファッションの是非について考察していきたいと思います。

エイジレスファッションってなに?



エイジレスファッションとは、 「年齢制限のない服装」という概念で幅広く定義される、新しいファッション用語です 。最近、雑誌やSNSでもよく見かけますが、エイジレスファッション自体が広義的なものなので、使い方や捉え方に若干の曖昧さが残るのも特徴的なポイント。

基本的には「 年齢・年代を問わずおしゃれを楽しみましょう 」という前向きなマインドを提唱する際に使われています。その一方で、年齢を重ねても着続けられる定番・シンプル・着心地の良い服に対して「エイジレスファッション」と呼ぶこともありますね(それは、どちらかというと“タイムレス”が合っていそうですが……)。

エイジレスファッションが生まれた背景には、2000年代後半から超高齢化社会に突入したことが大きいのではないかと推察しています。この頃から、ジェンダーレスファッションも目立ち、年齢や性別といった区分けで物事を判断しないという多様性が人々の生活にも馴染み始めています。ジェンダーレス(男女兼用ファッション)はすぐに浸透しましたが、エイジレスファッションに関しては、年齢を気にしがちな国民性もあってかなかなか広まりづらかったのかもしれません。ここ数年でようやくエイジレスファッションを受け入れられる人が増えてきたのでしょう。

ネット上で絶賛されている理由



最近の女性のファッショントレンドは、肌の露出が多いものが増えています。その影響もあってか、今は30代以上の大人世代でも気軽にミニスカートやヘソチラコーデを楽しむ姿をよく見かけますよね。そうしたオシャレを楽しむ人に対してネット界隈では「 おばさんの露出はイタい 」といった否定的なコメントと、逆に「 年齢関係なく好きな服を着ていて素敵! 」という肯定的なコメントとに二極化しているようです。

これは女性の露出度合いに限った話ではありません。いつまでも若々しくいたい気持ちが透けて見える「パーカーおじさん」や、服装が若い頃からアップデートされていない「カジュアルおばさん」といった、 年齢によって着る服装を正すべきという意見が度々SNSで炎上しています 。こうした年齢×ファッションの是非問題は、以前から論争されてきていますが、ここ数年でより目立っているような気がします。この繰り返される論争に対しネットユーザーも同じように感じており、疲弊してきているのではないでしょうか。

正直なところ、「他人の着ている服なんていちいち気にしたことはない」という意見が多数派であり、かつ最終的に「迷惑がかからないなら好きな服を着ればいいじゃない」と、落ち着くことで誰も傷つけない、傷つかないですむ結論にまとめられる。こういう流れが現代の消齢化社会の概念と共鳴し、ひいてはエイジレスファッションがさらに市民権を得てきているのではないでしょうか。

履き違えてはいけない、エイジレスファッションの意味



支持が高まる、エイジレスファッション。しかし、筆者はこれに対して手放しで賛同できない部分があります。年齢なんて気にせずに好きな服を着ればいい! と、人は言いますが、 それが正義ならどうして今もなお、誹謗中傷の声が生まれるのか

ファッションというのは、 「自分の個性を主張する服装」と「周囲に配慮した服装」という、相反する2つの軸が常に存在しています 。好きな服を着て批判が起きるのは、後者の「周囲に配慮した服装」から大きく外れているケースが考えられますね。

私たちは社会で生きる上で、人との関わりをなくすことはできません。そのため、 他者が自分と一緒の空間にいて心地よくいられるかどうか、最低限の配慮は必要になります 。それは服装においても言わずもがな、です。

好きな服を着ていても誰かの迷惑にはなりませんが、それでも周囲が驚くような格好や、場にそぐわなくて相手に気まずい思いをさせる服装などは、やはり配慮に欠けていると捉えられます。服装のマナーは大人なら言われなくともわかるものであり、それさえも守れないのは、好きな服を着た代償として村八分をくらうことも心に留めておく必要があるのです。

正しいエイジレスファッションの取り入れ方



エイジレスファッションは、好きな服を着ていいという“無制限の自由”を推奨するものではありません。むしろ、年齢によって差が生まれない、服装の均質化にすぎないのです。どの年齢層の人が着ても違和感のない服。時代が経過しても耐久性に優れている服。オフィスでも普段着にも向いている活用シーンに多様性がある服。こうした均質化された服が本来のエイジレスファッションなのではないでしょうか。

もちろん、年齢を気にして過敏に服を限定する必要はありません。ですが多様性社会だからといってハメを外しすぎないよう最低限の配慮(清潔感と目のやり場に困らないもの)は忘れずに。その上で自由な着こなしを楽しむのが最も正しく、スマートなエイジレスファッションの楽しみ方だと筆者は感じます。

<文&イラスト/角佑宇子>

【角 佑宇子】
(すみゆうこ)ファッションライター・スタイリスト。スタイリストアシスタントを経て2012年に独立。過去のオシャレ失敗経験を活かし、日常で使える、ちょっとタメになる情報を配信中。2023年9月、NHK『あさイチ』に出演。インスタグラムは@sumi.1105

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