『孤独のグルメ』原作者で、弁当大好きな久住昌之が「人生最後に食べたい弁当」を追い求めるグルメエッセイ。今回『孤独のファイナル弁当』として取り上げるのは、どこか虫が好かない無農薬無化調至上主義のスーパーで売っていた『オーガニックパン弁当』。果たして、お味はいかに?孤独のファイナル弁当 vol.08 「ちと虫が好かんオーガニックパン弁当」
午前中にすることがたくさんあって、朝食わず仕事場に来た。朝昼兼用飯は近所のオーガニック系スーパーで買った「ひとくちミックスサンド」(428円)にした。俺は別にオーガニックとかにこだわらない。つーかそういうのや無農薬無化調至上主義はどこか虫が好かん。どっちもありでいい。
暑いので「トマトとキヌアの冷たいスープ」(348円)も初めて買ってみた。
ひとくちサンドは器の開け口を手前にして、左から卵、ポテサラ、蒸し鶏と紫キャベツというのが2回繰り返されている。リフレイン。音楽的だ。コレを楽譜と考えれば、左から右に食べてくのが自然だ。
まず卵サンドだ。この店の卵サンドはおいしい。それは知っている。市販の卵サンドというのはどこかぞんざいなものが多く、「おいしいのかおいしくないのか」あまり考えないで食べていることが多かった。だがここのを食べたら「…んん?コレおいしいゾ」と、目が覚めた覚えがある。って今まで眠って食べてたのか俺は。
ボクの好きな茹で卵のおいしさがはっきりわかる。なんだろう?マヨネーズが少ないような。白身の味と黄身の味がわかる。パンもうまいかもしれない。じゃなくてうまい。まだ夢の中か!これは「オーガニックだから」のおいしさではない。作り手のセンスだろう。実家で母親が作ったものに近い。写真で見ても、通常のより黄色みが強いと思いませんか。具の量も多い。
で食べたらやっぱりおいしい。これこれ。
あ、そうそう飲み物は冷蔵庫に買っておいた「オーガニックハーブウォーター」のミント味にした。虫が好かん野郎になってるな俺。ま、たまにはいいだろう。
次にポテサラサンド。これも芋味濃いめでうまい。そしてメインぽい蒸し鶏。コレは蒸し鶏より紫キャベツのコールスロー的なのが活躍していて、ゴキゲンだ。
ここでスープ二段になってて、下にスープが入ってて、食べる時上の具を入れて混ぜる仕組みがちょっと洒落臭い。と、思ったが、コレがトマトの酸味が効いてて、うまい!細かく切ったいろんな野菜が口の中でザクザクしてスープなのに噛み心地がいい。
材料を見たら大根・人参・キュウリ・コーンそしてキヌア。俺はまだキヌアというのがわかってない。知っているし何度も食べてるけど掴みどころなし。どうおいしいのか。いかに効果的なのか。見た目にあわあわといるなという感じ。緑のは「グリーンカール」らしい。知らん。でもこのスープは冷たくて、サンドと合う!そういうわけでこのスープ付きサンドイッチ弁当、大満足だった。だけど食べ終わるまで9分。客観的に見ればせせこましくビンボー臭い弁当時間であろう。となると値段高いかな。
【久住昌之】
1958年、東京都出身。漫画家・音楽家。代表作に『孤独のグルメ』(作画・谷口ジロー)、『花のズボラ飯』(作画・水沢悦子)など。Xアカウント:@qusumi
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